№1399 思い出の海外旅行クロニクル 20.2003年ポルトガル 3
ポルトには2種類の「トラム」があります。ドゥーロ川の畔を行き交う短区間の動態保存的クラシック電車と、後に一大ネットワークを築く事になるLRT。この両方を乗り歩いた後、ナローゲージのローカル線を訪ねます。
翌日はいよいよアルファ・ペンドラー(AP)乗車。
2003年 1月14日(火)
ポルトのトラムについては事前に色々な情報が錯綜する状態だったが、この日訪れた時点で、クラシックの方は1E系統(インファンテ~パッセイオ・アレグレ)と、18系統(マッサレロス~ヴィリアト)の2系統。1E系統はこの270号車と、もう一台(失念)が交互に走り、フリューヴィアルで行き違う形になっていました。
1E系統の起点インファンテは、サン・フランシスコ教会の傍らにあります。客は他に誰もいなかった。運転士と女性車掌の2人乗りだが、動き出してすぐ、運転手がポールを転換させていない事に気づいたりして、何とも呑気なもの。
乗車券。0.5€(≒65円)。
270号車の車内。かつての名鉄美濃町線600形を彷彿させる、2-1配置の転換クロスシート。ただしゴザ張りだが。
次の電停で高齢の方々がパラパラ乗り込む。はっきり言って、とんでもなく遅い。マイカーやバスにどんどん抜かれていく。車道に並行する形で敷かれるレールは、案外新しくも見えるのだが。
パッセイオ・アレグレの終点。付近はドゥーロ川の河口に面した、静かな漁村という感じもしました。
実はこれ、折返しの電車を敢えて見送り、並行して走る路線バスで追い抜いて、撮影したものでした。それだけ遅い、という事です…。バスの方が本数が多くて速く、しかもCNGノンステップ車とあっては、トラムの方は、はっきり言って日常の足としてはあまり機能していないのでは…。バスから垣間見たトラムの車内には、乗客の姿がありませんでした。
18系統を分岐するマッサロレスには車庫があり、年代物の電車が並んでいました。
その18系統は、218号車がピストン運行していました。2軸車。
その車内。こちらも2-1配置の転換クロスシート。屋根のカーブが独特。
こちらは急坂をグングン上って、病院の脇のヴィリアトが終点。ここもやや中途半端な感じ。リベルダーデ広場のあたりにかけては、あちらこちらに電車のレールの跡が見られた。廃止が進んだのだろうか。
先の270号の屋根に「MUSEU DO CARRO ELECTRICO DO PORTO」と記されていたように、クラシックトラムに関しては、動態保存・博物館的な要素の方が強くなっていたのではないでしょうか。
(この数年後に路線の延長が行われた模様)
一方、新型LRTは当時の鉄道趣味誌にレポートが記されていたが、この時点ではトリンダーテを起点として、セニョール・デ・マトシーニョスまでの1路線が開業していました。「メトロ」と呼称。
電車は、あのストラスブールの物に似た7車体連接車(少し違うらしい)。
LRTの車内。運転室のすぐ後ろの仕切りは窓が大きく、前方かぶりつきができるのがうれしい。
当時はカンパーニャ駅まで延伸工事中、トリンダーテ駅自体も暫定開業という感じで、引き続き工事が進行中でした。
トリンダーテ駅の将来はこんな感じになりますよ、みたいな看板、ではなく横断幕。
サインシステムも完備。
このLRTはICカードを導入しているが、まだ慣れない人が多く(私もその一人)、「メトロ」マークの若いお兄さんが色々レクチャーしておりました。
見た感じとしては、日中7~8分おき位の運行のよう。
昔のCPの路線を改良したらしい区間から、新規に建設された路線に直通して行く。一番の見どころは、クラシカルな商店街の中をトランジット・モールで走る、ブリト・カペイル付近の区間ではないかと思います。
大概の電停は、このようなシェルターが設けられています。
終点のセニョール・デ・マトシーニョスは港に面したコンテナ基地、という感じで、35分の所要時間は結構変化があって楽しく感じました。
LRTは3路線の計画があり、この後順次路線を延伸、ドン・ルイス一世橋上部を専用軌道に転換して南部にも路線を拡大しているようです。空港への路線もあるらしく、再訪が楽しみになりました。いつになるかさっぱり解らんが。
ポルトのCPのターミナルで、市の中心部に近いのはサンベント駅。
この駅の見どころは何といっても内部の「アズレージョ」、一般の観光客にも良く知られている所。ただ、訪れた時は改装工事中でした。
サンベント駅は頭端式ホーム。ホームの有効長が6連分程度しかないし、特にリスボン方面だとカンパーニャですぐ方向転換が必要になる。なので長距離列車は全て町外れになるがカンパーニャが始発となり、サンベントとの間でシャトル的な列車の設定もあるようです。
ポルトからドゥーロ川沿いに東に延びるローカル線からは、さらに3本のナローゲージのローカル路線が延びているらしい。全部乗りたい所だが時間的には不可能、途中のレグアを起点として、ヴィラ・レアルへ行く路線を選択してみました。カイデまでは電化され、フリークエント・サービスを実施、その先はDC乗り換えで一気にローカル線風情になります。
ひなびた農家を見ます。
マルコ・デ・カナヴェセス駅。アナウンスはあるのだが、窓口は16時45分で既に閉鎖。
ポルトガルの小駅は、どこも運転関係の職員はいるのに、窓口が開いている時間が短い。
新型DC。
その車内。集団見合い形のシート配置。
この先はもう真っ暗になってしまうので写真がないのだが、レグアでヴィラ・レアル行のナローDC列車に乗車。お客さんはやはり少なく、車掌は乗務しているものの、一通り検札を済ませたら、あとは知人の女性とおしゃべり。
しばらくは本線と共用の4線軌道、分かれると暗闇の中をグングンよじ登っていく。一応いくつかの駅があって、レグア行との行き違いもあったのだが、どこも駅員がいない。信号機も見当たらず、どんな閉塞システムになっていたんだ?ほとんどはリクエストストップで、駅付近に明かり一つ見当たらない所も少なくなく、乗降ってあるの?
1時間位でヴィラ・レアルの駅に着いた。ここも駅員がいなくて、出迎えの人もなく、わびしい限りでした。
街の中心は川の向こう、いくらか歩いて見つけた安ホテルに投宿。20€と聞いてやや質に不安も感じたが、部屋は少し古びているものの、バス・トイレ・TV付でまずまず、という所だった。教会から聞こえてくる鐘の音はやや大きいのだが。
レストランで夕食を食べて、就寝…。
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2003年 1月15日(水)
朝食を下に降りたら驚いた、人っ子一人いない、だけでなく、正面の玄関自体鍵がかけられ、外に出られない!!冗談じゃない、このままでは朝食どころか、レグアへ降りる列車にも乗れなくなってしまう。朝食をあきらめ、キーカードに適当なポルトガル語の単語を並べて鍵を置き、会議室の窓を開けて無理やり出てきた。人通りが多かったのに、ドロボーと間違えられたりはしなかっただろうか?
(宿泊代は前夜にC/Cで精算済み、帰国後にちゃんと2,545円請求されてきた。念のため)
改めて、ヴィラ・レアル駅。4線あるが、ナローゆえ構内は狭いか。先の方にレールが延びた後がある。
窓口の営業は平日の10時40分~14時30分と、15時30分~19時15分のみ。だから昨晩は誰もいなかったのか。
発車してすぐ、ヴィラ・レアルの街並み。街自体は大きいのだが、列車の利用にはつながっていないのだろうか。
今度はオメガカーブを交え、忠実に山腹をトレースしつつどんどん下る事になります。遠くに白い山々を見ます。
中間駅はほとんどこんな感じ。やはり、ほとんど乗り降りはなさそうだなあ、そんな感じの立地。
気がつくのは、元はトイレだったのだろうという小屋が別棟で立てられ、待合所に転用されている駅がほとんど、という事。
集落はやはり駅の近くにはほとんどなくて、山の中腹に固まっています。
遥か下だと思っていたドゥーロ川が、はっきり近づいてきました。再び4線となって、レグアに着きます。入換作業に引っかかって、6分の遅れになってしまったが。
この路線のDC。比較的新しい。客少ないのに2連。
その車内は、なんだか市内路線バスみたい。
この路線、昨今のポルトガルの経済危機も影響したのか、他のナロー数路線共々、廃線になってしまったようです。
レグア駅。
構内はなぜか解らないが、この路線で使われていたと思われるSLやDCなどが多数、朽ち果てるに任せたまま放置されていました。SLなんか日本人の感覚ではもったいないなーと思ってしまうのだが。
ポルト・カンパーニャに戻るIRは、理由は良く解らんが、レグアを1時間以上の遅れで出発。まずい、このままではAPに間に合わない…。
途中のエルミダ駅。
遅れが不安になったが、ポルト・カンパーニャ駅到着は、リスボン行AP発車の6分前、かろうじて間に合ってくれました。
しかしこのため、駅舎の写真と、一番上に掲げたAP写真を撮るのが精一杯、駅の観察などとてもできませんでした。せっかくのAPなのに、出だしが慌ただしすぎ。
APの指定券。今回は1等「コンフォート」をおごってあります。とはいってもパスを持っているから、指定料金2€(≒250円)の支払いだけなのだが。
コンフォート車内。2-1配置の3列シート。オーディオサービスもあり、天井のモニターでプログラムの放映もあります。
慌ただしくも、ともかく無事ポルト出発。ドゥーロ川を渡る。手前は、後にLRTが走る事になるドン・ルイス一世橋。
次の停車駅を出ると、グングンスピードが上がっていく。仕切りドアの上にはLED表示があり、最高220㎞/hまで表示されます。
コンフォートでは、専任のスタッフによるドリンクサービスが廻ります。いくつか選択肢があるが、せっかくのポルト発だからと、ポルトワインを注文しました。ワインの事など解らぬくせに。
そのワインとオツマミ。ワインは有料とも聞いていたのだが、実際には無料。他にはジュース、コーヒー、ケーキなどがあるようでした(あれもこれも、とはいかない)
なお、列車によっては本格的な食事を提供する便もあり、駅で配布される小型の時刻表で判別できます。ただ、次に食事を提供するのはポルト18時05分発、この時期ではもう真っ暗になってしまうので、車窓優先でこの時刻を選択したのでした。
仕切りの表示は速度の他、車内と外部の温度が表示されるのがユニーク。
2等車「トゥリステカ」にはBARカウンターがあります。品ぞろえ自体は、これまで乗ってきたICやIRのそれと、あまり変わらないように見えました。窓際にもカウンターがあるが、窓の位置が低いので、外を見ながら飲み食いするにはあまり向いていない。4年前、同系のフィンランドS220に乗車した時も感じた事です。車内販売基地としての性格の方が濃いように思いました。
田園地帯を快走。
この路線のレールはさすがにがっちりしていて、ナロー路線のヒモみたいなレールとは全然違う。通過する各駅は地下道が整備されているようで、跨線橋を後付けしたところも見られました。それと、踏切を見かけなかった。沿線の線路際も、7年前には見なかった金網が設けられていて、いずれもAP運行開始に合わせて整備されたのだろう、と見えます。
途中工事による単線運転の影響はあったが、リスボンのオリエンテ、そしてサンタ・アポローニャには定刻に着きました。所要3時間15分。
途中のサンタレンで、構内にSLの姿を見ました。気になる。明日見に行こうか。
この日はオリエンテ駅近くの、やや高めのホテルに泊まりました。ポルトガル最後の晩だし、いいでしょ?
万博が行われたオリエント地区から望む、夕陽。
当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
次回は1回お休み、違う事を書く予定。
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