№1397 どこへ行けばいいのか スカイマーク

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 スカイマーク(SKY)が5日の債権者集会で、ANAホールディングス(ANAHD)などを支援企業とする自らの再建案が可決され、この案を持って経営再建がスタートする事となりました。
 この件についてはチョコチョコと思う所を書いてきたが、昨日、NHKの公式Webサイトで、経済記者の署名入りの解説記事が掲載されたので、これを読んだ上で、改めて記してみたいと思います。
 私は経済オンチなので、本当に私が事の表面上から感じた事しか書けませんが、その辺はご了承を。

NHK NEWS WEB Business特集「羽ばたくか新生スカイマーク」
http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2015_0810.html


 解説記事の要点として、まず5日の債権者集会は、ANAHD支援のSKY案と、デルタが支援企業に名を連ねたイントレピッド案が諮られ、投票の結果SKY支援案が可決されたとしています。
 私自身は、海外も含めてJAL・ANA以外の航空会社が入った方が良いと何回か書いていたし、デルタの名前が出た事で、流れが変わったかも知れないと感じていました。記者も「仕切り直し」の結果も予想していたとしています。しかし、債権総額の60%以上の支持でSKY案が選択されたとの事で、少々意外な大差だと思いました。もう少し僅差になるかと思ったので。

 ANAHDとデルタの争いになった要因として、羽田空港の発着枠があるとしています。現在SKYは羽田発着枠を36枠保有。ANAはこれを取り込めれば、ADO・SNA・SFJ共同運航便も含めて羽田枠の60%を占める事が出来る。デルタはこれを機に日本国内市場への足掛かりを築きたかったという事です。デルタは5年前、経営破綻したばかりのJALをスカイチームに取り込もうとして失敗しているだけに、何としてもSKYのネットワークは欲しかったのでしょう。今回も失敗した事で、日本国内線を組み込むのは、もう難しくなったかもしれません。
 ANAHDがSKYにこだわるのは未だ経営再建中のJALの存在があり、JALは2016年度末まで投資に制限があるので、それまでに少しでも差を広げておきたかったのだろう、としています。
(昨今のANA国際線の矢継ぎ早の新路線開設のアナウンスも、その一環でしょう)
 ここで、ANAHDは勝利のために、エアバスなどの大口債権者に対し、将来の航空機購入を「約束」したと言われている、という下りが、私にも気になる所です。このエアバス機購入者がANAHD(ANA)の事なのか、SKYの事なのかは解らないが。ANAHDは現在A320・A321の「neo」を合計30機発注しているが、これでは足りないというのか。大型機はB777Xを選定しているが、これを変える事が有り得るのか。同様にSKYはB737-800の後継機をB737「MAX」と発表しているが、これもA320に変える事になるのか。しかしそうなると今度はボーイングとの関係がギクシャクする事は十分予想されます。個人的には、航空機メーカーにとって航空会社は「お客様」のはずなので、購入に関して客にああしろこうしろというのはヘンな話だという気がします。航空機、特に大型機は「高い買い物」なので、買う側だけでなく売る側にもそれなりのリスクがあるので、こういう揉め事もあるのだろうが。
(A380がいい例だった)

 また記者は、破綻後のSKYは「主導権争いの連続だった」と指摘しました。今回通ったSKY案にしても、メインスポンサーの投資会社インテグラルと、支援企業に応募したANAHDの間で、出資比率や経営陣の体制を巡って激しい対立があり、監査委員の仲裁で何とか形になった。それもつかの間、イントレピッドが対抗案を提出、さらにデルタの名前が出た事で争いは激化する事になった、として、結果として「利用客の視点に立った議論が深まらなかったという印象はぬぐえない」と記しています。
 私は、マイナスから建て直す企業の経営再建とは、結局そういうものだろ?とか思っています。まして先の羽田枠のように、とてもオイシイ所を我が手中に収めん、とするなら、こういう事にもなるのでしょう。

 その後、社用車のナンバー「380」「330」「129」について触れた後、記事は最後に「かつて日本の空に『価格破壊』をもたらし、風穴を開ける役割を果たしたSKYは、存在感のある航空会社として生まれ変わり、再び羽ばたく事が出来るだろうか」と結んでいます。この辺は当たり障りのないまとめ、という感じです。

 今後はANAとの共同運航を軸に、利用者の増加を図り、再建を目指す事になるでしょう。ただ、懸念材料として、これが独占禁止法に抵触する事になりはしないかという事。羽田枠全体の60%はいいとしても、路線によっては共同運航をやると、70%弱はANAが関わるフライトになります。福岡線は8月ダイヤでANA18便、JAL17便、SKY11便、SFJ8便。ANAは既にSFJとコードシェアを行っており、これにSKYを加えると、54便中37便、68.5%はANAの便名が付く事になります。新千歳路線も似たようなものになり、公正取引委員会がスンナリ認めるのかどうか。

 SKY独自の方向性は、個人的にはやや難しい所もあると思います。再建の過程で路線網を縮小、仙台や米子などからも今後撤退するが、それでもある程度は全国規模のネットワークはあります。ただ、ADOやSNA、SFJはある程度地域に密着した営業政策もあるが、SKYは逆にそれがやりづらくなるでしょう。となるとどういう方向に行くべきなのでしょうか。私には解らない。個々の関係者がうまく考えるのだろうとは思います。「地に足をつけて」というのは、SKYの発足の経緯や会社のカラーからして馴染まない言い方かもしれない。ただ、前社長の元で起きたような「ウケ狙いの一発勝負的な営業政策」だけは、ここではやめてもらいたいと思います。今回はANAHDの重しがあるので、そうはならないだろう、とは思いますが。
 SKYそのものの今後は、私自身ももう少し様子を見た方が良いのかなと思います。

 ついでに感じた事をいくつか。まず、西久保前社長の経営責任の追及はきちんとなされるべきです。単に会社の経営を破綻に追い込んだだけではなく、先に記した「ウケ狙い」の政策(CAユニフォーム問題とか)で社の内外を混乱させた一方、、5年前には運航に直接介入して、機長を「クビ」にした事例もあるからです。
№161で書きました。国土交通省から厳重注意も出た割には、なんだかウヤムヤのまま終わっている気がする)
 これはSKYという会社そのものの問題もあるが、外野の問題もあるかと思います。昨今のIT企業隆盛の影響なのか、本来個々の社員や中間管理職などの地道な努力・熱意などが会社を支えているはずなのに、それが特定の「カリスマ」経営者の功績にすり替えられている傾向が、航空に限らずどの業界もこの十数年、非常に強く出ています。SKYに対しても、そんな所はなかったでしょうか?
(最近だと、エアアジアあたりもそんな所があります)
 もう少し外野のジャーナリズムが、少しは醒めた眼で彼らのやる事を見るべきでしょう。それは10年前のライブドア事件でも浮き彫りになった事のはずです。

 それと関連して、JAL・ANAに伍する「第三極」の確立をSKYに求めていた部分は大きかったと思います。
(JALのJAS統合後は特に)
 でも、「第三極」って、そんな簡単にできるものなのでしょうか?JALにしろANAにしろ、方向性は違えどもどちらも戦後民間航空の再開から60有余年の年月をかけ、様々な苦難を乗り越えつつここまで来ているのです。新興航空会社に、わずか数年でここまでの成長を促せるものでしょうか?小国の日本で、既にある程度航空輸送がポピュラーになり、一方で新幹線など航空業界外との競争も厳しい、となると相当大きな資本力などのエネルギーが必要になるはずです。「第三極」ではないが、韓国のアシアナ航空、台湾のエバー航空は一気に世界的メジャーにのし上がり、先発の大韓航空やチャイナ・エアラインに対抗しうる勢力になりました。しかしアシアナはクムホグループという大財閥が、エバーはエバーグリーンという世界有数の海運企業が共にバックに控え、莫大な資本力でのし上げてきた部分も大です。日本に、それだけのエネルギーを持つ大企業グループは、あるでしょうか?
 私たち自身も、海外の事例を見てないものねだりをしたくなる部分はあるけれど、それが出来得る環境にあるのか?法規制以上に物理的な要素がタイトな日本(羽田枠はいい例)で、海外と同じような事はできるのか?イケイケドンドンではなく、もう少し冷静に見る事も必要なのではないでしょうか。

 ともあれ、今後のSKYがどこへ向かうは、それこそ日本の航空業界全体の動向にも関わってくる事でしょう。確かに、その道筋は、目に見える部分見えない部分それぞれに注視すべき事となるでしょう。
 私自身は、ある程度運営が落ち着いた時点で、再度SKYを利用してみようと思っています。あくまでSKY便として。

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 次回は、ポルトガル旅行の「クロニクル」に戻る予定。

 JR北海道が留萌本線・留萌~増毛間の来年度中の廃止の方針を、留萌市と増毛町に伝えました。この区間は1日の乗降人員が39人だそう(多分、深名線末期より少ない)で、安全対策の投資も考えると、これ以上の存続は不可能という事です。JR北海道では既に石北本線や室蘭本線で数駅の廃止が打診されているが、現在の状況ではこの先も、路線や駅の廃止の話が矢継ぎ早に出てきそうです。
 東武鬼怒川線のSL運転の話は驚き。再来年度目標で、東武では51年振りだそうだが、大手私鉄全体ではいつ以来?

《今日のニュースから》
10日 「宇宙栽培」の野菜 油井航宙士らが初試食
11日 落語家 桂歌丸 高座に復帰

 レッドソックス・上原浩治投手の右手首骨折が判明し、今シーズン残りは絶望となりました。来月7日、フェンウェイパークでの試合観戦を予定しているのだが、ここで見る事はできなくなりました。来年まで契約があり、復帰できるかどうかまでは解らないが、年齢も考えると、少なくとも野球人生最大のピンチになったのは間違いないのではないですか?