「バスジャパン・ハンドブックシリーズS88 京都バス 京福バス」が先日発売になりました。どちらも、BJ時代から含めて初登場になります。
京都バスは京都市内路線では市営バスと二分する存在だし、京福バスは福井では最大手のバス事業者、ではあるが、それにしてもはっきり言って、ずいぶん「地味」な事業者をチョイスしたものだと思いました。
◆ 京都バス・京福バスの車両たち
京都バスと京福バス(グループ)に分けて分析してみます。京都バス126台・京福バス(グループ)243台で、合計しても369台。ハンドブックシリーズになって以降は、R60の川崎市営バス(2006年10月1日現在324台)に次ぐ少なさです。福井の方が多くなっています。
京都バス
1. 平均車齢は、乗合10.35年、貸切12.36年、特定20年(1995(H7)年式2台しかないから)。貸切の方が乗合より経年化しているが、大半が乗合車と同色の路線車ベースで、純粋な「観光バス」は3台のみ。この3台の平均車齢は8年ちょうどです。
乗合車は嵐山〔営〕9.70年、高野〔営〕10.83年と高野の方が若干経年化しているものの、どちらも同じ京都市の営業所だし、ほとんど差はないと言えます。高野に1990年代の乗合車が比較的多い(特にいすゞLT)事が、平均を引き上げているのでしょう。最高齢は1993(H5)年式2台。
2. 全用途トータルのメーカー別割合は、三菱ふそうは1台もなし。日野が47.62%と半分近く、いすゞ33.33%、日産ディーゼル19.05%と続きます。乗合に限ると、日野といすゞはほぼ拮抗しています。
3. 乗合車の営業所別配置は、高野63台、嵐山47台。京都の路線バス事情は良く解らないから何とも言えないが、若干東高西低でしょうか。東側は京阪電車が走っているから、フィーダー輸送が多くなるのかも知れません。
4. 乗合車のノンステップ率は4.55%と現状ではかなり低く、大型にはありません。CNG・ハイブリッドの低公害車もなし。
中古導入は京阪バス(元京阪宇治交通)からのレインボー(リエッセより前の小型車)と、阪急バスからの中型車(貸切登録)各1台のみ。
京福バス(グループ)
1. グループ全部を合計しての平均車齢は、乗合14.33年、高速13.56年、貸切13.72年。
乗合車は福井〔営〕14.08年、坂井〔営〕14.92年と、どちらも乗合全体の平均から大きく離れてはおらず、両数こそ福井〔営〕114台、坂井〔営〕49台で福井の方が多いが、特に分け隔てなく車両が導入されているようです。
高速車は本体の長距離車とリムジンの空港車でははっきり違いがあり、京福本体は6年と新しいのに対し、リムジンは21.13年と(後の紀行でも触れられるが)相当経年化しています。京福は一度の大量導入はなく、1~3年毎に1台ずつの導入となっているのが特徴か。
貸切は契約貸切も多いので、純粋な「観光バス」だけなら、もっと若くなるはずです。
最高齢は福井観光にいる、1990(H2)年式の中型貸切車。
2. 全用途トータルのメーカー別割合は、こちらも日野49.8%とほぼ半分、三菱32.9%、日産ディーゼル11.5%、いすゞ3.3%、トヨタ2.5%でした。京都とは逆に三菱ふそうがある程度の割合を保っています。いすゞは2013(H25)年になって、エルガミオの導入が始まりました。UDトラックスの撤退で、今後は割合が増える事も予想できます。
3. ノンステップ率は30.67%、中古導入もあるとはいえ、京都より遥かに高くなっています。小型コミュニティバスが多い事もあるでしょう。こちらもCNG・ハイブリッドの低公害車は、今の所はありません。
京福グループ外からのの中古導入は53台で、32.52%を占めています。自治体からの移籍も目立つが、最多の譲渡元は京阪バス+京阪宇治交通・阪急バス・神奈中バスの各7台でした。京都→京福は全くなし。
京都・京福を比較してみると、同じ京福電気鉄道の資本下にありながら、全く違った方向性をたどっている事が解ります。無論京都と福井のロケーション自体全然違うし、大都市の中心部を中心に一般路線にほぼ特化した京都と、ローカル路線を多く抱え、観光バスや高速バスもある福井、の経営スタイルの違いもあるでしょう。
◆ 京都バスのあゆみ
◆ 京福バスのあゆみ
この両社を理解するには、両社の親会社の京福電気鉄道を理解する必要があります。戦前の電力会社の京都電燈は、戦時体制下で京都と福井の鉄道会社を統合、この時点では、バスは福井側の事業者を傘下に収め、京都は関連会社だった。戦後京都は関連会社を統合して京都バスとし、福井は基本的には自社直営とした、という流れになろうかと思います。
鉄道自体が京都・福井共に数社の寄せ集めなのだが、どの区間を走っていて、今の電車は元はどの鉄道会社だったのか、その後どのような経緯を辿ったのかがやや解りにくい。その辺も整理された形で記されれば良かったと思います。
直営
嵐山電鉄(嵐山電気軌道) … 現在「嵐電」と呼称している、嵐山本線と北野線
叡山電鉄 … 現在の叡山電鉄(二代目)叡山線
越前電気鉄道 … 現在のえちぜん鉄道勝山永平寺線(勝山~大野は京福時代に廃線)
傍系
三国芦原電鉄 … 現在のえちぜん鉄道三国芦原線
永平寺鉄道 … 金津(北陸本線)~本丸岡~東古市~永平寺の路線で、京福合併後に全線廃線
比叡山鉄道 … 坂本~比叡山間のケーブルカー
丸岡鉄道 … 本丸岡~丸岡(北陸本線)~西長田間の路線で、京福合併後に全線廃線
愛宕山鉄道 … 嵐山~清滝間の鉄道と、清滝~愛宕山間のケーブルカーを運営していたが、全線廃線
鞍馬電気鉄道 … 現在の叡山電鉄(二代目)鞍馬線
愛宕山鉄道についてはこの後の紀行で出てきます。
バスは、京都バスは戦争開始前に発足した数社を京福電鉄が統合する形で設立、母体のどの事業者も、鉄道のバス部門として運営された事は無い。昨今は京都市交通局の動向(特に地下鉄の開業)が多大な影響を与え続けているようです。一方で大原の路線は市営バスから譲渡(地下鉄開通による補償の一環と思われる)、市営バスの運行の受託も行われています。
京福バスは、統合後は京福電鉄直営で行っていて、別に系列で丸岡バスが運営されていた所、事業合理化で電鉄のバス部門を丸岡バスに譲渡、丸岡バスの商号を変更する形で、今の京福バスになった、という所で、ストレートな分社ではない。
京福リムジンバスは、最初から福井~小松空港間の空港バスを運行するためにつくられたのではなかったのか。後の移管を見据えていたのかも知れないが。丸岡〔営〕は、旧丸岡バスがあった所とは別なのか。
京福グループは京阪電鉄の関わりが無視できないが、この辺の記述がやや希薄だったかなと、それと福井は事業再編成の過程で営業所の統廃合が行われているはず(大野など)だが、この辺の記述もなかったのは気になりました。
◆ 京都バス・京福バスの路線エリア
京都バスは、京都駅より北の京都市中心部が中心になり、格子状の路線網が特徴的。そんな中で、ずいぶんと北の方に路線がひょろひょろ延びて行きます。2路線あるうちの東側は、滋賀県高島市の朽木学校まで延びています。京都バス最長路線で、「あゆみ」に寄れば、当時の朽木村の要請で路線を伸ばしたそう。出町柳から約1時間20分。
しかし、現状は冬場を除く土休日とお盆に2往復が走るのみ。登山客をメインのターゲットに据えているようなダイヤに見えます。
(他に江若バスが安曇川駅から、また高島市営バス(自家用)の路線あり)
西側の広河原には、出町柳から通年で1日3往復(+平日のみ広河原発1本)運行。
京福バスは当然福井市が中心になるが、結構範囲が広いです。完全に放射状とはなっていないのが特徴かも。大野~勝山にかけてもある程度路線があるが、現在この付近は営業所がなくなり、どういう体制で運営されているのだろうか。福井営業所から回送などとムダな真似をするはずはなかろうから、分車庫があるのだろうと思われます。
◆ 終点の構図 岩倉実相院
行った事は無いのだが、グーグルマップで検索した感じでは、はっきりした回転場はなく、スイッチバック方式を撮っている模様。出町柳駅行と国際会館駅行が共に30分間隔で運行。利便性は良好のようです。
◆ 日本の建築美を愉しむ!
今回の紀行は東京駅からの夜行バスで始まっているが、夜行バスで始まるのは過去には「シリーズ10 瀬戸内運輸」「シリーズ13 奈良交通」「シリーズ19 岩手県交通」「シリーズ20 ジェイアールバス東北」「NEW38 奈良交通」がありました。
(他に夜行バス単独ルポ掲載号あり)
「携帯はないんですか?」って、聞くだけ野暮な気がしました。
福井側は、メインの永平寺・丸岡城も去る事ながら、永平寺口(旧東古市)の変電所の建物が印象的。87系統は本数は少ないが、ともかく福井市の外側を走る系統があるのが、なんとなく不思議にも感じます。昔は電車があった訳だから、それなりに流動はあるのでしょう。ここでは記されていないが、この便を含めて日中は東尋坊まで直通運転。
京都側は、大原(三千院)も寄ればバランスがいいかなと思ったが(高野〔営〕の路線が出てこないので)、大原~嵐山間の便が良くないから仕方がないか。愛宕山鉄道の廃線跡と、その歴史がここで出てきました。トンネルはすれ違いができずに、信号制御で片側交互通行になっているみたい(この紀行では通過していない)。
今後の両社だが、京都バスに関しては、高速バスへの参入などの大規模な事業拡張は行われないだろうし(既に京阪バスがあるし)、観光バスも競争が厳しいから、市内中心部の路線バスを中心とした事業内容は変わらないだろう。京都市営バスとの関係は良好で、「大快革」には京都バスも関わっている(一日乗車券の京都バスへの範囲拡大)ので、この関係を維持しつつ、一般の利用も当然だが、観光客の積極的な誘致を図って欲しいと思います。既にやってはいるだろうが、外国人旅客への情報の充実もさらに必要でしょう。あとはそろそろ大型ノンステップ車の導入も期待したいが、収容力を考えるとすぐには難しいのか。
京福バスについては、まずすぐに影響が出るかも知れないのは、今年度予定とされている、福井鉄道のえちぜん鉄道鷲塚針原駅までの直通運転開始。鷲塚針原までは京福バスも路線があり、再編成があるかも知れない。あとは何といっても2020(H20)年度予定の北陸新幹線福井延伸。北陸本線の第3セクター移管も予想され、一般路線・高速路線など、全ての面で影響が出る事になるでしょう。こちらも観光客の取り込みが期待されます。福鉄道・えちぜん鉄道との連携も必須。
インフォメーションで一つあるとしたら、公式Webで路線図を公開しているが、地域ごとにスタイルが全く変わっていて、つなぎ目の部分が解りづらい。同じ会社なのだからスタイルを同じに、できれば1枚に収めて欲しいと思います。
そして、せっかく同じ資本関係なのだから、京都と福井、相互の関係をさらに強化させ、双方そして相互間の利用者の獲得に知恵を絞って欲しい所です。無論、京阪電鉄・京阪バスも協力が必要でしょう。京都~福井間の高速バスの設定まではないだろうが。
ともあれ、これから5年程度で、特に福井は大きく変わりそうだが、両社の今後の発展に期待したいと思います。
次回刊は東武バスと東野バス(東野交通)。東武は既に「R52」で取り上げられているから11年振りだが、東野交通との抱き合わせになるとは思わなかった。東野も一応東武グループで、宇都宮市内では東武バスを引き継いだりしてはいるものの、現状では一般路線の重複も無く、あまり関連性が強い印象はない。興味は持たれるが、どのような傾向が出るのか、楽しみではあります。
当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
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《今日見た・聞いた・思った事》
ところで、バスって、どうカウントします?
今回のハンドブックシリーズは「台」で統一したが、過去の記事をチェックして見たら、「台」と「両」が混在していて、非常に見苦しい記事になっていて申し訳なく思います。
現在書店で手に入る趣味誌をチェックして見ると、「バスグラフィック」「バスラマインターナショナル」「バスマガジン」「BUS Life」は全部「台」。
バスジャパンハンドブックシリーズは、「S」からが「台」で、それ以前は「両」でした。
メーカーは三菱ふそう・いすゞ・日野は全部「台」。
事業者は「両」を使う所がほとんど?京都バスに加え、都営バスや東急バス、神奈中バス、名鉄バスは「両」でした。一方で西鉄は「台」です。
(京福バスは車両数の記載が見当たらなかった)
日本バス協会・国土交通省は「両」を使っているようです。
こうなると、「台」「両」、どちらも正解なのでしょうか?ちょっと迷ってしまいました。
私としては、当ブログ、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」に関しては、今後製作する記事・コンテンツは「台」で統一して行こうと思います。
東海道新幹線では、デッキに加えて車内にも防犯カメラを設置する事になったそうです。車内でカメラは、埼京線に次ぐもの?現状ではこれが精一杯でしょう。ユーロスターやスペインのAVEではホームで手荷物検査を行っているが、運行本数も乗車人員も比べ物にならない日本ではできない話だし、そんな事になってしまったら、息が詰まってしまう…。
ギリシャの国民投票は、IMF財政緊縮策「NO」の結果が出ました。
スコットランドや大阪とは訳が違って今日・明日・明後日の暮らしがかかっているし、「YES」「NO」、どちらの言い分も解ります。「究極の選択」でした。
とにかく、こんな事態に陥る前に何とか早く手を打つ、国家も企業もその他何もかも同じだ、と、経済オンチなりに改めて思い知らされました。
あとはこれがポピュリズムの台頭を赦す事にならないか、ロシアや中国など「第三勢力」の介入を招かないか。それが心配。
「なでしこジャパン」、残念でした…。
でも、一生懸命最後までやりきる事が出来た、と思えるなら、胸張って日本に帰ってくれば良いと思います。
お疲れ様でした。
《今日のニュースから》
5日 不明女子小学生保護 容疑者逮捕 奈良県香芝市
6日 国土交通省東京航空局談合事件 消防設備会社社長ら逮捕