№1286 JTB時刻表から見る日本の乗り物 2014年

 毎年末、JTB時刻表から見えてくるその年の日本の乗り物の主要トピックスをまとめて記しています。
 昨年までは毎年最終更新日に書いていたが、今年からはその月ごとのまとめを月末に書いているので、最終更新日の1回前に記す事とします。

 今年の前半は運賃・料金改定の対応で、交通事業者も、JTB時刻表自体も大わらわでした。
 鉄道界は、来年以降相次ぐ新幹線の大型開業を見据え、各地で静かに準備が進められた年でした。
 秋以降、歴史上の節目を相次いで迎えるが、一方で歴史的な長距離列車がまた一本、姿を消しました。
 各地で観光列車のデビューが相次いだが、大手私鉄は思いの外動きが鈍かった年でした。前年の反動?

《2014年の十大トピックス》

◆ 消費税率引き上げに伴う運賃・料金改定実施

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 消費税率が4月1日に5%→8%に引き上げられた事に対応し、JRグループ全社や大手私鉄など、主要交通事業者が運賃・料金の改定を実施しました。高速バスや地方では同時ではなく、五月雨式に改定を行った所も多くあります。
 改めて、JR線の主要区間の新旧運賃を対比します。

JR東日本 東京~新青森 9,870円 → 10,150円
JR東海 名古屋~高山 3,260円 → 3,350円
JR西日本 新大阪~広島 5,460円 → 5,620円
JR北海道 札幌~旭川 2,420円 → 2,490円
JR四国 高松~松山 3,400円 → 3,510円
JR九州 博多~鹿児島中央 5,360円 → 5,510円

 また、新幹線(普通車指定席・通常期)の料金額を比較します。

東海道新幹線 東京~新大阪<のぞみ> 5,540円 → 5,700円
山陽新幹線 新大阪~博多<みずほ><のぞみ> 5,540円 → 5,700円
九州新幹線 博多~鹿児島中央<みずほ> 4,810円 → 4,940円
東北新幹線 東京~新青森<はやぶさ> 7,000円 → 7,200円

 首都圏においては、JR東日本と、大手私鉄全社を含む主要鉄道事業者で、ICカード利用時に適用される1円単位の運賃を導入。
 同時にJR東日本では「Suica一部対応駅」拡大導入に合わせ、仙台近郊区間の設定と、東京・新潟近郊区間の拡大を実施。
 JRグループ全社では、自由席特急券及び急行券の有効期間を発売当日限りに短縮。

◆ 北陸新幹線E7系 長野新幹線で先行デビュー

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 E7系は北陸新幹線・長野~金沢開業に合わせて開発された新幹線新系列で、3月15日改正より長野新幹線に先行して導入されました。
 最高速度270㎞、グランクラス1両・グリーン車1両を含む12両編成。 3月改正時には<あさま>7往復に先行投入、秋以降順次追加投入を行っています。グランクラスは座席のみのサービス。
 来年3月14日北陸新幹線開業時には、同型のJR西日本W7系と共に、<かがやき><はくたか><つるぎ>に運用。

◆ 秋田新幹線<こまち> E6系置き換え完了
 2013(H25)年3月16日改正時よりE3系を順次置き換え、<スーパーこまち>として運行されてきたが、3月15日改正で置き換えを完了。
 全列車<こまち>に統一され、新幹線では異例の<スーパー>の名は1年で消えました。
 東京~秋田最速は、下りは8分短縮されて3時間37分、上りは7分短縮されて3時間39分。

◆ 高崎線特急 651系に置き換え 「スワローサービス」スタート
 常磐線特急<スーパーひたち>を中心に運用され、2012(H24)年改正時以降E657系に置き換えられた651系が、直流化リニューアル改造を受けた後、3月15日改正より高崎線特急<草津><あかぎ>に投入されて185系を置き換え。
 合わせて平日に全車指定席の<スワローあかぎ>を新設、座席指定を受けても受けなくても利用できる「スワローあかぎ料金券」を設定。

◆ 三陸鉄道・山口線・信楽高原鐵道等 全線運行再開
 東日本大震災で被災した鉄道は、今年も鋭意復旧が進められました。

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 大津波で壊滅状態に追い込まれた三陸鉄道でしたが、4月5日に南リアス線、翌6日に北リアス線で全線の運行を再開しました。
 前の年に連続テレビ小説で取り上げられた事もあり、全国的、さらに海外でも注目を集めました。
 再開に合わせて新型お座敷車両・レトロ車両も導入され、観光客の誘致にも努める事になります。
 また、福島第一原発事故の影響で不通のままの常磐線の内、広野~竜田が6月2日より運行を再開しました。
 昨年夏の豪雨で不通になっていた山陰の各路線では、三江線は7月19日、山陰本線は8月10日、山口線は23日に全線で運行を再開しました。<SLやまぐち号>も、新山口~津和野の往復で運行を再開しています。
 さらに、昨年秋の豪雨による橋梁流出のため不通になっていた信楽高原鐵道も、11月29日に運行を再開しています。
 今年は8月に広島土砂災害、11月に長野県神城断層地震が発生したが、JR線に関しては幸い、短期間の不通で済みました。あと2日あって油断はならないが、このままいけば、今年は新たに年単位の不通に追い込まれる路線は出ないで済みそうです。

◆ <SL銀河>運行開始
 震災地復興支援の一環として、岩手県内の公園に保存されていたC58 239を復元、4月12日より釜石線で運行を開始しました。
 C58 239は現役時代は大半を宮古機関区で過ごし、宮古線・釜石線を中心に運用されていた、岩手県にゆかりのある機関車でした。
 客車はJR北海道のキハ141系4両を購入、「銀河鉄道の夜」をイメージして改装しています。プラネタリウムもあります。
 主に花巻発土曜日・釜石発日曜日に運行。今年は11月30日まで運行されました。

◆ <あけぼの>定期運転廃止

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 また一本、伝統の夜行列車が姿を消してしまいました。
 寝台特急の<あけぼの>は1970(S45)年7月1日運行開始、最大3往復にまで増えたが、晩年は新在直通新幹線の開業などの要因に振り回され、運行ルートの変更を繰り返しながらなんとかこらえてきました。
 改正後は多客期の臨時列車として設定され、今冬も4日、設定があります。
 残る毎日運転の夜行は<北斗星><すずらん><サンライズ瀬戸・出雲>のみとなり、<北斗星>も来年の改正で事実上廃止になります。今季の<サンライズ出雲91・92号>に光明を見いだせないでしょうか…。

◆ 岩泉線・江差線廃止
 岩泉線は2010(H22)年の土砂崩れによる脱線事故以降長期運休が続き、再起がならないまま、3月一杯を持って廃止となりました。JR東日本の廃線は、新幹線に代替された碓氷峠区間を除くと初めて。翌4月1日より、東日本交通が代替バスを運行しています。
 江差線は北海道新幹線開業に先行する形で、木古内~江差の末端区間が5月11日を持って廃線となりました。翌12日より函館バスにより代替バスが運行されています。津軽海峡線を構成する江差線も、再来年の北海道新幹線開業時には第3セクター鉄道に移管される事になります。

◆ 富岡製糸場 世界遺産登録
 鉄道と直接は関係ないが、群馬県富岡市の「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界文化遺産に登録されました。
 来場者の増加に対応し、上信電鉄では土休日に高崎~上州富岡で臨時列車を運行しました。12月22日のダイヤ改正で、正式に増便になっています。
 関越交通では、製糸場の見学時間を設けた太田~四万温泉の路線バスを運行中。
(見学は太田発のみ)
 JTBでは、富岡~軽井沢を結ぶ「コクーンシャトル」を運行中。

◆ 東海道新幹線開業50周年 東京駅開業100周年
 今年は、日本の鉄道を代表する高速鉄道&駅が、節目の年を迎えました。
 東海道新幹線は1964(S39)年10月1日開業、「夢の超特急」と謳われた、華々しいスタートでした。
 <ひかり>28本、<こだま>32本、<ひかり>は東京~新大阪で4時間ちょうどと、今から見るとささやかなとも映る出だしだった東海道新幹線は、半世紀の時を経て、<のぞみ>が毎日運転だけでも146本、<ひかり>65本、<こだま>79本、東京~新大阪最速2時間25分、最高速度270㎞/hの高速列車が通勤電車並みの頻度で行き交う、世界ナンバーワンのの大幹線鉄道に発展する事になります。
(本数は上下計で、全て区間運転を含む)
 東京駅は1914(T3)年12月20日、各地に分散していたターミナルを統合する中央駅構想の一環で開業しました。当初は東海道本線の始発駅、後に中央本線や東北本線の始発駅ともなりました。50年後には東海道新幹線の始発駅となり、さらに横須賀・総武快速線や京葉線の地下ホーム新設・東北新幹線乗り入れ、中央線高架化と、上下左右に拡大を続けながら、今日に至っています。来年には「上野・東京ライン」スタートで新たな展開を迎えます。

◆その他
○ JR北海道 減量ダイヤ改正実施
○ リゾート新幹線「とれいゆつばさ」営業開始
○ 予讃線新型特急8600系 先行デビュー
○ 烏山線 蓄電池電車EV-E301系「ACCUM」デビュー
○ 竜飛海底駅・吉岡海底駅・知内駅廃止
○ 吾妻線 ダム建設に伴い新線に移設
○ 箱根登山鉄道 新型車両「アレグラ」デビュー
○ JR四国「伊予灘ものがたり」・くま川鉄道「田園シンフォニー」・しなの鉄道「ろくもん」運行開始
○ JR高速バス「グランドリーム」運行開始
○ 土佐電気鉄道・高知県交通統合 とさでん交通営業開始
○ 相模鉄道 特急運行開始
○ 日本一超高層ビル「あべのハルカス」オープン
○ 春秋航空日本就航 一方でLCC大量欠航発生
○ 羽田空港発着国際線 大幅増便
○ ANA B747-400D引退 日本からジャンボジェット全機退役

《表紙の写真・グラビア連載》
 連載記事の掲載がほとんどなくなりました。「のりもの探Q隊」は、2013年4月号のvol.21が今の所最後。

1月号 北越(信越本線 鯨波~柏崎)
● 今乗っておきたい!2014
● 矢野直美のダイヤに輝く鉄おとめ 第75回 会津鉄道 芦ノ牧温泉駅 名誉駅長「ばす」※雌猫
● 今行っておきたい!会津若松へ

2月号 あけぼの
● 緊急特集 さようなら〔あけぼの〕
● ゆいゆい号&ゆいレールで巡る!那覇まちまーい

3月号 長野新幹線E7系
● 北陸新幹線用新型車両E7系
● E7系で行く!信州越後“鉄”駆け込み巡礼
● 近鉄電車に乗って 春の伊勢志摩へ
 E7系クリアファイル封入。

4月号 三陸鉄道北リアス線
● 再び走り出す!三陸鉄道
● こうや花鉄道 「天空」で高野山へ
● ケーブルカー日本一物語

5月号 予土線
キハ32「鉄道ホビートレイン」
● Newface列車 -巡礼の旅-
● 四国&九州 新車巡りの旅
● 相模鉄道に乗ろう

6月号 名鉄特急「ミュースカイ」
● 名古屋鉄道 創業120周年 名古屋鉄道の今・昔
● 名古屋鉄道 創業120周年 全20路線乗ってみよう!
● 矢野直美のダイヤに輝く鉄おとめ 第76回 SKE48 松井玲奈
 名鉄+松井玲奈クリアファイル封入。

7月号 小海線 青沼駅
● 青春18きっぷ 夏の計画お役立ち特集
● 旅の記念に 駅スタンプを集めよう!
 折込付録で「寝台特急富士」と展望地ガイド。

8月号 大井川鐵道
 トーマストレイン。
● 旅行に!帰省に!夏休み この夏乗りたい注目列車
● 旅行に!帰省に!夏休み 鉄道系博物館&鉄スポット
● 駅売りみやげ ベストセレクション

9月号 上信電鉄 デキ3号
● 祝!世界遺産登録 富岡製糸場と絹産業遺産群 「世界遺産」の中心施設 富岡製糸場へ行こう
● 祝!世界遺産登録 富岡製糸場と絹産業遺産群 上信電鉄 全列車・全駅舎図鑑
● 祝!世界遺産登録 富岡製糸場と絹産業遺産群 1泊2日のテツ旅プラン
●全国のお伊勢さん

10月号 新幹線0系(1964~2008年)
● 祝!東海道新幹線 開業50周年

11月号 米坂線 羽前沼沢~伊佐領
● 秋を味わう 鉄道の旅 この秋乗りたいグルメ列車
● 秋を味わう 鉄道の旅 紅葉路線&名物列車
● 秋を味わう 鉄道の旅 のんびり房総orよくばり京都
● 片上鉄道展示運転15周年

12月号 東京駅
● 東京駅100周年記念特集 あなたの知らない東京駅
● 日本一の超高層ビルで天空散策 あべのハルカス

《裏表紙の広告》
1月号 「永遠の0(ゼロ)」
2月号 近鉄 奈良を照らす、冬の灯
3月号 近鉄 伊勢・鳥羽・志摩 スーパーパスポート “まわりゃんせ”
4月号 ながのまち歩き
5月号 「テルマエ・ロマエⅡ」
6月号 那覇市内観光周遊バス ゆいゆい号
7月号 近鉄 平城京天平祭★夏 2014 
8月号 宇和島運輸 新造船あかつき丸
9月号 近鉄 伊勢・鳥羽・志摩 スーパーパスポート “まわりゃんせ”
10月号 近鉄 奈良世界遺産フリーきっぷ 
11月号 近鉄 伊勢神宮参拝きっぷ
12月号 近鉄 伊勢神宮初詣割引きっぷ 

《定価》
1~3月号 1150円(本体1095円)
4~12月号 1183円(本体1095円)

※その他 交通業界以外のトピックス
◆ 御嶽山噴火 戦後最悪の火山噴火災害
◆ 青色LED開発3教授 ノーベル物理学賞受賞
◆ 「妖怪ウォッチ」ブーム
プロ野球日本シリーズ ソフトバンク4-1阪神 MVP:内川聖一
日本ダービー優勝馬 ワンアンドオンリー 鞍上:横山典弘


●来年の乗り物はどうなる
 北陸新幹線中心に動く事は間違いない。鉄道そのものは触れるまでもないし、航空や高速バスにも大きな影響を与えるでしょう。ANA・JALは早々と、3月14日以降の羽田~富山・小松線の早期予約割引運賃を発表しているが、便限定でビジネスユースには向かず、どのような評価がなされるのだろうか。やはりいずれは減便、良くても機材ダウンサイジングは避けられないのではないだろうか。
(羽田発着国際線の接続があるので、路線廃止とまではなるまいが)
 高速バスも、特に東京~北陸各地への長距離路線は影響がかなり出るでしょう。安さを武器にどこまで、という所。夜行中心にシフトしていくのか。
 一方、北海道新幹線開業の準備が深度化するにつれて、この方面の夜行列車の行方が、いよいよ怪しくなってきました。既に廃止が発表になっている<トワイライトエクスプレス><北斗星>に加え、<カシオペア><すずらん>もどうなるのか。両方とも、新幹線開業までは(運休日は発生しても)何とか運行が続けられるとは思っていますが。
 それ以外では、「ウィラー・トレイン」「四日市あすなろう鉄道」の営業開始が挙げられるでしょう。井笠鉄道やとさでん交通を見るまでもなく、ローカル交通は昔のままの枠組みではやっていけなくなってきています。
 2015~2016年は、日本の鉄道(ひいては交通)史上の大きな転換点として記憶される事になるのかも知れません。要注目です。

当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。

 エア・アジア機の一件は、昨日の帰りの<ひかり>の車内の表示で初めて知りました。機体が見つかっていない現状ではまだ何とも言えないです。イタリアでは客船の火災も発生しているし、この年末になんて事…。

《今日のニュースから》
7本の腕のヒトデ 城崎マリンワールドで公開開始