№1261 路線名と「路線愛称名」を考える」

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 東武野田線は、今年4月より「東武アーバンパークライン」の愛称が制定されました。
「都市=アーバン」と「公園=パーク」の造語で、より親しみを持ってもらいたいとの事。
 ロゴマークも制定され、野田線を走る新車60000系や本線・東上線から転用した10000系に加え、8000系にもロゴマークが書き加えられています。

 ただ、あくまで沿線外に住む私のような古い人間の個人的な感想なのだが、戦前の総武鉄道合併以降、70年の間終始野田線の名で通ってきた路線に、今更愛称名を与える必要って、あったのだろうか?
「野田」は沿線にある、千葉県の一地方都市に過ぎないのだけれど、この路線名が別にどこからも問題視されてきた訳ではないし、どこか会社側の一方的な都合で決められてしまった印象も抱くのだが、沿線の方々はどう考えるだろう?

 東武ではその前にも「東武スカイツリーライン」の例があります。伊勢崎線の内、浅草・押上~東武動物公園のみ切り取って、この愛称を与えたものです。
 もちろん自社グループ最大の観光資源の一つを大々的に売り出したいという事もあるだろうし、この区間は日光線への直通もかなりの割合を占めていて、伊勢崎線全体では、ダイヤ上南と北で大きな格差がある事もあるかも知れません。

 東武に限らず、昨今は正式路線名に加えて路線愛称名を制定するケースが極めて多くなりました。
 その走りは、多分JR西日本の「アーバンネットワーク」だと思います。東海道・山陽本線を例にとると、米原~京都は「琵琶湖線」、京都~大阪は「JR京都線」、大阪~姫路は「JR神戸線」と呼ぶようになりました。現状では、正式路線名をほぼ押しのけた状態まで知名度的には定着できたようです。

 大げさかもしれんけれど、大阪には(鉄道に限らないが)反東京的な意識があり、民営化後までの、国鉄時代の中央集権的な路線名には縛られたくない、と考えたのかも知れない。また、東海道本線と山陽本線の境界は神戸で、大阪中心のネットワークにはそぐわない、とも考えたのでしょう。
「アーバンネットワーク」の場合は、基本的には著名な地名から取られているから、まだいいかも知れない。ただ、私的には若干疑問な路線もあり、「大和路線」(加茂~JR難波)は、関西地方を走るのに、どうして関西本線ではいけないのか、と思う(変えるなら、関西地方ではないJR東海側、では?)。そんなに自前の路線愛称名にこだわるなら、国鉄時代の路線名はきれいさっぱり捨て、愛称名を正式名称に格上げしたってよいとも思うが、法的な縛りがあるのだろうか?片町線も、正式に「学研都市線」で行けば良いと思う。片町駅はもうないのだから。

 関東地方も、JR東日本の東北本線の内、首都圏の直流区間(上野~宇都宮)に「宇都宮線」の名がついて大分経ちました。
 こちらも、東北地方に延びる路線でどうして東北本線ではいけないの?とか思ったりもしたが、黒磯より先へ直通する列車も、新幹線開業後は激減してしまい、普通列車は1本もない。それに、同じく大宮から延びる高崎線が、過去には信越本線<あさま>や上越線<とき>などが頻発した、東北本線と同レベルの特急街道でありながら、独立した路線名(東北本線の支線の扱い)を持っているので、バランスを取ろうとした、という事かも知れません。

 旅客の利便性を図るべく、ズバリ地名を持ってくるケースならまだいいと思います。しかし、JRで言うと「万葉まほろば線」(桜井線)、「福北ゆたか線」(筑豊本線・篠栗線の黒崎~直方~博多)、「花咲線」(根室本線の釧路~根室)など、特に観光のイメージアップ優先で、どこをどう走る路線なのか、実際の所第三者には、パッと聞いただけでは解らない愛称も少なくないように思います。「花咲」は根室市内の漁港がある町だが、根室本線と言いながら、根室に関わる区間にわざわざ愛称を持ってくる必要もあったのかどうか。

 私鉄にも他にあります。南海の「りんかんサンライン」は、高野線の内、南海線に直通する難波~橋本の間の愛称になっています。
 正式な高野線は汐見橋~岸里玉出~極楽橋だが、汐見橋~岸里玉出は独立したローカル線になって久しく、橋本より北の、美加の台や林間田園都市の宅地開発が進んで、郊外の住宅地へ向かう路線のイメージを演出したかったからなのだとは思います。橋本から先は全く性格が違ってくるし。
 しかし、高野線の難波直通は戦争前の1932(S7)年からだから既に80年以上経ち、高野線も難波から出ている事を知らない人はほとんどいないでしょう。それに、「高野」の2文字にネガティヴなイメージがあるとは思えない(世界遺産になった位だし)し、汐見橋~岸里玉出は既に「汐見橋線」の通称が、利用者や沿線では定着しているようです。なので、わざわざ新しいネーミングを用意する必要は、なかったのでは…。

 一方で、在来路線名とは別に、新規の運転系統名として新しい愛称を与えなければならないケースがあるのも事実です。「京浜東北線」「湘南新宿ライン」は良い例でしょう。「横須賀線」もそうです。正式な区間は大船~久里浜の東海道本線の支線に過ぎないが、東京の地下駅から品川~武蔵小杉~横浜~大船の区間と一体で呼称されています。電車も戦前から専用だったし、元々停車駅が若干違っていた上、複々線化事業でルートそのものが変わったのだから、名称を変えなかったら、逆に混乱を招くでしょう。
 逆に運転形態上、2つの路線名を1本にまとめた例もあります。東急の新玉川線は、開通当初こそ二子玉川園(今の二子玉川)折返しだったが、ダイヤ改正毎に田園都市線直通が増え、ついには運転系統的には一本化した事で、1999(H11年)には田園都市線に一本化されました。その一方、目黒~多摩川園(今の多摩川)~蒲田と走っていた目蒲線は、多摩川で分断して東横線(複々線)に直通させた事で、目黒線と東急多摩川線に分かれました。運転形態に即した対応だったと言えます。

 その意味で矛盾するかも知れないが、新幹線の延伸で並行在来線が第3セクターに移管され、結果JRの区間がバラバラになるケースもチラホラ見られるようになったが、この場合は逆に路線名を変えてしまう方が良いのではないでしょうか。特に信越本線は、来年北陸新幹線が開業すると3分裂になり、「信州と越後」を結ぶ路線のはずなのに、「信州」の区間がほとんどなくなってしまいます。高崎~横川は「横川線」、篠ノ井~長野は篠ノ井線に編入、直江津~新潟は「新潟線」とでも呼び換えた方がスッキリする気がします。

 結論としては、JR・私鉄とも「路線愛称名」は、運転形態を考慮すべき時、特に新ルートを設定した際の誤乗を防ぐための運転系統の名称に留め、それ以外は、在来の地域名・地名から来る事が多い、昔ながらの路線の名前を大事にした方が良いのではないでしょうか。後は地元の人々の自然発生的な意識に任せた方が良い。「愛称名」を営業的にどの程度前面に押し出してくるかにもよるだろうが、「奥久慈清流ライン」より「水郡線」の方が、少なくとも私にはピンと来るのだけれどなあ。特にローカル線は、その方が良いと思っています。お客さんを呼びたい気持ちも解るが、それは別の面で努力すべきだと思います。

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 米中間選挙は共和党の勝利で終わりそうです。オバマ大統領の支持率が過去最低の40%台とか騒がれて、事前の期待が高かった分、失望も大きかった、という事でしょうか。身内の民主党議員からさえボロクソだし。でも、政治的指導者や内閣の支持率って、では何パーセントなら良いものなの?一方でロシアのプーチン大統領が80%とか言っているらしいが、この数字が本当だとしても、これはこれでちょっと怖い、危険な気がします。

《今日のニュースから》
小豆島バス社長ら3人 補助金詐欺の疑いで逮捕

 小豆島は、以前の小豆島バスが2010(H22)年3月一般で路線バス事業から撤退、翌4月より全くの新会社「小豆島オリーブバス」が継承しています。この事は「バスマガジンvol.43」で取り上げられ、私も少し書きました。
 小豆島バスは引き続き貸切バス・貨物運送業で存続していたが、路線バス事業譲渡の直前の2010(H22)年に補助金4000万円を不正に受給していた、という疑いが持たれ、3人は「間違いない」と話しているそうです。それ以前の3年間にも合計9000万円の不正受給があったのではないか、との事。