№1235 鉄道ピクトリアル2014・8月臨時増刊号 【特集】京王電鉄(鉄道図書刊行会)

 鉄道ピクトリアル誌の臨時増刊、京王電鉄特集号が先日発売になりましたが、少々遅くなってしまいました。ここで取り上げます。

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 構成はこれまでの1社特集と同じで、前半に対談と関係者による鉄道事業を中心とした現況の報告。
 中盤には過去の研究と、マニア的な目線の研究記事、後半に現役を中心とした車両開設が据えられています。
 前回の京王特集は2003年7月臨時増刊号だったから11年1ヶ月振り。昨年は100周年記念で様々な事業が行われているが、この10年で見ると、鉄道に関しては調布の立体化や、「京王れーるランド」のオープンなどが挙げられるかと思います。元々同じ関東大手でも西武や小田急、東急などと比較したらそれほどの大企業ではないと思うが、地域密着で質的な向上が図られてきたという所です。

 駅別の乗降人員は2001(H13)年度と比較した12年間で、増えた駅は大きく増え、減った駅は大きく減ったという傾向があります。微増・微減という駅が少ない。
 若葉台は倍以上、多摩境もほぼ倍増、橋本は約1万9000人、京王稲田堤や仙川が約1万3000人も増加。
 高井戸は6000人近く増えて40000人を突破、久我山より多くなり、急行停車駅になっても良さそうだが。
 一方、多摩動物公園は半分以下になりました。一番少ないのは長沼(11年前は京王片倉)。1000人近く減っているがそれでも4000人を超えていて、他社では23区でももっと少ない駅があるのだから(東武の堀切は4000人に満たない)、京王は全体的に乗降客が非常に多い鉄道だと言えます。
  これを踏まえた現行ダイヤは、笹塚~調布で日中は1時間当たり、特急9・区間急行3・快速3・各停6の合計21本になり、複線区間としては京急(品川~京急蒲田)と同じで、かなりタイトになっていまです。特急通過駅の利用者から不満が出ているらしいが、どう改善するのだろうか。

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 駅務機器の変遷としては、最近改築を行った駅を複数巡ってみたが、小規模な駅では精算機がなくなり、代わってICカードチャージ機が置かれるようになっています。小型ディスプレイによる行先種別案内表示はうまいアイデアで、他の鉄道でも採用されると良いと思いました。
 駅舎そのものの改築は冒頭の対談で少し触れられているだけで、特に大きくは取り上げられていなかったのが少々残念。地下駅舎→橋上駅舎というのが大きな流れになっているが、地下駅舎ではバリアフリー対策は難しいのだろうと感じます。全体的に利用者が増えているのに、地下のままでは拡張ができない、という事もあるでしょう。

 一方で調布付近の連続立体化は地下線で行われたが、郊外でこれほどの地下化はあまり例がなく、どのような経緯があったのだろうか。
「2002(H14)年2月に地下方式に変更」と記されているが、なぜ高架ではなく地下に変更になったのか。
 この点は前回特集でも触れられてはいないのだが、景観の問題があったのではないかと思います。調布で上下線を分離するとなると、京急蒲田駅位の規模とせざるを得ず、既に市街地化が進んで高層ビルも多い蒲田とは違って、巨大な高架駅が目障りになると、地元から意見があったのかも知れません。

 過去編においては高尾線・相模原線がかなり詳しく記述されていたが、特に相模原線は多摩ニュータウンの開発に伴って延伸した路線なので、単なる一支線の枠を超えて本線格に成長していく様が興味深い。この点は過去の京王特集でも詳しく記されている部分だが、多少脱線するけれど、相模原線のような路線の存在こそが、関西にはない関東大手の特徴なのだろうと思う。関西では線内で急行運転を行う支線がほとんどないので。
 リニアの開業・橋本駅開業はどの程度京王への影響があるものなのだろう?開業は順調でも13年先だし、運賃・料金の水準は(少なくとも当初は)新幹線より相当高くなるはずで、東京への通勤には使いづらいのではないでしょうか。

 車両面では、5000系の冷房装置がずいぶん詳しく調査されているなあと思いました。通勤電車の冷房の黎明期はどこも同じではあるだろうが。
 5000系・3000系はかなり地方に転籍したが、これで地方に適した18m級車両はなくなってしまったし、他社(特に東急)から比較的新しいステンレス車が多数拠出される事になれば、京王の中古車は、しばらくは出てこなくなるのではないでしょうか。6000系も、比較的新しいのに1両も売却されなかったし。
 8000系は10両固定化改造が始まっていて、写真で見る限り、内外とも出来栄えは良さそう。但し、一部で試行されている制御装置更新・PMSM搭載は伴っていないよう。
 旅客車が843両もありながら4系列しかないので面白味は少ないが、個々の系列で違いが結構あり、その辺を突くのが通の楽しみ方になるのでしょう。

 今後の京王は、高尾山口駅の改良や、笹塚~仙川の連続立体化などはあるが、規模がそれほど大きくはないし、箱根や日光のような泊りがけで出かける大観光地は少ないので、しばらくは地域密着の改良が続く事になるのではないか。ただ、東京オリンピックでは東京スタジアム(味の素スタジアム)で競技が予定されていて、京王自身も直接観客輸送に携わる事になるので、その辺の対応は迫られるかも知れない。
 ダイヤ面では、現行の相模原線は急行運転の列車が日中1時間に特急3本のみで、本線格に成長している現状においては少ないとも思う。今後の小田急多摩線~メトロ千代田線への対抗も考える必要があるし。しかし、新宿~調布が現状のままでは増発はほぼ無理。また、相互直通運転の相手が都営新宿線に限られ、本八幡から先への延伸の可能性もほとんど無い状況では、大幅なダイヤの組み替えは考えにくく、次のダイヤ改正は来年ともされているようだが、ダイヤ体系の大幅な変更の可能性は、あまりないように思います。
 車両面では、クロスシート車のデビューを期待するテキストもチラホラ見られたが、私はあまり無理しないで良いと思う。新宿~高尾山口でも44.7㎞しかないし、終日に渡って利用者が多い状況だと、無理して造っても、ラッシュのピークを外しながらの効率的な運用は困難ではないでしょうか。7000系のVVVF改造が終わったばかりだし、あと5~6年は、新系列のデビューはなさそう。
 全体的には、通勤鉄道としてはある程度完成された感もあるので、地味ではあっても着実に改良を進めて行けば良いのではないでしょうか。

 ピクトリアル誌の1社特集、次こそは京急または阪神を、とお願いしたいのだが、西武・京王と関東が連続したので、期待されるのは阪神?

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 エールフランスが明日(15日)からストライキ、だって。全体の6割が欠航になるそうで、日本路線ではとりあえず、明後日16日発着の羽田便1便(272~279便)のキャンセルが発表になっています。ストライキは22日まで、1週間予定されているそう。相変わらずフランスは過激だなあと思うが、社会党オランド政権になっても経済状況が好転していないようなので、より強硬な方向に行ってしまうのかも知れません。

 今日は全体的に高速道の事故が多いようで、東関東自動車道では京成バスシステムの高速バスが追突事故を起こしたそうだし、関越や東名でも事故が起きているようです。明日もかなり混雑しそう、どうかどこも事故が起こらないように。

《今日のニュースから》
香港で民主派抗議デモ 2000人が参加