これまで6回に渡って、1997(H9)年12月の13日間に渡るギリシャ旅行について書きました。
最終回は、ギリシャの基幹鉄道事業者、ギリシャ鉄道(OSE=Organismos Sidirodromon Ellados)の車両と、アテネのターミナル・ラリッサ及びペロポネソス駅の画像を御覧頂きます。
また、総まとめとして当時感じたギリシャの鉄道の印象、当時のギリシャのパーソナルデータを記して、完結とします。今現在とは大分様相が異なり、ギャップが大きくなってしまっていると思うのですが、その点はご承知おきください。
(各車両の形式についてはご勘弁を)
当時のOSEのシンボルマーク。
まずは本線用のDL。
3枚目は、ブルガリアとの国境越えの列車を牽引していたタイプです。
ペロポネソス半島のナロー路線を走るDL。本線用と、ほぼ同型と見えました。
本線用の入替用DL。
ナロー路線の入替用DL。
この客車はカラーからして、ドイツ鉄道(DB)の中古でしょう。銀色の帯が追加されているが。
これもDB中古?
ナロー路線用の客車はやはり少々小ぶり。
本線用のDCで、動力準集中タイプ。
ローカル用のDC。
№1160で書いた通り、ICはペロポネソスのナロー路線でも走っています。
ナロー路線用は、本線用と比べるとややおとなしいデザインに見えます。
ナロー路線にも、動力準集中式のDCが走っていました。
次に、改めて首都アテネの駅。
テッサロニキなど、北部へ向かう標準軌路線のラリッサ駅と、ペロポネソス半島へ行くナロー路線のペロポネソス駅に別れていました。
OSEの歴史は解らないが、恐らくは、かつては別々の鉄道事業者だったのでしょう。
まず、ラリッサ駅。
窓口。
売店。
ホーム。当時はあまり首都のターミナルという感じはしません。地方都市の駅というイメージ。
こちらはペロポネソス駅。ラリッサと比べると、線路同様小ぶりな感じがしました。駅舎は堂々としているが。
窓口。なんだか厳かな雰囲気でした。
ホーム。
こうして車両や駅の写真を並べてみると、他の西側諸国と比べてレベルがかなり低いというのが、当時の率直な印象です。
この後、ペロポネソス半島へのナロー路線はコリントス運河に近いキアトまでは標準軌化され、このためペロポネソス駅は廃止になったとの事です。
以上、7回に渡って、本当に簡単ながら、ギリシャの鉄道の旅について書いてきました。
ここで、短い期間ながら乗り歩いて感じた、当時のギリシャの鉄道の印象。
1. 列車の種別は、基本的にはインターシティ(IC)と、それ以外に大別できるようだ。「それ以外」には「急行」と「普通」の違いがあるようだが、時刻表上ではできない。列車番号3ケタ…「急行」、4ケタ…「普通」と思われる。
2. どの路線も、運行本数は少ない。アテネ~シャルキス間の近郊列車は1時間に1本程度あるが、他は幹線でも多くはなく、支線区だと1日数本程度。
3. これまでしつこく書いてきたが、1~2時間単位の大幅な遅延が日常茶飯事の様子。特に北部が酷い。信号・通信設備が未整備の区間が多いようで、自動信号機が普及せず、ペロポネソスのナロー路線では、信号機そのものをあまり見かけなかった。どのような信号システムなのかは解らなかったが、列車行き違いの場面で遅れが増幅する傾向にあったので、これが主な原因であるように思えた。
4. 一方で、特にテッサロニキ付近を中心に大規模な改良工事が行われていて、所々新線に切り替わった区間も多々見られた。当時の最高速度は120㎞/h程度だった。
5. 山岳区間が少なくなく、大規模なスパイラル線が連続し、あまり知られていないがダイナミックな車窓を楽しめる区間も多い。ペロポネソスにはラックレールの路線もある。
6. 車両面について、本線のICは専用DC、「急行」はDLの客車列車、「普通」はDCが中心。ペロポネソスのナローは、一部に客車列車もあったが、大半はDCだった。電化はまだされていなかった。テッサロニキ~マケドニア方面には架線が敷かれているようだったが、まだ使用されていなかった。
7. 困った事に、客車は整備が不十分、というより壊れたら壊れっぱなしの車両が大半。特に暖房が不備の車両が多いのには参った。北部の冬はものすごく寒いのに…。
8. 駅の数はそこそこある。北海道の旧仮乗降場のような簡素な所も目立った。南部と北部では趣きが異なる(南部…絢爛、北部…質素)。ペロポネソスの路線は、鉄道用地とその外の境界がかなりあいまいだった。駅の業務の近代化も進んでいなくて、切符類は硬券が幅を利かせている。「鉄」には感涙かも知れないが。
9. 当時としても、国際列車は縮小の傾向にあったのか、あまり走っていなかった。マケドニア方面行以外はローカルばかり。貨物輸送は盛んなようだったが。
10. 私鉄は走っていない。都市交通もアテネに地下鉄とトロリーバスはあるが、他はバスのみ。過去にはアテネに路面電車があったかも知れないが。北部のコマノス付近には、電化された工場(発電所?)の専用線が見られた。
11. アテネ(ラリッサ・ペロポネソス)駅から主要都市までの運賃(2等車)。(日本人の感覚では)非常に安い。
ピレウス 8㎞ 105GRD(約50円)
パトラス 222㎞ 1,600GRD(約750円)
ラリッサ 333㎞ 2,930GRD(約1,380円)
テッサロニキ 503㎞ 4,100GRD(約1,930円)
コザニ 650㎞ 4,970GRD(約2,340円)
アレクサンドロポリス 946㎞ 7,090GRD(約3,340円)
※1GRD≒0.47円で計算
最後に、ギリシャそのもののパーソナルデータを記しておきます。
(帰国日の1997(H9)年12月22日現在)
正式国名 ギリシャ共和国 Hellenic Republic ; Greece
面積 約131,957平方㎞ (日本の1/3強・北海道+東北よりはやや狭い)
人口 約1,035万人
政治体制 共和制 議員内閣制
国家元首 コンスタンティノス・スヘファノプロス大統領
※現在はカロロス・パプーリアス大統領
政治指導者 コスタス・シミティス首相(全ギリシャ社会主義運動)
※現在はアントニス・サマラス首相(新民主主義党)
首都 アテネ(首都圏人口約303万人)
国連 加盟(1945(S20)年)
EU(EC) 加盟(1981(S56)年)
NATO 加盟(1980(S55)年復帰)
通貨 ドラクマ(GRD) 1GRD≒0.47円
言語 ギリシャ語
主な観光地 アテネの古代遺跡、エーゲ海の島々、オリンピアなど
日本からのアクセス 直行の空路はない
最後の国境越えの場面に如実に現れたと思うのだが、ギリシャの鉄道は全体的に不備な点が多くて、残念ながらユーレイルパス通用国(当時17ヶ国)の中では最低のレベル、というのが当時の率直な印象でした。
しかし一方で、あまり日本では知られていない事もあって、思った以上の絶景に巡り合ったりして、楽しい、素晴らしいと思えた部分も多々ありました。
ギリシャの鉄道はこの後2004(H16)年のオリンピックに向けて急速な整備が進み、アテネ近郊では電化や新空港アクセス鉄道の開通、地下鉄新路線にLRTの開業もあり、テッサロニキ近郊でも電化による近郊鉄道の整備が進められたと聞きました。
しかし、この数年の深刻な経済危機は一転して鉄道にも深刻な影響を与えており、3年前より国際列車が全て取り止めになっている他、ペロポネソス半島など多数のローカル路線が運行停止に陥っています。
最近少しは経済的な状況が好転しているのか、4年ぶりに長期国債の発行が行われたとのニュースもあったが、依然として予断は許さないと思います。
何とか早く完全に立ち直って、旅行者が安心して鉄道の旅を楽しめる環境が復活してほしいと思っています。とりあえずは国際列車の運行の復活かなあ。そうなったら、もう一度国際列車の旅をやり直す機会を作ってみたいとも考えています。
次回の「クロニクル」は、1998(H10)年5~6月のドイツです。
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《今日のニュースから》
世界最高速エレベーター 日立製作所が開発を発表
時速約72㎞/h、中国・広州に建設中の超高層ビルに納入するとの事。このビル、地上530mというから「ハルカス」より200m以上も高い…。