№1122 神奈川の駅を全部撮る!〈終〉 神奈川の駅の未来絵図

 ブログ1000回更新記念企画として始めた「神奈川の駅を全部撮る!」も、最終回になりました。
 日本の鉄道の歴史と全く時を同じくして歩んできた神奈川の鉄道だが、その未来はどこへ向かう?駅を中心に、簡単に展望します。

〔新路線〕
 そろそろ実現が見えてきた新路線として、「相鉄・JR直通線」「相鉄・東急直通線」があります。
 相鉄線の西谷と、JRの貨物専用駅である羽沢との間に連絡線を新設、両社の旅客列車の相互直通運転を行うというプロジェクトです。
 さらに、羽沢と東急東横線の日吉の間にも新路線を建設する計画も、一昨年に工事が認可されました。実現すると相鉄と東急の相互直通も開始、相鉄は2つのルートで東京の都心に向かう事になります。
 相鉄は横浜西口の開発にも大いに貢献した、神奈川県内資本の鉄道の雄なのだが、広域的な鉄道ネットワークの観点からは、必ず乗り換えの現行の路線形態は、利用者の獲得の上では正直ハンデになりつつあります。
 したがって、他鉄道を介する事にはなるが、東京までダイレクトで行ける列車の運行が出来るようになる事は、相鉄にとっては大きなプラスとなるはずです。
 ただし、先行する「相鉄・JR直通線」の工事は遅れており、当初は2015(H27)年度完成が3年程度遅れ、2018(H30)年度になる見通しだと、昨年4月に発表になっています。

 先日、相鉄とJRの境界となるだろう、羽沢新駅の工事現場を見に行ってきました。

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 横浜市神奈川区の西部にある、JRの貨物線上の羽沢貨物駅の北西部で、新駅の建設工事が進んでいます。
 ここは掘割式になり、すぐトンネルになって相鉄線の西谷まで通じる事になります。
 駅そのものもだが、駅に通じるJR側の旅客線がいまだ姿を見せておらず、確かに当初の完成予定には間に合わないだろう、と見えました。
 西谷側のトンネルの工事は鋭意進められていて、ダンプカーが周辺の道路を行き交っています。

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 最寄のバス停は、神奈中バス121系統(新横浜駅~保土ヶ谷駅西口 以前は市営バスだった)の「羽沢貨物駅」。日中は1時間に1本程度の運行です。
 現状において、この付近で一番利便性が良いバス停は、相鉄バス・市営バスの「三枚町」で、横浜駅西口まで頻発しています。工事現場まで徒歩15分程度か。

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 沿線の住民へのお知らせが掲げられています。
 気になったのは駅の構造で、2社の境界になる駅なのに、普通の相対式2面2線になるのか。
 これでは単なる中間駅で、例えばダイヤが乱れた時の運転整理とかには支障になってしまうのではないか。
(さらにこの後東急も入ってくるならなおさら)
 あくまで勝手な推測だが、羽沢~西谷は、営業は相鉄だが、JR・東急の乗務員が通しで乗務、西谷で相鉄の乗務員に交替する形態になるかも知れません。
(阪神なんば線の大阪難波~桜川と同じ)

 それと、「相鉄・JR」の場合、このままだと羽沢の次は武蔵小杉まで駅がない事になり、貨物列車や、武蔵小杉からの先の横須賀線・湘南新宿ラインの存在を考えると、ダイヤ編成が難しくなるし、異常時には混乱を招く恐れがあるのではないか?
 計画は全くないし、特に要請もないようだが、利便性の向上と異常時対策を兼ねて、鶴見あたりにも駅を設置した方が良いのではないかと感じました。
「相鉄・東急」の方は新横浜・新綱島の2駅を設置。新横浜は地下4F?に2面3線、新綱島は地下5F?に島式のホームを設置するよう。新横浜を境に羽沢側が相鉄、日吉側は東急が営業を行う事になるのだろう。
 こちらは大倉山付近にも駅を、という声があるらしいが、造るとなると、ここもホームは地下4~5F程度の深さになりそうで、工事費がかなりかかるのではないだろうか。ここはちょっと難しいと思います。
 これらが全て完成すると相互直通の相手はJRは多分埼京線(今の新宿折返しを延長する形)、東急は目黒線になると思います。一気に都心をスルーして埼玉県へ行く列車が2系統走る事になり、広域鉄道ネットワークがさらに拡充する事になります。ただ、既に湘南新宿ライン(+上野・東京ライン)や東急各路線にも似たようなネットワークがあるので、利用者にはややこしくなる感じられるかも知れません。

 もう一つ、少しは現実味を帯びてきたのが「リニア中央新幹線」で、環境影響評価準備書が昨年公表されました。
 神奈川県は橋本付近に駅が造られる事になりそう。横浜線・相模線・京王相模原線が集中する所で、順当な選択でしょう。
 これでリニア新幹線がGOとなるのか。順調に事が進んでも開業は20年も先だし、環境問題(沿線の自然の保護に加えて、磁気が人体に与える影響、消費電力)もあって、すんなり行くのかどうか。
 私が生きているうちに、リニア新幹線に乗れる日が来るのでしょうか。

 この他にも神奈川県にはいくつも鉄道の構想があり、相鉄いずみ野線の延伸(元々平塚まであり、とりあえず慶應大学キャンパス付近まで)とか、横浜環状鉄道(グリーンラインを延伸する形)、小田急多摩線相模原延伸、横浜市長が提唱するLRTとか、大小さまざまありますが、どれもこれも構想の域を出ていません。
 ほとんどがバブル期のものであり、少子高齢化→人口減少が言われる現状では、あまり実現性は高くない気がします。

〔新駅〕
 新線に絡まない新駅としては、東海道新幹線の相模新駅構想が、かなり昔からあります。
 相模川を渡る手前で相模線と交差するが、この付近に新駅を造ってほしいというもので、期成同盟会が組織されています。倉見駅があるので、県央(海老名・綾瀬市など)からのアクセスが向上するとしています。
 ただ新幹線の駅となると、線路脇に安普請のホームをこさえれば一件落着のローカル線とは違い、高速運転の安全性を確保できなければならず(ホームの乗客も、列車そのものも)周辺の整備も含めると相当な工事費がかかるでしょう。
 まして現行の東海道新幹線のダイヤがタイトで、相模新駅に列車を停車させるためには待避線の設置が不可欠、さらに費用が増えるはず。
 同じく構想があった「びわこ栗東」新駅(滋賀県)がほぼご破算になった事を見ると、こちらも正直?な気がします。やるとしても、リニア新幹線が開業して、東海道新幹線の本数が若干でも減った時点で、在来の新幹線駅より若干簡素にした構造で造る事になるでしょう。
 そうなると実現するとしてもさらに遠い未来の話になりそう。

 他に知る所では、東海道本線の村岡新駅構想があります。大船~藤沢の、藤沢市村岡地区に新駅を造ろうというものです。
 湘南貨物駅の跡地で、隣接して武田薬品の研究所や神戸製鋼があり、市境の先の鎌倉市深沢地区にはJR鎌倉車両センターの跡地(大船工場)もあって、両市に跨る街づくりの一環として、新駅建設の構想が浮上しているものです。大船・藤沢両駅の混雑の緩和の期待もあるようです。
 列車に乗って眺めてみた感触では、貨物駅の跡の線路が残ったままなので、これを整理すれば駅自体の設置は難しくなさそうです。後は駅周辺の区画整理で地元住民の協力が得られるか。

〔在来駅改良〕
 特に「連続立体交差」事業における駅の高架化、あるいは地下化は、神奈川県では今の所相鉄の星川(高架化)、京急の産業道路~小島新田(地下化)が推進されている所です。
 星川は2002(H14)年に事業認可が下りた後、車両の留置線を西横浜に移すなどした後に高架線の建設を開始、駅付近は大方組みあがっているようです。
 ただこちらも工事は遅れ気味、完成目標が当初の2012(H24)年から2018(H30)年と、6年も先送りになっています。
 完成すると、星川駅は現行と同じ2面4線ホームが、高架線の3F部に造られる事になります。関連して、天王町駅が現在の相対式から、島式ホームに改築されます。
 京急大師線は、本来はほぼ全線を地下化、京急川崎駅自体大師線乗場は位置を変更(富士見通のほぼ真下あたり)、川崎大師までは完全な新ルートになる予定。
(京急川崎~港町には駅が1つ新設される見込み)
 先行して、東門前~小島新田から工事が始まっていて、産業道路と交差する踏切を単線化、その先小島新田までを単線並列とする暫定的な線路形態になっています。
 しかしこちらもまた工事は遅れ気味で、完成目標が2019(H31)年に延期になっている上、京急川崎側に関しては工事の着手自体も怪しい状況になっていると言われています。
 星川も大師線も用地買収が最大の難関になっていて、踏切の除去は安全運行の点からも急がれるべき … 私、私鉄乗務員時代に軽微な踏切事故の処理を2度経験しています … なのだが、簡単ではないなあと、改めて痛感させられます。

 この他、横浜駅西口の新駅ビル建設工事もあるが、神奈川県全体を見渡すと、路線にしろ駅舎にしろ、根本的に構造を変えるようなプロジェクトは今の所、他には見当たらないようです。

 神奈川県は、東京を巡る首都圏各県の中では比較的早くに人口の増加・都市やニュータウンの開発が進み、対応するように鉄道の新線建設や複々線化などの輸送力増強も、他より早く進んだような感があります。
 それらが一段落し、都市によって差はあるだろうが、今後は人口の減少さえ指摘される昨今では、大規模な鉄道プロジェクトは、神奈川県ではほとんど生まれないだろうと思います。
 むしろ東京都内の鉄道プロジェクト(小田急線の下北沢複々線化、JR「上野・東京ライン」開業など)に左右される部分が大きいだろうが、今後は路線・駅とも、利用をつなぎとめるための質的な向上に、エネルギーが費やされる事になるのではないでしょうか。

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 最後に、神奈川県に限らないが、私自身、鉄道の駅についてこうあって欲しいと思う事。
 まず、しつこくなってしまうのだが、「エキナカ」はもうほどほどにした方が良いのではないか?
 特に民営化以降のJR駅で顕著なのだが、改札内に店舗を多数誘致する事で、地域との間に軋轢を生むケースをまま聞きます。
(鉄道の利用者は改札がバリアーになって、外部の店舗を利用できなくなるから)
 本来鉄道は地域密着があるべき姿のはずで、こういうモメ事は良くない。
 また、東日本大震災以降の逼迫した電力需要もあるし、今般の大雪でもクローズアップされたが、長時間路線が不通になった時、列車に乗れなくなった多数の利用者の滞留場所を確保しておく必要も出てきていると思います。
 せっかくの広いスペースを店舗で埋め尽くしてしまい、輸送障害が発生した時の利用者の居場所の無くしてしまうのは、良い事ではありません。
 神奈川県では幸いまだないが、他都市の駅の中には、駅というよりどこかテーマパーク的な方向に行ってしまって、本末転倒になってしまっている所もあります。
 今後建設される横浜駅西口新駅ビルがどのようなものになるか、具体的な所は解らないが、本来の駅の機能を喪失するようなものにならないよう望みます。

 一方で、利用の少ない駅では合理化が進み、駅員の姿もだんだん少なくなってきました。
 平成に入って以降、各鉄道とも大半の駅が自動改札になり、改札口に駅員が立つというシーンは、少なくとも神奈川県ではほとんど見られなくなりました。
 それだけならまだいいが、遠隔操作導入で駅員の配置そのものがなくなったり、いても時間限定になったりするケースも見るようになりました。
 御殿場線の山北も、町を代表する駅でありながら一時は駅員の配置がなくなり、地元NPO法人への委託でかろうじて最低限の人的サービスを確保する事態になっています。
 もちろん何が何でも人をたくさん配置しなければならない、というつもりはないし、一部には逆に「これはもういらないんじゃないかなあ」と思うような人員配置も多少は見かけます。
 極端に利用が少ないローカル線の駅だと、ホームに簡素な待合小屋だけの無人駅が、逆に旅情をそそったりする事も、ない訳ではありません。
 しかし、堂々とした駅舎の窓口に「○月○日を持って駅員の配置を取りやめました」などと張り紙があったりするのを見かけると、ガッカリする事は事実。
 ローカル線はまだしも、前述のリニア新幹線の中間駅は営業要員や切符販売スペースすら置かないと聞くと、「そんな寂しい事言うなよ」とか思うし、これも幸い神奈川にはまだないが、去年訪れた山陽電鉄の舞子公園駅が、高速バス乗換駅で特急停車駅にもなったのに、遠隔操作で駅員の配置がなくなっているのを見ると、この流れは正しいのか、と若干の疑問も感じます。
 列車のワンマン化も同じで、国鉄の経営悪化→民営化の過程で「人手が多いのはコストの無駄、いけない事なんだ」という風潮になってしまった事の流れではあるのだが、少しはこれが正しい方向性なのか、今一度みんなで考える事もあるべきではないか。
 とはいえ、特に運転関係はホームドア設置などもあるから確かに人手は必要なくなるだろう。であれば、その分を営業とか、案内とか、ソフト部分に費やして欲しい。

 ダラダラ書いてしまったが、

駅の基本は、列車への乗り降りのためにある

この根本は忘れないで、営業にしろ、改良・改築にしろ進めて頂きたいと思っています。

 最後に前にも書いたが、私自身、いかに地元神奈川の鉄道、そして地域について知らなさ過ぎたかを、今回の企画の作成を通じて痛烈に思い知らされました。
 あっちこっちと遠くへ行きたい、この気持ちは今も変わりませんが、今後はもう少しは地に足をつけて、わが町・神奈川の鉄道の過去・現在・未来について、見て、知って、考えていきたいと思います。
 このブログでも書く事もあろうかと思います。
 今後とも、当ブログをよろしくお願いいたします。当企画の長らくの閲覧ありがとうございました。


この企画は

「神奈川の鉄道」(日本経済評論社)
「横浜の鉄道物語」(長谷川弘和/JTBキャンブックス)
「日本の鉄道旅行地図帳4号 関東2」(新潮社)
「週刊 歴史で巡る 鉄道全路線」「同 私鉄全駅・全車両基地」関係各号(朝日新聞出版)
「マイウェイ №87 かながわ御殿場線物語」(公益財団法人はまぎん産業文化振興財団)
各鉄道事業者公式Webサイト

などを参考にさせて頂きました。


 当ブログでは、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 なお、当ブログに寄れない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。

 明日・明後日の更新はお休みです。
 それにしても、2週連続の大雪の中の通勤、疲れました。
 でも私はまだまだ恵まれた方で、高速道路とかで身動きができなくなったり、孤立して食糧品の確保に四苦八苦されている方々は、本当に災難だと思います。
 バス路線も山間部はまだしも、横浜市内でさえいまだに運行を再開できていない区間があって、まだ数日は混乱が続きそうです。

《今日のニュースから》
米下院ロイス外交委員長 中曽根元首相らと会談 安倍首相靖国神社参拝に懸念