「バスジャパン・ハンドブックシリーズS」、西鉄バス編の後半、中・大型一般路線車。
対象は全部で2287台に上りました。
西鉄グループは福岡県のほとんど全域に路線があり、特に福岡・北九州市内は多数の営業所がある上に分社もあり、西鉄本体も郊外は分社などへの委託があるので、分析の前にバス部門の事業所(営業所・車庫・支社)を整理してみます。
後半の「西鉄バスのあゆみ」だけでははっきりしなかった部分(特に委託車庫)もあるので。
(西鉄本体の営業所は、正確には「自動車営業所」だが、「自動車」は省略。東京都営バスと同じく、過去に路面電車の「電車営業所」があったから区別していた名残りだろう)
西日本鉄道
●中央主幹営業所 … 博多営業所・愛宕浜営業所・吉塚営業所・百道浜営業所・雑餉隈営業所・自動車教習所(車庫)
●西主幹営業所 … 壱岐営業所・金武営業所・早良営業所
●南主幹営業所 … 片江営業所・桧原営業所・柏原営業所・那珂川営業所
●東主幹営業所 … 新宮営業所・香椎浜営業所・土井営業所・宇美営業所
●委託車庫 … 福岡高速営業所(高速)・北九州高速営業所(高速)・飯塚第2営業所(筑豊)・篠栗第2営業所(筑豊)・香月第2営業所(筑豊・高速バスのみ)赤間第2営業所(宗像)・月の浦第2営業所(二日市)・甘木第2営業所(二日市)・宇美第2営業所(二日市)・原第2営業所(二日市)・久留米第2営業所(久留米)・大川第2営業所(久留米)・筑後第2営業所(久留米)・八女第2(久留米)・京町第2営業所(久留米・高速バスのみ)吉井第2営業所(久留米)・佐賀第2営業所(佐賀)・日田第2営業所(日田バス・高速バスのみ)・亀の井第2営業所(亀の井バス・高速バスのみ)
西鉄観光バス 福岡支社・千代支社・北九州支社
西鉄高速バス 福岡支社・北九州支社
西鉄バス北九州 小倉営業所・弥生が丘営業所・戸畑営業所・八幡営業所・門司営業所・恒見営業所・浅野営業所・中谷営業所・香月営業所・行橋車庫
西鉄バス筑豊 本社・田川支社・直方支社・大隈車庫・篠栗車庫(西鉄受託のみ)
西鉄バス二日市 本社・原支社・宇美支社
西鉄バス久留米 本社・大川支社・京町支社(西鉄受託のみ)・吉井支社・八女車庫(西鉄受託のみ)
西鉄バス大牟田 本社
西鉄バス佐賀 本社・鳥栖支社
◆西鉄バスの車両たち
冒頭の写真カタログを眺めて気付くのは、台数の割にはバラエティが少ない事。
西鉄の場合、
1.2010(H22)年の西工車体製造終了までは、車体は完全に西工偏重であった事。
2.仕様・規格の標準化が徹底されており、大型車の中での短尺・標準尺・長尺とか、地域によって中ドアが引戸・4枚折戸、とかいった違いが見られない事
等が挙げられます。
ここからは、「S82」全車+「S81」の乗合車を含めた2351台について記します。
1.西鉄は西工生産終了まではシャーシよりボディ重視の傾向がはっきりしている。
現状では日産ディーゼル58.40%、いすゞ18.84%、日野12.63%、三菱ふそう9.91%と、日デが6割近くを占めている。
特に西工が日野・三菱ふそうへの架装を中止した2002(H14)年以降、2002(H14)・2004(H1)・2008(H20)年は100%日デ。
いすゞは2005(H17)~2007(H19)年・2009(H21)年に西工車体で若干導入があったが、日野は2002(H14)~2008(H20)年は全く導入なし。
三菱ふそうも2003(H15)年、二日市がコミュニティ用のローザおよびエアロミディMEを導入したのみで、2010(H22)年までは中大型の導入がありませんでした。
日デPKG-RA274MANは一形式だけで5年間に518台が導入され、これは乗合車全体の5分の1以上にも上り、貸切・高速・特定も含めたグループ全体でも17%以上を占めます。
(しかし実質3タイプしかない)
日デ導入終了以降の3年間ではいすゞが毎年5割近く導入され、残りは年によって日野か三菱ふそうのどちらかの導入が多くなる傾向があります。
エルガ・ハイブリッドは、「バスジャパン・ハンドブックシリーズ」初登場。
2.一般乗合運行8社では、分社が行われたとはいえ、西鉄本体が65.38%を占めています。
北九州は22.25%、当然ながら2大政令指定都市に台数が集中する傾向があります。
西鉄本体に絞ると、南主幹営業所管内が28.24%に達する一方、東主幹営業所管内は15.42%に留まっています。福岡市は南高北低の傾向があるでしょうか。東は福岡市外の営業所があり、西では地下鉄の影響もあるでしょう。
所属台数にはかなりのバラつきがあり、最大の那珂川(福岡市外)には140台配置されている一方、吉塚・香椎浜には各43台しかありません。
(営業所統廃合の影響もあるかもしれない)
分社への委託は18.22%。
3.平均車齢は8.85年と出ました。
参考までに、比較のため、当ブログスタート以降の「BJハンドブックシリーズ」各社の当時の平均車齢(乗合)を並べてみました。
R69の東急バスが5.8年
R70の国際興業が5.74年、山梨交通が15.46年
R71の京阪バスが7.30年
R72の富士急行が8.35年
R73の神戸市交通局が6.17年
R74のアルピコ交通が13.66年
R75のジェイアールバス関東が12.02年
R76の神姫バスが8.75年
R77の茨城交通が17.72年
R78のジェイアール・北海道バスが12.31年
R79の函館バスが11.63年
R80の関東バスは7.02年と出ていました。
年も違うし、集計の対象も若干変えたから単純比較もできないが、基本的に西鉄グループは、排ガス規制が厳しい首都圏や近畿圏よりは若干高目、しかし地方の事業者よりは大幅に低い、中間的な結果が出ていると思います。
(富士急・神姫とほぼ同じ)
西鉄本体は8.88年だが、東管内が5.48年と大幅に若くなっています。理由はちょっと解りませんが。
委託車庫は12.47年。
分社では福岡市に近い二日市が9.97年と比較的若い以外は、北九州が10.96年、他が11~13年程度と高目です。
福岡市が一番車齢が若く、郊外に行くほど高くなる傾向は、他の大都市の事業者と変わりません。
最も、福岡市内でも20年程度の経年車が少なくなく、1992(H4)年式が8台、1993(H5)年式が18台残っています。予備車と思うが。
4.ノンステップ車は今の所グループ全体で61台。
17台はコミュニティの小型車(ポンチョ・エアロミディME)で、一般的なノンステップ車は44台に留まっています。
ノンステップ率は2.59%。
なお、グループ全体の乗合・高速・貸切・定観・特定の割合はそれぞれ77.34%、12.24%、9.38%、0.07%、0.99%でした。
平均車齢は高速車は7.90年とさすがに若いものの、貸切車(高速・乗合からの転用を除く)は14.77年と大幅に高齢化していて、1995(H7)~1997(H9)年の導入車が全体の5割近くに上ります。
◆ 西鉄バスのあゆみ(後編)
さすがの西鉄バスも、この10~20年位は全部門で厳しくなっているようです。
<ムーンライト>でさえ不振、関西へ行く系統は他との統合で1本だけになってしまいました。
(それについては№130で書いています)
分社については、当初は独立色を高めて地域密着性を強調→やはり西鉄グループとしての連帯感を出したいため、再編成に合わせて社名を変更・カラーも再統一、という考えではないかなあと思われました。
記述で気になったのは、まず2010(H22)年の大幅縮小について触れられていない事。
21世紀に入って以降の一連の流れの一つではあるのだが、この年発表の縮小は西鉄のバス事業では史上最大とされ、営業所の統廃合(四箇田・脇山等)にドライバーの採用停止もあったたため、避けては通れない事だと思います。
また、最後の西日本車体の廃業は、テキストからは、「日産ディーゼルがバス部門から撤退するから廃業を決めた」ように読めてしまう。もちろん時系列的には逆で、西鉄は導入しなかったものの、日デ→UDトラックスは三菱ふそうエアロスターのOEM供給車を販売していたので、これは誤りではないでしょうか。
◆ 西鉄バスの路線エリア
当然、福岡・北九州の二大政令指定都市に路線の相当数が集中しています。
この数年でかなり路線が整理されているらしいが、それでも現在でも結構奥地まで路線が延びています。
ただし大牟田は9年前の路線廃止により、他地域との一般路線によるつながりがなくなりました。
最盛期だったら、どのような路線網が築かれていたのだろうか。大分県北部にも路線があったらしいが。
◆ 終点の構図 普光寺
大牟田駅の東に位置しています。筑後三十三観音二十四番札所。九州新幹線がすぐ近くを長大トンネルで通過しているようです。
普光寺行は、割と終バスが早い(大牟田駅発18時41分)。「地元の高校生とお年寄りが利用の中心」だと、通勤の利用はほとんどないのか。
(2つ手前の米の山までは1時間に1~2本あって、20~21時台まで運行されているが)
◆ 筑前・筑後 歴史探訪
「一日半にわたる」と最後に記されているが、取材日及びプランを読むと、実は「S81」で「オープントップバス」を降りた直後の旅である事が解ります。前後計3日間を費やして、門司港から柳川まで西鉄バスを乗り継いでいる訳です。だから前回はかなり早く乗り継ぎが終わっていたのか。
「三輪トラック」って、実は私、子供の頃に現役を見た事があります。
2回出てくる400系統はダイヤを検索してみたら、1時間に2本はあって意外に多い。博多駅~甘木間だとバスは都市高速経由でも1時間15分に対して鉄道ではJR快速+甘木鉄道で最速1時間だけれど、乗り換えはいらないし、鉄道の恩恵がない区間もあって利用が多いのでしょう。一般路線車だから乗り通すと辛そうだが。
福岡県は、もちろん門司港レトロ地域に大宰府・柳川と有名な観光地はあるが、九州の他県のような、自然を背景にしたダイナミックな観光地が少ないのが惜しい(ない訳ではないが)。
遠い九州の事なので今後の西鉄バスはどうなるのか推測するのも難しいが、まず、大手私鉄で唯一、鉄道の直営という事になった福岡市中心部の路線は、今後も鉄道の直営でいくのか、あるいはいずれ福岡も分社になるのか。
高速バスは以前書いたように、<ムーンライト>開業で見せた輝きをもう一度見せて欲しいのだが、旧ツアーバス移行組や航空のLCCとの競争がきつくなりつつあって、西鉄といえども苦しいかも。当面は九州島内の強化に努めることになるか。短距離路線では、「nimoca」導入が進むでしょう。
一般路線では、これも前に書いたが、天神付近の乗場がかなり分散していてわかりづらい部分があるので、インフォメーションの強化に努めて欲しい。ただ、天神はヨソ者からすると、福岡で最初の目的地にはならない事が多いから、博多駅バスセンターなど程急いでやる必要も、ひょっとしたらないかも知れない。
九州新幹線の開業からもう3年近く経つし、福岡県内ではとりあえず大型の鉄道の新規開業はないから(地下鉄七隈線の博多延伸はあるが、開業はかなり先だろう)、高速・一般とも、地道な改善が進められる事になるでしょう。
西工車体がなくなって今後は標準車両の割合が高くなっていく事になり、5年後・10年後はどういう傾向になっていくでしょうか。特にノンステップ車の割合はどこまで上がるか。
ともあれ、西鉄には今後もバス業界のトップリーダーの役目を果たして欲しいと思います。
次号は「Lions Express」で西鉄とつながりがある西武バス。R51以来になります。
ここは一時期、西鉄以上に日デの割合が高かった事業者だが、導入終了から2年経ち、傾向はいくらか変わっているでしょうか。
当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
《今日のニュースから》
韓国・古里(コリ)原子力発電所1号機 運転停止
韓国では原発23基中6基が運転を停止し、寒さが厳しい冬の電力供給への懸念が高まっているとの事です。