№1017 神奈川の駅を全部撮る! 神奈川の鉄道の過去と現在・JR

「神奈川の鉄道を全部撮る!」シリーズスタートに先駆け、神奈川の鉄道の過去と現在について復習します。
 今回はJR各線です。

東日本旅客鉄道(JR東日本)
 1987(S62)年4月1日、旧国鉄の分割民営化で発足した、旅客営業の鉄道会社の1社。関東・甲信越・東北地方の在来線と、東北(山形・秋田)・上越・長野新幹線を運営する。1996(H8)年に支社制度を導入、神奈川県では中央本線(八王子支社)以外の路線は横浜支社が管轄している。

東海道本線 東京~熱海・品川~武蔵小杉~鶴見

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 日本の鉄道でも有数の大幹線である。
 東京と名古屋・関西を結ぶ幹線は中山道経由との比較の結果、東海道ルートでの建設が決定され、日本初の鉄道の開業から15年後の1887(M20)年には国府津まで、2年後には神戸までの全線が開通した。当時は山岳区間の御殿場経由だったが、1934(S9)年の丹那トンネル開業により熱海経由に変更されると、距離の短縮や急勾配の解消で、飛躍的な輸送力の増強が実現した。
 戦中~戦後にかけ、客貨両面で日本の大動脈として機能したが、東海道新幹線開業後は長距離輸送の使命は徐々に薄れ、長距離列車は相次いで削減されていく。2009(H21)年には最後の「ブルートレイン」、<富士・はやぶさ>が廃止になった。
 一方で通勤通学輸送の改善が断続的に行われ、1980(S55)年10月には貨物線を線増、横須賀線を分離する事で増発した。1986(S61)年11月には定員制の通勤列車<湘南ライナー>を新設した。2001(H13)年には「湘南新宿ライン」の運行を開始、新宿・池袋を経由して高崎線に直通する新たなルートが開かれた。

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 特急は伊豆方面への行楽客輸送が中心になった。<スーパービュー踊り子>251系と<踊り子>185系が運行される。季節ごとに臨時列車も多数運転され、伊豆急行からの「アルファ・リゾート」「リゾート21」の乗り入れが見られる事もある。普通列車は「湘南電車」80系から113系、211系などを経て、4ドアのE231系・E233系にほぼ統一された。日中には快速<アクティー>、夜間には通勤快速も設定されている。<湘南ライナー>には特急車両のほか、全2階建ての215系も運用されている。2015(H27)年度開業予定の東北縦貫線が、どの程度影響を与えるか注目される。

南武線 川崎~立川・尻手~浜川崎

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 南武線は1927(S2)年、南武鉄道として開業。立川で五日市鉄道・青梅鉄道と接続して、多摩川の川原で採取された砂利を川崎の工業地帯まで運搬した。その後は奥多摩の石灰石の輸送を1998(H10)年まで続けた。1944(S19)年4月、戦時買収により国有化された。戦後は沿線に大企業の進出が相次ぎ、通勤路線としても発展した。
 本線は各駅停車に加え、2011(H23)年3月改正で快速が復活した。205系と209系で運行されており、来年度にはE233系の導入が予定されている。

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 尻手~浜川崎の支線は2両編成の折返し運転を行っており、1988(S63)年3月にはJR線で初めてのワンマン運転を開始した。クモハ11+クハ16・101系を経て、現在は山手線から転用の205系改造車が運用されている。

鶴見線 鶴見~扇町・浅野~海芝浦・武蔵白石~大川

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 前身の鶴見臨港鉄道は貨物専業の鉄道として1925(T15)年に開業し、5年後の1930(H5)年10月に電化して、鶴見~扇町・海芝浦・大川の旅客営業を開始した。京浜工業地帯への足として重要視され、1943(H18)年6月、戦時買収により国有化された。
 1971(S46)年には鶴見以外の全駅を駅員無配置とした。最近は工業地帯の衰退もあり、本数の削減が相次いでいる。浜川崎~扇町と海芝浦支線は、日中は2時間に1本しか列車が無く、大川支線は日中の運行がない。1996(H8)年まで戦前製の電車も使われていたが、現在は山手線から転用した205系が運用されている。駅施設は私鉄時代の面影を色濃く残す。

横浜線 東神奈川~八王子

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 横浜線の前身、横浜鉄道は1908(M41)年9月に開業した、歴史の長い路線である。生糸の横浜までの運搬を目的としていたが、当初から国有化を前提としており、一年半後には鉄道院が借り受けて営業している。戦前は広軌化・電化・ATSと、様々な試験が繰り返された路線だった。
 東海道新幹線が開業すると、横浜線の交差地点にも新横浜駅を新設し、市内への足を確保した。輸送力増強のため複線化が推し進められ、1988(S63)年までに全線で完成した。十日市場・古淵駅はこの過程で開業している。1990(H3)年には快速電車も運行も始まっている。日中を中心に、大半の列車が、根岸線に直通する。
 国鉄時代から数少ない優良路線であり、民営化後の205系投入は京浜東北線より先になった。後に6ドア車の増結も行われている。来年にはE233系が導入される。週末には横浜~松本特急<はまかいじ>が運転される他、最近は富士急行への直通の実績もあった。

京浜東北線・根岸線 (大宮~)横浜~大船

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「京浜東北線」は正式な路線名称ではなく、東海道本線・東北本線に跨る各駅停車の運転系統である。1914(T3)年12月に運転を開始した「京浜線」を始祖とする。直後に電気関係のトラブルが発生して翌年まで運転を見合わせる事になったが、再開後は桜木町まで延伸、東京側は上野を経由し、1932(S7)年には埼玉県の大宮までの直通運転として完成した。
 根岸線は東海道線の支線化した横浜~桜木町の延伸として戦前から計画は存在したが、戦争のため大幅に遅れ、桜木町~磯子の開業は1964(S39)年5月になった。1970(S45)年3月には洋光台まで、1973(S48)年4月には大船まで開業し全通した。当初から京浜東北線と一体で運行されている。車両は73系・103系・209系を経て、現在はE233系が運用されている。横浜線からの直通列車もある。通勤線区ながら、桜木町~根岸では貨物列車(根岸の製油所からの石油輸送など)の運転が多いのも特徴。

横須賀線 大船~久里浜

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 海軍の鎮守府が置かれていた横須賀への足として、東海道本線全通2週間前の1899(M22)年6月、大船~横須賀が開業した。1925(T14)年12月に電化、1930(S5)年より電車の運転が始まった。1944(S19)年には久里浜まで延伸したが、線路は単線化された御殿場線からの転用だった。
 東京~大船は東海道本線と線路を共用していたが、輸送力増強の一環として、1980(S55)年に貨物線転用による品川~大船の線増により東海道本線と分離、品川から東京までは地下新線を経由して総武快速線との直通運転を開始した。

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 1991(H3)年より、大船~成田空港で特急〈成田エクスプレス〉の運行が始まり、横須賀線列車も一部は空港まで直通している。2001(H13)年3月には湘南新宿ラインの運行を開始、宇都宮線(東北本線)から直通運転が行われている。
 大船~久里浜は線形的に対横浜では京急線に対して不利であり、当初から久里浜口では区間運転を行っていた。現在も逗子~久里浜は日中の2/3は短編成の折返し運転である。古都鎌倉を擁する事から、シーズン中(特に6月の紫陽花の時期)は、首都圏の各地から臨時列車が多数乗り入れる。
 車両は32系・70系・113系を経て、現在はE217系を使用している。湘南新宿ラインは宇都宮線のE231系が乗り入れる。名士が多い土地柄もあるのか、東海道本線共々、古くからグリーン車を2両連結している。平日には<おはようライナー逗子>が房総特急用E257系で運転される。

相模線 茅ヶ崎~橋本

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 1921(T10)年9月、相模鉄道によって茅ヶ崎~寒川が開業した。旅客線は順次延伸を繰り返して1931(S6)年には全通した。1943(S18)年4月に神中鉄道を合併したが、翌年には茅ヶ崎~橋本が戦時買収で国有化、相模鉄道の名は旧神中鉄道線区間にのみ残る事になった。
 非電化路線ながら比較的本数が多い路線だったが電化は遅く、民営化時点ではまだオリジナル色の30系DCによる運転で、電化は1991(H3)年3月になった。205系(500番台)が直接導入され、同時に朝夕は横浜線八王子までの直通運転を開始している。時折相鉄の新車の甲種車両輸送の貨物列車が運行される。

中央本線 東京~塩尻
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 国防上の観点から東海道本線とは別に、山沿いの幹線の建設も必要され、1901(M34)年8月に高尾~上野原が開業、東側は1906(M39)年に塩尻まで到達。2年後には名古屋からの路線と接続し、全通した。
 神奈川県内は上野原開業と同時に与瀬(相模湖)駅が、1943(S18)年4月に藤野駅が開業した。115系の普通列車のほか、東京からE233系快速の一部が直通する。特急<スーパーあずさ><あずさ><かいじ>等は全て両駅を通過、神奈川県との縁はほとんどない。

東海旅客鉄道(JR東海)
 1987(S62)年4月1日、旧国鉄の分割民営化で発足した、旅客営業の鉄道会社の1社。東海地方の在来線と東海道新幹線を運営している。リニア中央新幹線の建設計画が具体化している。

東海道新幹線 東京~新大阪

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 世界初の高速鉄道として、東京オリンピック開催を間近に控えた1964(S39)年10月1日に開業。全線立体の標準軌の新線、CTC管理、車内信号など、在来の鉄道とは根本的に異なるシステムを保有し、最高速度210㎞/運転を実現した新幹線は、世界中の鉄道に多大なインパクトを与える事になった。
 開業に先立ち、綾瀬~鴨宮にモデル線区を建設し、各種試験を行った。鴨宮の保線基地には「新幹線発祥の碑」が置かれている。
 神奈川県には新横浜と小田原の2駅が設置された。新横浜は横浜線・菊名~小机の交差地点に設けられ、横浜線側にも駅が設置されて市内への便を図っている。両駅とも当初は<こだま>のみの停車だったが、新横浜は1976(S51)年改正で初めて<ひかり>が停車、その後駅付近の開発や市営地下鉄の開通もあり、ダイヤ改正の度に停車回数が増えていく事になる。1980(S55)年には小田原も<ひかり>一部停車が実現した。
 国鉄時代は長らく続いた0系から、末期には100系へと移行したが、民営化以降はスピードアップに重点が注がれ、1992(H4)年には最高速度270㎞/hの300系<のぞみ>が運行を開始した。当時は早朝・深夜1往復ずつに留まり、早朝の下りは新横浜停車の後、名古屋・京都をも通過して新大阪までノンストップ運転が話題を呼んだ。その後は<のぞみ>中心に増発が重ねられ、500系(JR西日本)・700系・N700系と続いて、今年にはN700A系が投入され、東京~新大阪は最速2時間33分にまで短縮された。航空対策もあり、2008(H20)年3月改正において、新横浜駅は全列車停車を達成した。
 来年、ついに開業50周年を迎える。

御殿場線 国府津~沼津

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 御殿場線がかつての東海道本線の一部である事は有名である。1889(M22)年7月の全通時点では、東海道本線は御殿場経由だった。山間部を走り、急勾配が連続して補機を必要とするなど不利な面もあったが、当時は長大トンネルを建築する技術がまだ不足していた事情があった。国府津には機関区が設けられ、C53形などの補機が待機して、特急列車などの支援に当たっていた。
 1934(S9)年の丹那トンネル開業で東海道本線が熱海経由にルートを変更すると、御殿場経由のルートは一気にローカル線に凋落、1943(S18)年には単線化までされ、レールは横須賀線延伸工事などに転用された。複線時の遺構は今でも各所で見られる。
 戦後はD52牽引の客車列車やDC列車が運行され、1968(S43)年の電化後は73系・115系が使用された。1955(S30)年より小田急のDCを使用した直通の特別準急<銀嶺><芙蓉>の運行が始まった。
 民営化では全線がJR東海の運営となり、JR東海の在来線では唯一、関東地方を走る路線となった。民営化後は313系を導入、同時に一部はワンマン運転になった。小田急直通は電化後はSEに転換されて連絡急行<あさぎり>となり、1991(H3)年3月にはJR・小田急相互直通による新宿~沼津特急に発展した。2012(H24)年には再び小田急MSEによる新宿~御殿場単独運行に戻り、現在に至る。
 神奈川県区間では「TOICA」を含め、交通系ICカードは一切使えないので注意。

 次回は私鉄・公営です。

 当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。

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《今日見た・聞いた・思った事》
 2020年夏のオリンピック・パラリンピック開催が東京に決まりました。
 正直あまり期待していなくて、マドリードかなあとか考えていたのだが、一番最初に落ちたのは意外でした。
(2016年大会の時は、リオとの決選投票にまで持ち込んでいた)
 この事は、特に首都圏の交通にはどのような影響を与えるでしょうか。
 ビジュアルの面では、オリンピック記念スペシャルカラーは当然考えられるでしょう。
 特にANAは招致活動に積極的に関わっていたから、スペシャルカラー機の就航が十分期待できるが、7年あるので、ラッピングじゃなく、一から機体を塗り替える位の意気込みは欲しいと思います。
 もちろん陸上の鉄道やバスも期待です。
 一方ハード面では、五輪だからというのではなく、外国人の目からは日本の交通システムはやや異質に見える部分が多い(良い悪いではなく)ので、解りやすい情報提供システムの構築が求められます。
 特に誘導サインや券売機などは、事業者の垣根を越えて統一的なシステムが必要になるのではないでしょうか。今の内から話し合いが必要だと思います。
 この事は神奈川の鉄道にはどのような影響を与えていくのか(神奈川県でも横浜国際総合競技場(日産スタジアム)でサッカーが行われる予定)、そんなことも少しは頭の中に入れつつ、「全部撮る!」シリーズを展開していきたいと思います。

《今日のニュースから》
特別養子縁組支援の協議会発足 初会合で活動開始