前々回は名鉄特急「ミュースカイ」、前回は中部国際空港駅の時刻表の変遷を、開業時から簡単ながら振り返って見ました。
今回は今から26年前、「セントレア」開港から18年前に発売された名鉄の時刻表から、当時の名鉄の電車・バスのを研究してみようと思います。
手持ちの名鉄時刻表で一番古いのは、1987(S62)年2月12日改正の第4号です。
B5版で506ページ、消費税導入前で600円。
1992(H4)の新CI「メイテツウィング」マークが採用される前で、赤が基調で若干地味目な表紙でした。
表紙を飾る5700系は前年デビューしたばかりの急行用車両で、家族連れを意識した幅広シートを運転台直後に配置するなど、前面展望に配慮したクロスシート車です。
◆カラーページ
カラーグラビアのトップには「パノラマDX」。
画像は増結後の3連になっているが、デビュー当時は2連。
設備・車内サービスとして「ワイドな前面展望のパノラマ席・2人用で回転可能なロマンス席・グループ用のサロン席」「FM・AMラジオ」「冷蔵庫・おしぼり温蔵庫」「プラズマ式速度表示器」「おしぼりサービス」「車内販売」「車内電話」と歌われています。
今の目では時代遅れにも映るサービスもあるが、名鉄としては初の本格的な座席指定特急専用車でもあり、同車に対する名鉄の意気込みも伺えます。
「広域案内図」に続いて「名鉄電車路線図」があります。
名鉄はこの四半世紀の間に路線が相当数縮小、今現在の路線網からでは当時の運行は思い浮かべない所もあります。
当時の名鉄路線網を作成してみたので、そちらを御覧頂いてから、四半世紀の変化を整理してみます。
「単線・複線」「1500V・600V・非電化」「鉄道・軌道」も分けています。
1987(S62)年当時は鉄道・軌道・モノレール合わせて541.3㎞の路線網があって、私鉄では近鉄に続いて2位でした。
現在は合計442.6㎞なので100㎞、20%近くも削減され、東武にも抜かれて3位になっています。
新線・廃線以外にも駅の変遷が目まぐるしく、特に廃止になった駅が多くあります。
南桜井(西尾線)・美浜緑苑(知多新線)・印場(瀬戸線)は開業前。
一方で東笠松(名古屋本線)・鎌谷(西尾線)・三河萩原(西尾線)・椋岡(河和線)・布土(河和線)・弥富口(尾西線)・学校前(広見線)が廃止になりました。
(他に谷汲線の結城が、廃線より前に単独で廃止)
金山橋は移転して金山となり、JR・市営地下鉄と接続する総合駅になりました。
平田橋も移転して上小田井となり、地下鉄鶴舞線を受け入れる事になります。
ナゴヤ球場前は現山王、新名古屋は現名鉄名古屋、新一宮は現名鉄一宮、碧海堀内は現堀内公園、碧海桜井は現桜井、南成岩は現青山、徳重は現徳重・名古屋芸大前、各務原飛行場は現各務原市役所前、岐阜大学前は現市民公園前、大森は現大森・金城学院前。
他の鉄道は、ゆとりーとライン・リニモ・あおなみ線は開業前。
樽見鉄道・長良川鉄道は転換済みだったが、愛知環状鉄道は開業前、岡崎~新豊田間は国鉄岡多線として営業。
地下鉄は、名城線は大曽根~新瑞橋・名古屋港間の運行で、鶴舞線は庄内緑地公園まで。桜通線・上飯田線は開業前。
その後鉄道・バス沿線の行楽地が「沿線のまつり」「ハイキングコース一覧表」を含めて24ページもあって、観光輸送にかなり力を入れていた事が伺えます。
(現在の名鉄時刻表には、観光地のグラビアはない)
◆名鉄電車時刻表
平日は黄色、休日はピンク色の用紙で、上り→下りの順の掲載でした。
(当時の土曜日は原則平日ダイヤ)
種別は特急(全車指定席)・高速(名古屋本線のみ)・急行・準急・普通がありました。
全体を俯瞰すると、30分サイクルを基本とするのは昔も今も変わらない。
特急・急行系は今より停車駅が少なめなのと、初電が遅くて終電が早いなあと思わされます。
特に幹線の初電・終電は急行・準急という区間が多く(関東の者には非常に物珍しく思えた)、普通電車のみの停車駅だと初電が5時台後半~6時台半ば、終電は22時台後半~23時台前半位になりました。
24時を過ぎて運行される列車は、名鉄全体で僅か4本。
新岐阜22:12(犬山経由) → 24:04東岡崎 急行2334(休日は2392)列車
豊橋22:23 → 24:03新岐阜 急行2313列車
栄生22:56 → 24:02碧南 普通2324(休日は2320)列車
常滑22:45(休日は内海22:20) → 24:03新鵜沼 急行2375E(休日は2375A)列車
※種別は終着時点
名鉄ダイヤの特徴の「特別停車」(基本的な停車駅以外の停車)は今現在も多いが、基本的に2パターンがあげられます。
1.一定の時間帯に全列車、または2本に1本などのパターン的な停車(高速の鳴海など)
2.通勤・通学の便宜を図るための、特定の列車のみの停車(藤川・新日鉄前など)
路線の形態(特に新名古屋が中間駅である事)から生じる複雑な運行形態は、特に平日の朝方で顕著です。
車両運用の都合もあるでしょう。本線系統は基本的に、「○○検車区所属」みたいな事は決まっていないし。
全部はチェックしきれなかったが、多少ユニークな形態としては、
玉ノ井7:05〔普通〕 → 津島(弥富発と連結)8:00 → 須ヶ口8:24〔急行〕 → 新名古屋8:37〔準急 ナゴヤ球場前停車〕 → 9:04太田川 3846~846F列車
三河平坂6:25〔普通〕 → 豊明7:36〔準急〕 → 神宮前8:05〔普通〕 → (犬山経由) → 9:40新岐阜 893列車
が見つかりました。
参考資料として、新名古屋・栄町駅からの時刻表を掲げ、各方面ごとに当時のダイヤを分析してみます。
とても全部は書ききれませんが…。
名古屋本線東部方面
豊橋方面は特急1:高速1:急行1:豊川稲荷行急行1が30分サイクルで、基本線は今と違わない。
これに西尾線直通の特急と急行が加わり、普通電車は豊明まで毎時4本、その先伊奈まで2本の運転。
当時は豊橋発着の普通電車も少数ありました。
名古屋本線全線通しの普通電車はないが、新岐阜発伊奈行の普通電車が平日朝方に2本あり、どちらも3時間以上かかっています。
平日6時05分発豊橋行特急は、<北アルプス>運用前のDC8500形。
他の路線で蒲郡線は、普通電車は大半が新安城まで、日中はさらに毎時1本が急行に変わって名古屋方面(~佐屋)へ直通。
平日朝方は特急に加えて上り1本だけ急行もあり、休日は特急も1時間間隔で走っていました。
後に廃線となる三河線・吉良吉田~碧南間は当時はまだ電車運転、大半が知立、さらに一部が猿投まで直通していました。
常滑線
河和または内海行の特急1:河和または内海行の急行1:常滑行急行1が30分サイクル、普通電車は知多半田行と常滑行が交互で、太田川まで毎時4本。
プラス「パノラマDX」が平日2本・土曜日3本・休日4本。
「特別停車」は、太田川までは名古屋港に面した工業地帯への通勤客の便宜を図ったものと言え、上下とも平日朝方のみ。
一方で7時54分発内海行急行は、富貴までは停車駅が特急と同じ速達タイプでした。
ここには記さなかったが、常滑競艇観客輸送の不定期急行が下り2本(新名古屋始発10時24分・10時54分)、上り2本(常滑15時58分・16時28分発新名古屋行)設定されています。
(金山橋・神宮前・太田川・尾張横須賀・大野町のみ停車)
名古屋本線西部方面
新岐阜行が特急1:高速1:急行2の30分サイクル。
これに津島線直通の急行毎時1本と準急毎時2本が加わり、普通電車は新岐阜行が30分間隔。
特に二ツ杁・新川橋は新名古屋から5㎞も離れていないのに、30分に1本しか停車がありません。
(当時の準急は西枇杷島に停車し、二ツ杁は通過)
伊奈→新岐阜の普通電車も平日朝方に1本あり、951列車は伊奈6:40→(新名古屋9:06)→10:16新岐阜と3時間36分もかかって、表定速度26.3㎞/h。
尾西線は、津島方面⇔玉ノ井間直通運転が少数あり。
竹鼻・羽島線は急行と普通が交互に30分間隔で運転で、羽島市役所前⇔大須間は大半が折返し運転。
犬山線
新鵜沼行特急1:犬山経由新岐阜行急行1:広見線直通急行1が30分サイクル、普通電車は岩倉まで毎時4本、その先犬山まで2本。
プラス「パノラマDX」が平日2本、土曜日3本、休日は6本も設定がありました。
さらに<北アルプス>があり、当時は富山まで運行されていました。
休日は9~10時台に特急が集中、豊橋に蒲郡、ここでは記さなかったが不定期で碧南・豊田市からの直通も設定されています。
新可児直通も2本あり、観光輸送にかなり力が入っていた事が伺えます。
(一方で普通電車は30分、間が空いてしまう)
広見線は、御嵩発着も日中はレールバスの折返し運転、学校前の他、顔戸・御嵩口も2本に1本は通過でした。
小牧線は上飯田での他鉄道との接続はないものの(地下鉄上飯田線開業は2003(H15)年)、朝方~日中には上飯田~小牧間の折返し運転が設定されていました。
瀬戸線(栄町駅)
瀬戸線は平日朝晩が準急:喜多山行普通(上り一部は三郷始発)1:1、他の時間帯は急行:普通が1:2。
この他「600V」線区は、揖斐線は、日中は市内線直通急行:忠節~美濃北方間普通が1:1。
黒野から先は本揖斐・谷汲行とも60分間隔でした。
結城駅は朝方上り、夕方下りとも3本ずつのみ停車。
美濃町線は新岐阜~新関間15分間隔、徹明町~日野橋間30分間隔で、両者は競輪場前~日野橋間が続行運転でした。
(乗り換えは野一色が指定された)
岐阜市内線は全列車の時刻は掲載されていなかったが、長良北町方面の本線は、半数は伊奈波通で折り返していたようです。
豊橋鉄道は新豊橋駅の時刻だけ掲載されていて、三河田原行と大清水行がそれぞれ30分間隔で交互に出発していました。
本文の欄外には各種広告の他、「記念きっぷアラカルト」として、1974(S49)年以降の記念乗車券が紹介されています。
№1は「創業80周年名鉄車両シリーズ記念乗車券№1~3」と「知多新線富貴~上野間間開通記念乗車券」。
№9は「高木守道選手(現監督)引退記念きっぷ」でした。
広告には、今はなき名古屋遊覧バスがありました。市内の他、明治村や長良川に行くコースの設定もあります。
中間のカラー広告には基幹バスと、岐阜バスの広告があります。
岐阜バスの広告には名古屋空港への空港バス(「オバQ」)の写真がありました。
側面に「ダ・ビンチ」のANA、「旧鶴丸」のJAL、当時のTDAのマークが描かれています。
時刻は書かれていなかったが、新岐阜⇔空港(今の小牧)間14往復で、ノンストップ60分という事でした。
名鉄運輸「名鉄宅配便」の広告には市毛良枝が起用されています。
◆名鉄バス時刻表
ほとんど様変わりしてしまいました。
高速バスは名古屋⇔飯田・駒ヶ根間の中央道特急バスと、名古屋⇔京都間の日本急行バスのみ。名神道はかなりコマゴマバスストップがありました。
一方で名古屋⇔金沢間の一般道経由の路線がシーズン中1日1往復あります。
名鉄自体の定期観光バスも、三河湾や犬山でいくつか運行されていました。
空港バスは名鉄バスセンター⇔空港間15分間隔、西春⇔空港間20分間隔、小牧⇔空港間1~2時間間隔と、路線が非常に少なかった。
一般路線も後に廃線になった路線が多いし、知多バスや岐阜バスに譲渡された路線もあります。
◆営業案内
初乗運賃大人110円(現160円)、豊橋~新名古屋間大人840円(現1,080円)、新岐阜~新名古屋間大人430円(現540円)。
当時の特急座席指定券はDX特急500円、他が300円。
(現在の特別車両券「ミューチケット」は350円)
他社の時刻表は新幹線と、名古屋発着の近鉄特急のみ記載。
新幹線は名古屋・岐阜羽島の始発・最終との接続表も掲載されていました。
グループ会社は、現存はしていても、グループからは離れた会社がかなりあります。特に観光バスが少なくなりました。
以上、本当に簡単に26年前の名鉄時刻表を振り返ってみました。
名鉄はこの後、民営化したJR東海道本線に対抗し、特急と高速を統合して一部指定席特急を設定、合わせて一度は種別を統合して、本線は特急・急行・普通の3本建てとしました。
一度は新一宮始発の快速急行(新名古屋までノンストップ)や、知立さえ通過する特急の設定もあったが、結局再度沿線重視のダイヤに転換、停車駅増や普通列車の増発(急行からの格下げもあった)も行われ、さらに支線直通の見直しも行いつつ、セントレア開港を迎える事になります。
四半世紀の名鉄ダイヤの変遷からは、全体的な輸送量が多くない事を前提に、JRやマイカーとの対抗を意識して速達性を維持しつつ、小規模な駅の乗車機会をいかに確保するか、両者のバランスを取る事に苦心しているかが伺えるように思いました。
当ブログでは直接のコメントは受け付けないので、何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
当ブログ上からでは発表できない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。
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《今日見た・聞いた・思った事》
11月の沖縄遠征に向け、航空便の手配をしています。
しかし帰りのANA便(B747-400D)は「旅割60」を確保できたものの … スミマセン、ANAカード会員なので、先行予約・購入を利用させて頂きました … 、往路で予定している、成田からのジェットスター・ジャパン(JST)は、Webサイトでエラーが解消できず、今の所予約、購入ができていません。
この後再度トライしてみるが、一般の報道でLCCのWebサイト予約画面が問題になっているが、JSTに関して、ここまでの所で私自身が「これはどうかなー」と感じたのは、次の3点。
1.国内線なのに、国際線(ジェットスター、ジェットスター・アジア等)と共通の予約画面になっている事。
内際分離のJALやANAの画面に馴れた者には、外国の就航地が日本と同列に並んでいたり、「パスポートと同じスペル」などという文面などでかなり面食らう。
2.受託手荷物は有料になるが、便の予約段階(「フライト・運賃タイプの選択」画面)では含まれていなかった料金が、次の画面でいきなり追加されていて、あれ、料金が違った?と戸惑わせる。
3.「カンタス・フリークエントフライヤーポイント」又は「ジェットスター・フライトバウチャー」の選択が必須。
《今日のニュースから》
マドリード市 五輪招致で「地下鉄マラソン」