№772 私鉄の車両シリーズ106 東京急行電鉄8000系

 来年(2013(H25)年)3月16日(土)の東京メトロ副都心線との相互直通運転開始が発表になった、東急東横線。
 かなり久しぶりになりますが、今回の私鉄の車両シリーズは、その東横線のかつての主力通勤車だった8000系です。

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 8000系は、1969(S44)年より製作された通勤車輛で、当初は新玉川線(現在の田園都市線の一部)での運用を想定、数多くの新機軸が取り入れて、その後の東急の通勤車の基礎となった。

 車体はオールステンレス製で、初めて20m4ドアと大型化し、前面は切妻として、通勤車両として実用的なスタイルになった。
 側面には7200系同様の1段下降窓を採用し、初めて種別表示器を設けている。
 制御装置は世界初となる界磁チョッパ制御を採用、回生ブレーキを併用している。補助電源装置としてSIVを採用している。
 ブレーキは電気指令式とし、運転台は力行とブレーキを統合したT字型ワンハンドルを初めて採用した。


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 車内は7200系をベースとしている。
 シートは、デビュー当時はエンジ色で、ドア間は8人掛けとしていた。
 座席の寸法は2次車で見直しが行われて座り心地の向上が図られた。
 また2両に1箇所の割合で両開き式の貫通扉が設けられている。
 デビュー当時は貫通路上にスライド式の電動広告が設けられていた。
 座席定員は製造年次により、何度か見直しが行われている。


 1~4次は3M2Tの5連で製作された。
 2Mユニット方式だが、8100形は単独制御も可能。
 2次車より一部が冷房装備で製作されたが、カバーのみで冷房本体を搭載していない非冷房車もあった。
 5次車は大井町線向けに4連で製作され、離線対策により、8100形はパンタグラフが2基設けられ、主抵抗器が2組多いなど仕様が異なっていた。


 1978(S53)年には軽量構造の試作車8400形(初代)2両が製造され(後に8200形に編入)、後の8090系につながっている。
 1981(S56)年の8100形より軽量構造になり、車体断面が変わっている。
 東横線増結用として1980(S55)T車の8300形、1982(S57)年には1M車8400形(2代目)が製作されたが、1984(S59)年に8400形→8100形、8300形→8200形に改造され、MMユニットを組む形となっている。
 最終的に187両が全て東急車輛で製造され、東横線や田園都市線→大井町線を中心に活躍し、東横線の急行や田園都市線の快速、東横線では後に特急でも運用された。


 非冷房車は1976(S51)~1979(S54)年にかけて冷房化された。
 1992(H4)年より更新工事が始まり、シートの形状や定員の変更、中仕切りやスタンションポールの設置、化粧板の張替えや車椅子スペースの設置が行われた。
 車両によって工事の内容に違いがあり、更新が行われないまま終わった車両もある。
 更新が行われた編成は正面貫通扉に黒帯を配し、赤帯を編成全体にまわしていた。


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 2002(H14)年より廃車が始まり、2010(H14)年に全廃した。
 8040Fは引退直前に装飾を全てはずし、往年の姿を蘇らせて最後を飾った。
 伊豆急行に44両、インドネシアに24両が譲渡されている。


【編成】
←渋谷・大井町     桜木町・二子玉川
Tc 8000 - *M 8400 - M2 8200 - *M1 8100 - Tc 8000 (大井町線)
Tc 8000 - M2 8200 - *M1 8100 - M2 8200 - *M1 8100 - M2 8200 - *M1 8100 - Tc 8000 (東横線・6M2T化後)
* パンタグラフ

 今回の記事は
「私鉄の車両4 東京急行電鉄」(保育社) ※現在はネコ・パブリッシングによって復刻
「鉄道ピクトリアル1994年12月臨時増刊号 【特集】東京急行電鉄」(鉄道図書刊行会)
「鉄道ピクトリアル2004年7月臨時増刊号 【特集】東京急行電鉄」(鉄道図書刊行会)
「東急ステンレスカーのあゆみ」(萩原俊夫/JTBキャンブックス)
を参考にさせて頂きました。

 次回のこのシリーズは、京浜急行電鉄700形です。

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《今日見た・聞いた・思った事》
 近鉄が、系列の旅行会社「近畿日本ツーリスト」と「クラブツーリズム」を経営統合する事になりそうです。
(今日現在では近鉄からの公式リリースはなし)
 新会社はJTBに次ぐ、国内2位となるそうです。
 近畿日本ツーリストはかつて日本旅行との合併を模索した事があったと思いますが、あの時は実現にはいたりませんでした。
 最近は旅行においては、交通も宿泊もインターネットで直接予約する事が多く、特にLCCは代理店を通さずに手数料を抑制する事で低運賃を実現しているので、旅行代理店の地位は、少しづつではあっても低下してきているかも知れません。
 連続して起きたツアーバス事故では、逆に旅行会社の責任も追及されています。
 したがって今後の旅行代理店業界は大小に関わらず、量もさることながら、質的な部分(特に人的サービス・責任感)の充実が求められるでしょう。
「クラブツーリズム」のマーク(5人の人型シルエット)を描いた貸切バスは全国各地で見られ、近鉄電車でも専用の15400系「かぎろひ」がデビューしましたが、この統合が実現したら、これらのバス・電車にも影響を与えるでしょうか。

 今や旅客機(B787)にもありますからね。
《今日のニュースから》
TOTO「ウォシュレット」 日本機械学会が「機械遺産」に認定