№712 駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷 4.京王井の頭線渋谷駅
私鉄のダイヤを、特定の駅の時刻表から振り返ってみるシリーズの4回目です。
前回の「私鉄の車両シリーズ」で京王井の頭線1000系を取り上げましたので、今回は井の頭線のターミナル、渋谷駅の時刻を振り返って見ます。
といっても井の頭線は距離が短い上に相互直通もなく、種別も急行と各駅停車しかなく、退避駅も永福町のみという極めてシンプルな路線です。
急行の途中停車駅も長らく下北沢・明大前・永福町・久我山で固定されていて、つまり見た目のダイヤの変化が少ない路線といえます。
もちろん特定鉄道整備事業により、この四半世紀で井の頭線全体の輸送力は増強されましたが、3000系→1000系への置き換えに見られるように車両・施設面での拡充によって対処が行われ、渋谷駅自体もまた、再開発もからんで大きく姿を変える事となりました。
そんな渋谷駅の時刻表を、ちょっと難しかったのですが、過去と現在、合わせて4枚御覧頂こうと思います。
今回は土曜・休日の時刻表もご覧頂きます。
井の頭線では長い間、土曜日専用のダイヤが作られていました。
手持ちの時刻表で一番古いのは1986(S61)年9月6日現在のものです。
なんと1971(S46)年12月から変わらず使用されていたという事です。
当時は土曜日は平日と同じでした。
平日・休日共に急行:各駅停車の比率は1:2。
急行の直前に出発する各駅停車が、永福町で待ち合わせを行うパターン。
特に平日は急行の本数が少ないし、運転時間も10時~20時と短くなっています。
朝ラッシュ時に急行の設定がないのは今も変わりませんが。
日中は休日の方が多くなるのは、渋谷・吉祥寺を抱える井の頭線らしいところでしょうか。
これも、今と変わらないところです。
この直後の1987(S62)年の改正で、土曜日は独立したダイヤが採用され、これは昨年まで続く事になります。
平日と土曜日は日中のパターンが変わり、急行と吉祥寺行各駅停車が共に10分間隔の1:1となり、一部時間帯に富士見ヶ丘折返しの各駅停車が加わるパターンになっています。
休日は特に大きなパターンの変化はありません。
いずれも急行の運転時間帯が22時台まで拡大されています。
その1987(S62)年改正時点の時刻表が手持ちにありませんので、ここでは1992(H4)年5月28日改正の時刻で御覧頂きます。
平日は吉祥寺行の最終電車の時刻が繰り下げられています。
これ以降は1996(H8)年にラッシュ時ピークの直後に増発が行われた程度で、ダイヤ面ではそれ程目立った変化はありません。
一方、特定鉄道整備事業により井の頭線は車両の大型化で輸送力の増強を図る事になり、渋谷駅でも「マークシティ」建設も絡んで大規模な改良工事が進められる事になります。
全駅のホーム延伸工事も完成し、1996(H8)年には20m4ドアの1000系がデビューしました。
1997年12月24日改正の時刻表です。
渋谷駅の改良工事が完成し、「渋谷マークシティ」(2000(H12)年開業)ビルの2Fに発着する事となりました。
駅の位置は若干吉祥寺寄りに移動し、井の頭線は0.1㎞の短縮になりました。
平日・土曜とも急行:各駅停車の割合が休日と同じ1:2となり、急行は12分間隔、各駅停車は2本に1本は吉祥寺まで逃げ切り、というダイヤになりました。
急行は最高速度引き上げにより、渋谷~吉祥寺間は1分短縮して最速16分になっています。
あくまで個人的な感想ですが、渋谷~吉祥寺間の通しのお客さんがかなりいる井の頭線で、終点まで先着する列車に早い急行と遅い各駅停車が混在するのはわかりにくいかなあというのと、京王本線及び小田急線が10分サイクルでダイヤが組まれているので、井の頭線も前のダイヤの方が乗換えがパターン化するので良かったのではないかなあと思ったものです。
井の頭線の場合は急行通過駅もそれなりに乗降が多いので、各駅停車の削減が出来なかったのだろうと思っていますが。
ともあれこのパターンが以降14年の長きに渡って定着します。
この後の改正では急行の運転時間帯の拡大や、夜間の運転間隔の短縮等が行われます。
それと、吉祥寺駅構内にある橋梁の工事のため、一時期ダイヤの修正が行われていました。
2011(H23)年3月11日、東日本大震災が発生。
首都圏でも直接的な影響が多々ありましたが、さらに追い討ちをかけて電力不足の問題が発生。
鉄道各線は「節電ダイヤ」施行に追い込まれる事になります。
井の頭線においては、震災の直後は日中の急行を運休(関連し、永福町行急行の設定もあった)していましたが、7月1日より、土曜ダイヤを休日と一本化した上、平日・土休日とも急行・各駅停車を1:1の10分サイクルで運行する事になります。
ちなみにこれは、日中においては毎時15→12本の運転となり、走行キロベースにして20%の削減になります。
「節電ダイヤ」が終了した、2011(H23)年9月23日改正のダイヤ。
(京王本線は12日よりほぼ通常ダイヤに戻ったが、井の頭線は22日まで継続)
特に土休日が大きく変わり、一気に急行・各駅停車が共に7~8分間隔と増発されています。
震災前のダイヤと比べると毎時15→16本になるのですが、停車駅が少ない(=電力消費が少ないだろう)急行の割合が多くなったので、消費電力はほぼイーブンになるのでしょう。
なお急行の運転開始は1時間遅くなりました。
井の頭線渋谷駅の時刻表から、大きく変わった所をピックアップして取り上げてみました。
当分は今のダイヤが継続して使われる事になるでしょう。
次に変化が訪れるとしたら、
1.電力事情の改善(いつになるのか見通しがまるで立たないが…)
特に平日ダイヤはどうするのか。現状のままか、震災前の1:2の12分サイクルに戻すのか、逆に土休日同様に1:1の7~8分間隔に詰めるのか。
2.小田急線下北沢駅の地下複々線化の工事の進捗及び完成
乗客の流れに変化が生まれるか。特に急行系との乗り換えは相当面倒くさくなりそうで。
という所からになると思われます。
ともあれ1000系への置き換えが完了して、一方で線増や他線への相互直通の計画は全くないし、井の頭線は電力事情をにらみながら、しばらくは地道ですが駅施設を中心とした質的な改善を進める事になるだろうと思われます。
次回はその改善進む駅施設、という事で、井の頭線唯一の退避駅、永福町駅を御覧頂きたいと思います。
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