№526で書きました通り、当ブログではこれからコミック・アニメ・特撮ヒーロー等にも範囲を広げ、特に劇中で出てくる乗り物に注目してみようと思います。
まあ、特にコミックの場合は、あまりメジャーなタイトルはほとんど出ないかなとは思いますが。
今回は「ふたつのスピカ」(原作:柳沼行)です。
ベースとなる読み切りからカウントすると9年に渡る長期連載となり、その過程でアニメや実写ドラマも制作・放映されました。
私は8年前のアニメで初めてこの作品を知り、それから原作単行本全16巻を揃えたと言う経緯があります。
一応「SFもの」というくくりになるのでしょうが、ありきたりのSFとは大分赴きが違う、少し不思議な作品でした。
あらすじ:作品概略
宇宙飛行士を夢見る少女・鴨川アスミ。産まれてまもなく遭遇した、国産有人ロケット第1号「獅子号」の墜落事故で母親を5年間の闘病生活の末に亡くす。その葬儀の日、アスミは神社で幽霊の「ライオンさん」(実は獅子号の乗組員の若者)と出会った事で、宇宙への憧れを強く抱く事になる。幾度の出会いと別れを繰り返しながら成長したアスミは、国立東京宇宙学校の「宇宙飛行士養成コース」への入学を志望し、厳しい試験に合格。保育園の頃からの幼馴染の府中野新之介や、試験を通じて出会った近江圭、宇喜多万里香(マリカ)、鈴木秋と共に、宇宙飛行士になるための厳しい講義や訓練に明け暮れる日々を過ごす事になる。
原作は「月刊コミック・フラッパー」誌(メディア・ファクトリー)2000年7月号~2009年9月号に於いて連載。まず、幼少時代~中学生の間のアスミのエピソードを、読み切り形式で5話掲載、それを踏まえて2001年10月号より、本編となる宇宙学校入試~卒業までを連載で描いている。単行本全16巻。
また、2003年にはアニメ版、2009年には実写ドラマ版がいずれもNHKによって製作・放映されている。
アニメ版については後述します。
実写ドラマ版は未見(桜庭ななみが主演だった)。
この作品の舞台の一つ、アスミの故郷の「唯ヶ浜」ですが、多くの方々が神奈川県の鎌倉にあると思っているようです。
しかし、原作ではそんな事はどこにも書いていないのです。
「唯ヶ浜」=江ノ電の「由比ガ浜」を連想されると思いますが、原作者によれば単なる偶然との事。
(ただし、後述するアニメ版では1箇所だけ、唯ヶ浜を神奈川県鎌倉市にあるとする描写があります)
なのになぜ多くの読者が舞台を鎌倉と連想付けるかと言うと、作中のスケッチのかなりの部分が鎌倉市内で描かれていると思われる事にあると思います。
ここから本題ですが、その中に間違いなく江ノ電を描いたものがあるのです。
先日、その箇所を実際に訪れて写真を撮ってきました(プチ「聖地巡礼」?)ので、ご覧頂きましょう。
稲村ヶ崎駅の構内踏切。
初期の読み切り短編の第3話「カムパネルラの森」(単行本第2巻)の扉絵の場所。
下の方に見える、駅舎とホームをつなぐ踏切の歩道に、小学1年生のアスミがチョコンと立っているわけです。
もう1箇所。
こちらは長谷駅の構内踏切。
単行本の最終16巻の扉絵は、ここを描いています。
左側、階段を降りた所に、宇宙学校学生のアスミが立っていました。
車道の踏切の向こうに見える食堂は、作品の宣伝になっておりました。
(著作権保護のため、原作の絵はお見せできません。興味があれば自分で単行本を買って確認してください)
それから町の玄関口である「唯ヶ浜」駅は、駅舎は極楽寺駅、ホームは鎌倉高校前駅の折衷と思われます。
駅員が常駐していて、連載第1話の「MISSION 01」では、セクハラを働いたライオンさんを追い掛け回すアスミを見て「一人で何騒いでいるんだ?」と不思議がっています。
(ライオンさんは幽霊なので、他の人には見えないから)
この鉄道そのものは、江ノ電とは大違いの完全なローカル線のよう。
車内もクロスシートだし。
乗客も普段から少なさそうで、「MISSION 75」(第14巻)では乗り合わせた府中野が「大丈夫なのか?唯ヶ浜鉄道」と余計な心配をしています。
(この直後に列車が土砂崩れに巻き込まれてしまう)
この作品では、「ロケット形の秘密基地」に通じる「廃線跡」が、登場人物の出生にも関わる重要なエピソードの舞台として何度も現れます。
相当な長距離の路線のようですが、旅客線の廃線ではないでしょう。
貨物線か、どこかの工場の専用線だったのでは?
第9巻の書き下ろし読み切り「ジョバンニの森」では、手漕ぎ!のトロッコが出てきます。
この他の乗り物の描写では、「MISSION 55」(第11巻)で、学校帰りに乗り合わせた通勤電車(E231系っぽいが)の運転室をアスミと圭が覗き込むと、運転士がいない無人運転になっていた、というのもあります。
(圭のセリフでは、バスにも無人運転があるらしい)
でも、作品世界の2020年代後半としても、「ゆりかもめ」的な、最初から無人運転を前提とした新交通システムはともかく、在来の通勤電車で(ワンマン化は解からないが)無人運転になったりするかなあ?
さすがにそうはならないだろうし、なって欲しくはないなあと思います。
…という感じで、乗り物を中心にして作品を眺めてみました。
原作は絵柄もはっきり言って相当地味だし、ストーリーは多少スローペースな所もあります。
しかし、「SF」とはいってもオタク的な考証は必要とせず、難しい事は何も描かれていません。
丹念に読んでいけば、最近ではあまり描かれる事がなくなった、アスミを中心とした少年少女達のシンプルな青春ドラマを堪能できるでしょう。
アニメ版について
2003年11月1日~2004年3月27日の間、全20話がNHKの旧BS2で放映された。その後教育テレビ(現Eテレ)やBSハイビジョン(現BSプレミアム)でも何度かリピート放映されている。単行本の1~3巻及び4~5巻の内「サバイバル訓練」の部分を描き、オリジナルの描写も適宜加えて、独自の完結を見た。アスミとマリカの友情関係の構築をメインに据えて描かれている。監督・シリーズ構成は「海が聞こえる」「勇者指令ダグオン」「セラフィムコール」、後に「絶対少年」「ポルフィの長い旅」等のベテラン、望月智充。キャラクターデザインは望月監督の奥様でもある後藤真砂子(オールドアニメファンならこの2人はよくご存知でしょう)。アスミ役は、「クレヨンしんちゃん」でお馴染みの矢島晶子。
放送終了後、キングレコードよりDVDが発売されている。
アニメ版は構成が独特で、原作の読み切りの内の2~5話は、本編の宇宙学校が舞台の連続したエピソードに挟み込む形態でした。
唐突な感じを与えるので、多くのアニメファンが戸惑っていたようです。
(原作を読んだ感触では、連続TVシリーズにするにはそれしかなかったとも思える)
アニメ版における乗り物の描写としては…
1.第3話「星への一歩」で、アスミや府中野達を2次試験の会場へ運んだ観光バスのモデルは、明らかに国際興業(グループ)のスーパークルーザー。
2.第7話「宇宙学校入学式」では、都心の駅のサインがリアル。電車は201系っぽい。新宿で乗り換えようとしたアスミは、原作同様スカートの裾がドアに挟まれてしまっていて、降りられなくなってしまいます…。
アニメ版の初回放送は、1ヶ月早く放映が始まった、同じくSFコミックのアニメ化作品と同じ放送局・曜日・時間帯だった事でさらに話題になりました。
次回はこのコミックを取り上げます。
申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
******************
《今日見た・聞いた・思った事》
「電力使用制限」終了に伴い、東急東横線の渋谷駅も明かりがほぼフルに点灯するようになりました。
渋谷駅って、こんなに眩しかったっけ?
関東地方はここへ来て暑さがぶり返してきているようですし、少々時期尚早かなとも思います。
何回も書いていますが、「定期ダイヤ」と「バリアフリー」は早く震災前の体制に戻すべきですが、電力供給事情が劇的に改善されていない現状では、その他の部分の節電は継続した方が良いと思うし、長期的にも電力をあまり使わずに済むような体制とすべきでしょう。
《今日のニュースから》
ハングル表記の不審船 石川県輪島市の沖合いで発見