№447 バスグラフィックvol.10(ネコ・パブリッシング)

 原発事故が「レベル7」とか、相次ぐ大きな余震とか、人々を不安に陥れる出来事はなかなか少なくなりませんが、一方で昨日は東北新幹線が福島まで開通し、在来線乗り継ぎながら仙台まで鉄道だけで行けるようになりましたし、今日は暫定的ながら仙台空港に民間旅客機の乗り入れが再開されたという、交通にとっては明るいニュースもありました。
 当分不完全な状態は続くでしょうが、是非、「乗り物」が先頭に立って、被災地に光をもたらして欲しいと思います。

「バスグラフィックvol.10」は先月末に発売になりましたが、やはり震災による中断で取り上げるのが遅くなってしまいました。
 これまでの実績通りの刊行になります。

 しょっぱなに、都営バスに導入された三菱ふそうのポスト新長期規制エアロスター・ノンステップの記事があり、豊富なカラー写真で内外が詳しく紹介されています。
 都営バス各自動車営業所に配置されていますが、ここで取り上げられているB-V333を初めとする渋谷〔営〕車は、主に〔学03〕系統で運用されているようです。

 メイン特集は《富士重工ボディに昂ぶる》

 富士重工がバスのボディの生産を終了して、気がつけばもう8年、いつの間にか首都圏からは殆ど姿を見せなくなってきました。
 特に5Eとなると、もはや首都圏では絶滅に近い状態で、東京から離れて中古車の割合が多かった北関東でも見かける事が極めて少なくなってきています。
 最終生産が基本的に1988年位で、もう20年以上経っているわけですから。
 現在、首都圏最後の5Eとされるのが茨城交通の4台。
《5E健在!》と題して、多数のカラー写真で紹介されていて見ごたえがあります。

 続いて《麗しき5Eたち》と題し、東京近辺で活躍した5Eボディの車両の写真が扉を含めて37枚。
 長いのも短いのもあって、相模鉄道のP-LT312Jはナロー仕様。
 この「富士重ボディを架装したP-LT312Jのナロー」は全国的に極めて珍しい、という話をどこかで聞いた事がある気がするのですが…。
(先代のECMだと京急バスにあったような気がするが)
 惜しいのは、神奈川の事業者の写真を出すのであれば、是非江ノ電バスも出して欲しかったと言う事。

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 特に鎌倉〔営〕には三菱ふそうの長尺車が数多くあり、首都圏では珍しい存在だったので。

 さらに都心だと5Eどころか7Eも少なくなり、特に2段窓の車両は希少価値が出てきました。
 という所で《Final 7E》と称して、5事業者の2段窓の7E車を取り上げられています。
(西武バスは比較の参考として、ツーステップの新7E車も)
 特に関東バスはU-規制の3ドアと言うのが泣かせる所で、ボディと直接関係はないが、車内の座席配置が、流動を考慮してよく考えられているなあと思えました。
 決してボディ自体が長い訳ではないので。

 初めての試みか、イラストとテキストでつづられた《失われた路線をふり返って》
 かつて京成電鉄が運行していた〔上34〕系統の乗車記。
 1990年の話だそうで、大きな見開きの上野駅界隈なんて、京成バスのモノコックだけでなく、都営バスの「ブル」に山手線の205系、京浜東北線の103系も懐かしいなあ。
(ちなみに現在休業中の「じゅらく」は、昔は特急<とき>の食堂車や上越新幹線のビュフェも営業していた所)
 浅草の東武DRCも。
 京成上野駅前には今は夜行高速バスや深夜急行バスの発着はあるものの一般路線は全くなし。
 グループ全体でも、隅田川より西に乗り入れるのは、京成タウンバスの〔有34〕系統だけになっています。

 外国のバスとして、今回は上海のトロリーバス事情が取り上げられています。
 見開きの写真のような例外もあるけれど、ボディが案外とモダン。
 しかし、トロリーバス系統の一覧表がありますが、ディーゼルバスとの併用と言う系統が大半のようです。
 欧州やかつての日本だと、トロリーバスとディーゼルバスの系統は明確に分けられているのが不通だったのですが。
 架線が景観の邪魔になると言うのは欧州のLRTでも課題で、上海だと今後は「スーパーキャパシターバス」や「トランスロール」(フランスのクレルモン・フェランにもある)が中心になっていくのでしょうか。

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 後は白黒だけれど《出雲の国のバス神話》は1985年当時の旧カラーの一畑電気鉄道の写真が豊富。
 純粋な大型とナローの比較が楽しい。
 今の一畑バスの一般路線車は皆中型車なのが残念なのだけれど。
 また、《昭和50年代の川崎のバスたち》も(一部横浜市の鶴見を含む)、バスそのものもさる事ながら、町の佇まいの激変振り(特に武蔵小杉)には驚かされるかも。
「いすゞ」+「帝国(日野)」と言うと、国鉄バスの印象が強いですが、臨港バスにも相当ありました。
(国鉄・臨港以外だとあとどこがあるだろう?)
 1979年(横浜市営も含めてバスが古いからとてつもなく昔の写真にも思えるが、「ガンダム」が始まった年だ)の運賃表示にも注目。
 今の半額程度。

 最後にまたカラーに戻って《北海道青春バス紀行》
 今号は第2弾として道北バス、斜里バス、網走バスが取り上げられています。
 ここのテキストには書かれていませんが、道北バスでは現在、地元の学習塾がスポンサーになって旧塗装復刻車両が少なくとも3台運行されています(№33で書きました)。
 そのカラーが標準だった頃です。
 首都圏のバスを見慣れた者にとっては、どの車両もひとクセもふたクセもあって楽しいです。
 まだバスの利用が多かった頃だろうし、観光路線や長距離路線も数多く存在するからでしょう。
 斜里バスの斜里バスターミナルも、頭上にぶら下がる行先表示案内に、バスの黄金期を感じました。

 折込みポスターは、立川バスの7E勢ぞろいの図。

「バスグラフィック」も10号になりました。
 思ったんですが、「バスグラフィック」って、「昔のバス(特に都心から遠い地方のバス会社)の形式写真をたくさん見たい」という向きにオススメのMOOKなのではないかと思います。
 是非この調子で、今後もお願いしたいと思います。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

《今日のニュースから》
初の子供の脳死判定 臓器移植手術実施