№443 鉄道ピクトリアル2011・4月臨時増刊号 【特集】西日本鉄道(鉄道図書刊行会)

 カーボンブラシの不足により、2日から間引き運転に入っていたJR西日本ですが、とりあえず明日から通常ダイヤに戻るそうです。
 特急の増結や臨時の運転も当初の計画通りになり、明日から予定されていたアーバンネットワークの一部区間の間引きも回避されるということです。
 とりあえずヤレヤレですが、メインの工場の操業が再開された訳ではありませんから、予断は許さないでしょう。
 東北新幹線は一ノ関~盛岡、東北本線は福島~岩沼が運行を再開。

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「鉄道ピクトリアル」の1社を特集した臨時増刊号、今回は福岡の西日本鉄道でした。
 本来は2月頃の発売を予定していたようですが、少々遅れて先月頭に発売になりました。
 西鉄の特集は1999年4月以来12年ぶりになります。
 西鉄というと、大手私鉄ではありながらバスがメインという印象があり、それは公式Webサイトで先にバスが来ている事でも解かると思います。
(ちなみに現在、大手私鉄でバスを直営で持っているのは西鉄だけになった)
 鉄道では、関東とも関西ともつながっていないためか、どこか独自の進化を遂げていて、かなり趣きが違うという印象がありました。
 最近まで長区間の路面電車を運行していた事も、外から見ると異色のムードをかもし出していたかもしれません。
 前々回の小田急、前回の阪急同様、各記事を横断して感じた事、思った事を記してみます。

 構成としてはいつもと変わっていません。

★西日本鉄道の沿革と現況
 改めて西日本鉄道の沿革のが記されていますが、元々の母体は、北九州地域で路面電車を運営していた「九州電気軌道」、つまり路面電車から始まっているわけです。
 しかも同じ軌道線からスタートしている京急や阪神等が後にそのまま高速鉄道に発展していくのと違って、全く別の会社(九州鉄道)が殆どを建設した天神大牟田線が今の西鉄の鉄道部門の屋台骨を支えているので、長い歴史を経ていわば「主客転倒」してしまったともいえる訳です。
 この歴史が、後述しますが、未だに路面電車への郷愁を(他の事業者以上に)誘っているのかもしれません。
 バス部門に関しては、昨年の西日本車体工業の廃業については触れられていませんでした。
 もうそろそろ「西鉄ライオンズ」を知る人も少なくなってきたかもしれません。
 いまや西鉄は完全にホークスですから。
(一昨年の「ライオンズ・クラシック」は西鉄も協賛していたらしいが)
 物流業もバス・鉄道と並ぶ三本柱の一つで、鉄道会社としては異色かも。
 
★輸送と運転 近年の動向
 鉄道の各部門別の現況が記されています。
 乗降人員のデータがありますが、1992年をピークにして、減少傾向に歯止めがかかっていません。
 駅別乗降人員の表もありますが、天神で13万人強とは、大手私鉄としてはやはり少ないなあ。
(小田急の新宿が約50万人)
 増発を伴っているとはいえ、ラッシュ時の最大連結両数が減少(8連→7連)しているのも厳しい。
 矢加部駅は100人程度ですか。ローカル線並…。

★駅務、乗務所のあらまし
 駅務、乗務では駅務が分社化㈱西鉄ステーションサービス)されていて、この社員と、本社からの出向社員によって駅務が構成されているとの事。
 駅務から乗務員の登用は行われていないと言う事。
 と言う事は、乗務員については、西鉄本体が最初から車掌として雇用し、運転士として養成すると言う流れなのでしょうか。

★進行中の連続立体交差事業
 この内、春日原の連続立体交差工事は、前回の西鉄特集号でも触れられていました。
 しかし12年経ってもまだ計画段階に留まっているようで、昨年通過してみた時も、まだ具体的な工事は始まっていないようでした。
 新たに雑餉隈の連続立体工事も行われるようですが、どちらも完成があと12年先とは、随分気の長い話…。
「バス営業所の用地を利用した新駅設置」は初耳でした。
 一方で高架化が完成した花畑や千早について触れられても良かったと思います。

★筑豊電気鉄道の現況
 確か1990年代は日中でも7~8分毎に運転があったはずなのですが、この号発行直後の3月25日にダイヤ改正が行われ、
平日  黒崎駅前~筑豊中間 10分毎
     筑豊中間~筑豊直方 20分毎

土休日 黒崎駅前~筑豊直方 15分毎
にまで削減されています。
 利用者が40年で1/3近くにまで減ってしまっているのは辛い…。
 車両は、やはり本格的なLRT超低床スタイルを志向すべきでしょう。

★西日本鉄道と共に(インタビュー記事)
 OBへのインタビューですが、まずバスの車掌から鉄道に移り、助役・駅長にまで上りつめたと言う流れは興味深い。
 西鉄らしいとも思いますが、国鉄だけでなく(国鉄は性格上、バスも規則などある程度鉄道に近かった)昔の大手私鉄は殆どが最近までバス部門も直営でやっていた訳ですけれど、同じように現業でバス→鉄道(あるいは逆)のルートが存在していたのでしょうか?
 分社が徹底されている今となっては、鉄道⇔バスの異動は「出向」という形を取るのが普通だと思いますが。
 2000系の踏切事故が生々しくて凄まじい。
 車体が横倒しになってしまって、よく復帰できたものです。

★見果てぬ夢 -西日本鉄道の幻の新線計画-
 その後は歴史編になり、西鉄の100年を振り返った後、表題の、北九州~福岡の、2度に渡る高速鉄道建設計画が取り上げられています。
 1度目が九州電気鉄道による、戦前でほぼ現在の鹿児島本線に並行するルート
 2度目は博多湾鉄道汽船(後の宮地獄線)による、戦争直前の鹿児島本線と殆ど並行する区間に加えて福間から福丸を経由して飯塚に至る路線
 3度目が筑豊電気鉄道による、直方や飯塚といった石炭地域を経由したルート(現在の路線はこの計画を先取りしたもの)。
 福岡県の2大都市を結ぶ路線だけに、実現していれば鹿児島本線の強力なライバル路線になり、確かに高速鉄道・西鉄の発展にも寄与したかも知れません。
 直方や飯塚も、「西鉄」主導でニュータウン計画が生まれたかも知れない、と想像してみるの楽しい。
 ただその意味で特にこの第3案はターミナルが黒崎というのが中途半端で、山越えもマイナスに働くかも。

★回想の北九州線
★車両履歴から見た 西鉄の路面電車
 等
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 ピクトリアル臨時増刊号に限らず、西鉄全体に関わる刊行物で特徴的なのは、北九州市内線や福岡市内線に代表される路面電車ネットワークにかなりのページが割かれること。
 前述のように、もともとの母体が純粋な路面電車の会社であった事があるかも知れません。
 今回も例外ではなく、北九州市内線全線廃止直前の情景や、車両の履歴に多くが割かれています。
 ただ、一部の車両が広島や熊本などに譲渡されたり(№104)、静態保存された車両もあるのですが(№105)、それらの写真が1枚もなかったのが残念。

 最後に、現有車両プロフィール。
 西鉄と言うと、天神大牟田線の電車でも、何か関東や関西に比べて、車体幅が随分狭いと言うイメージがありました。
 実際、特急車8000系は2,716㎜で、通勤車5000系が2,740㎜で、これは例えば、同時期の京阪8000系の2,780㎜等と比べても明らかに狭いです。
 建築限界の影響があったのでしょうか。
 最新の3000系が2,770㎜とかなり広くなって、建築限界の拡大がなったのかとも思いますが、、この辺の経緯については本文ではどこにも記されていませんでした。
 6050系電車の最終増備車の6157Fが、大分仕様を変更し、外観にも反映されているようなのですが、その編成の外観の写真がなかったのも残念です。
 貝塚線の600系が、大牟田線デビュー時のカラー(ベージュ+ブラウン)を復刻してくれたら面白いなあ。

 最後に。
 巻末に折込みで「車両系統図表」(平日)が封じ込められています。
 西鉄特集ではこれまでにも大牟田線のダイヤが封じ込められていましたが(これは西鉄の駅で利用者に無料で配布されている)、今回はさらに一歩進んで車両の運用まで判別できるようになっています。
 形式、連結両数毎に色分けされていて、追跡には便利。
 しかしこれを見ると、8000系は特急車でありながら特急運用が意外に少なく、下りは32本、上りは29本中の15往復しかなく、夕方には普通列車運用に入った後、19時30分には早々に全編成入庫してしまいます。
 日中は急行で運用される3000系も、朝晩は普通列車ばかり、天神は朝ラッシュのピークをはずして発着するようになっています。
 代わって朝晩は6000系や5000系の6・7連が特急・急行の主役になる訳ですが、ラッシュ時と日中でこれだけ運用パターンがガラリと変わる大手私鉄も、西鉄位ではないでしょうか。
 イメージ的には、ラッシュと言っても首都圏ほどではないという気もするし(しかも最近は減少している訳だし)、朝はともかく夕方はもっとクロスシートが走れるんじゃないかと思うんですが、やはりそれでも混雑は激しいのでしょうか。
 ダイヤそのものでは、特に日中の柳川での普通列車の停車が20分以上もあって、これは大手私鉄としてはかなり際立って長くとられています。
 もちろん特急との接続のためでありますが、全体的に特急・急行の待避時間が、本州の大手各社と比較しても割りと長めになっているのは(大橋などでも)、少々気になる点です。

 さあ、多少不幸な形ながら九州新幹線がついに全通しましたが、この事は西鉄(及びグループ全体)にはどう関わってくるでしょうか。
 鉄道に関しては新幹線の駅に直接接続がないので、正直どの程度影響が出るか解かりかねるのですが…。
 むしろバスの方が高速でも、一般でも大きく影響するでしょう。
 鉄道、特に天神大牟田線に関しては、やはりもう少し久留米より南の区間で利用が増えて欲しいのですが、現状では難しいでしょうか。
 とりあえずは特急停車駅、特に大牟田の利用の増加を図る事が期待されます。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

《今日のニュースから》
コートジボワール日本大使 フランス軍により救出