№407 フランスの鉄道 総まとめ

 3日間お休みして申し訳ありませんでした。
 昨年10月26日~11月6日にかけてのフランスの旅行について、12月から前々回にかけて2ヶ月、足掛け2年に渡って綴りました。
 最後に総まとめとして、フランスの鉄道及び鉄道の旅について、簡潔ながらまとめてみたいと思います。

1. フランスの基幹鉄道運営組織はSNCF(Societe Nationale des Chemins de fer Francais)=フランス国鉄。

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 総延長約29,000㎞で、「トラン・ジョーヌ」などごく少数の路線を除いて、高速新線も含み1435㎜軌間。

2. 列車種別は必ずしも明確ではないが、高速新線を使用した超特急TGVを筆頭に、在来線ではコラーユ・テオス(Corail Teoz=特急格 主にTGVの恩恵が及ばない路線で運行)、コラーユ(Corail=急行格)、テーウーエル(TER=快速格)、普通列車がある。パリ近郊にはトランジリアン(Transillien)及びRATPとの相互乗り入れ路線であるエル・ウー・エル(RER)が運行されている。夜行列車にはコラーユ・ルネア(Corail Lunea)がある。

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3. 都市間輸送はもはやTGV偏重という印象が強い。パリに関わりない区間でも高速新線を走行するTGVの列車がある。一般の列車はパリ近郊を除くと、列車本数はあまり多くない。普通列車だと幹線でもせいぜい1~2時間に一本、ローカル線だと1日数本というレベル。土曜日は比較的平日に近い本数が確保されるが、休日はかなり減る。

4. TERは各地域圏に運営が委託されているようで、同じ形式でもおのおの異なるカラーリング・マーキングが施されている。

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5. 車両は以前は客車列車が中心で、プッシュプル・トレインスタイルも目立つ。ただ、最近はTER以下だと、EC・DCにとって代わられつつあるようだ。新型車両では欧州に特徴的な多目的(バリアフリー・自転車積み込み等)の利用に対応した設備が整えられている。デザインはラッピングが多用されていたりしてしゃれた面もある。しかし一方ではパリ近郊でさえ、旧型車両がかなり残っている。窓ガラスの汚れが激しかったり、トイレの水周りが壊れたままだったりと、ソフト面での整備に多々問題が見られるようだ。

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6. 電化率は北部で高く、南部は比較的低いようだ。幹線区は良く整備され、在来線でも160㎞は平気で出せる。

7. 国際列車も今日ではTGVなどの高速列車が主力になり、イギリス行「ユーロスター」(運営は別格)やベネルクス、ドイツ、スイス、イタリアへの列車が設定されている。一方在来タイプの国際列車は少なくなり、スペイン(タルゴ)やイタリアの一部へ走る位。国境付近ではローカル列車の相互乗り入れもあるようだ。

8. 駅の数は日本に比べたらやはり少ない。廃止になった駅も少なくないようだ。大半の駅の駅舎は、パリ・モンパルナスやリヨン・パール・デューなど一部を除いて昔ながらの建築がそのまま残されている。駅舎以外にも歴史的構造物が多く、この分野での見所は多い。ターミナル駅では、発車20分前にならないと出発するホームが表示されない。

9. TGVやコラーユ・テオス、コラーユ・リネアは全席指定で追加料金が必要。包括運賃が設定されている。

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「フランスレイルパス」のパスホルダー運賃は枠があらかじめ決まっていて、全体的に空席があっても利用できないケースが少なくない。

10. 私鉄はプロヴァンス鉄道やコルシカ島などごく小規模な路線がごくわずかしか走っていない。地下鉄はパリで世界最大級の路線網を誇り、リヨンなどでも見られる。それにも増して最近では各都市でLRTの建設・延伸が急ピッチで進み、一部では「トラム・トレイン」として一般鉄道への乗り入れも見られる。

11. 最後にあくまで個人的な心象になるが、今回の年金改革をめぐる騒動に見られるように、フランスという国は一見優雅な印象を与えるが、実は過激な行動や現象が多い(1995年の核実験や、2002年大統領選の極右の台頭など)。
 当然鉄道も例外のはずはなく、しょっちゅうストライキなどが起きる。
「政治的な関心の高さ」から来るのか?
 しかし一方で利用者のモラルという点ではどうなんだろう?
 地下鉄で顕著だが、無賃乗車が際立って多いし(改札が乗車と降車で明確に分離されているが、降車側の扉を強引にこじ開けて進入する)、車内で勝手に歌ったり、楽器を演奏して金を貰おうとしたり…。
 よその国の事だから「お国柄」という以外ないのだが、どうも個人的にはついていけない部分が多い…。
 もっと穏やかに鉄道の旅を楽しみたいものだ。

「穏やかに」という意味では、上に挙げたように、特にフランスレイルパス利用の場合、ホルダー枠が埋まって希望していた列車に乗れず、プランがガタガタになってしまう場合が少なからず発生する事は、ある程度覚悟しておいた方が良い。
「この列車にはぜひ乗りたい」「この列車に乗れないと困る」という場合は、手数料がかかってでも、あらかじめ日本出国前に、レイルパスと共に予約を入れておくべきでしょう。

 個人的には鉄道博物館に行けなかった事、「トラン・ジョーヌ」に乗れなかった事は残念でなりません。
 何とか出来るだけ早くフランスを再訪し、両者を訪れたいものです。
 といっていつになるのかさっぱりわかりませんが…。

 2ヶ月に渡ってお送りした、今回のフランス旅行の各記事に関しては、以下の文献を参考にさせて頂きました。
「トーマスクック時刻表 2010 夏・秋」(ダイヤモンド社)
「世界のLRT」(三浦幹男・服部重敬・宇都宮浄人/JTBキャンブックス)
「世界の駅」(三浦幹男・杉江弘/JTBキャンブックス)
「ヨーロッパ鉄道旅行大旅行」(長真弓/晶文社)
「世界の鉄道」(社団法人 海外鉄道技術協力協会/ぎょうせい)
その他、Wikipediaなど一部のWebサイト


№374 乗り物中心のフランス旅行記 1
№375 乗り物中心のフランス旅行記 2
№376 乗り物中心のフランス旅行記 3
№378 乗り物中心のフランス旅行記 4
№379 乗り物中心のフランス旅行記 5
№381 乗り物中心のフランス旅行記 6
№384 乗り物中心のフランス旅行記 7
№386 乗り物中心のフランス旅行記 8
№388 乗り物中心のフランス旅行記 9
№389 乗り物中心のフランス旅行記 10
№390 乗り物中心のフランス旅行記 11<終>
№399 パリの6大ターミナル 1.サン・ラザール
№400 パリの6大ターミナル 2.ノール
№401 パリの6大ターミナル 3.エスト
№403 パリの6大ターミナル 4.リヨン
№404 パリの6大ターミナル 5.オーステルリッツ
№405 パリの6大ターミナル 6.モンパルナス

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

《今日のニュースから》
秋葉原の歩行者天国 約2年7ヶ月振りに再開