№396 バスラマ・インターナショナル123(ぽると出版)

 昨日は年鑑バスラマについて取り上げましたが、今日はレギュラーの123号について書きます。
 こちらも昨年12月25日には発売になりましたが、少々遅くなってしまいました。

◆各地の新車から
 ポスト新長期規制モデルが、各地の事業者で続々運行を開始しています。
 横浜交通開発のエルガ・ワンステップは、本体の方で公開していますが、2007年に横浜市交通局から2系統の譲渡を受けてバス事業を開始して以来、初のプロパーの新車になります。
 座席の柄が本体とは異なったものになっています。
 並べられた写真を見る限りでは、一般路線車ではJ-BUS系が優勢のように感じられます。
 一方、これとは別枠で都営バスの新車(V代)についても取り上げられています。
 三菱ふそうのエアロスター・ノンステップと日野BLCハイブリッドですが、三菱ふそうの純粋なディーゼルエンジン車は7年ぶりになります。
(途中CNG車の投入はありましたが)
 また、これも別枠でリムジンバスの燃料電池バスも紹介されています。
「愛・地球博」でシャトルバスとして使用されていた車両の改造で、フロントがセレガ顔になっています。
 限定運用のようで、ダイヤがわかるといいのですが…。

◆ 15周年を迎えた武蔵野市のムーバス
 日本のコミュニティバスの嚆矢として知られる「ムーバス」が15周年を向かえることになり、現状と運行会社2社の声が取り上げられていました。
「黒字になった」というので一般にも大々的に取り上げられる事になりましたが、本来は「黒字」は想定していなかったようで、若干戸惑い気味のようです。
 路線の概要表がありますが、これを見ると、特に運行時間帯が相当異なり、最大で3時間違っています。
 バス停を細かく(200m間隔を基準)設定している事で、後の環境の変化で移動せざるを得ないケースもあるそうです。
 3号路線はポンチョを入れられないから経年車のリエッセを使用し続けており、いずれルートの変更も検討しているそうですが、リエッセは現在もBDG-規制モデルが発売され続けており、それらへの代替という選択肢はないのでしょうか?
 恐らくは完全ノンステップ化を目指しているのでしょうが、小型車のレベルでも曲がり角で切り返しの有無の差が出るとは、正直盲点を付かれた感がありました。
 自転車対策は大変そうだなあ。
 武蔵野市は坂道がほとんどないし、市域はJRの駅が割と近いから簡単にアクセスできるし。
(市域自体が案外小さいから、ムーバスのバス停に駐輪場をつくってもあまり利用されそうにない気もするし)
 武蔵野市だけではないけれど、自転車はマナーもかなり悪いからなあ。
 今後期待したいのは、(ムーバスに限らないが)一般路線バスとコミュニティバスの営業面での協力関係の構築。
 市内で全線有効の1日乗車券の発売とか、バスマップの発行とか。
 両者が集まってのイベントもやって欲しいです。

◆ バス事業者訪問140 岐阜乗合自動車

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 7号の「ユーザー訪問5」で取り上げられて以来約約20年振りとの事で、当時のバックナンバーを紐解くと、全体的なページが少ない中で貸切部門の割合が大きかったようです。
 超デラックスな貸切車のラインナップで有名で、グループの貸切専業も4社あり、京都市に京都観光バスもありました。
 今現在で言うと、路線バス、それも岐阜市内に関わる事が中心になり、名鉄バス、岐阜市営バス、それに名鉄のローカル線(いわゆる「600V線区」)を統合した事で市内交通が一本化され、事業者サイドとしては評価しているようです。
 一方でその他の部分に関しては多少舌ったらずな感があり、ローカル線の苦しさはどこでも同じですが、例えば約9年前にJR東海バスから引き継ぎながら、いつの間にか自社も撤退になってしまった美濃白鳥から蛭野方面の路線とか、逆に名鉄から引き継いだ愛知県犬山市の路線など、親会社の名鉄との関係についても、もう少し触れて欲しかった所です。
 それからICカード「アユカ」は、JR東海の「TOICA」、今年からスタートする名鉄などの「manaca」と共通利用を考えないと不便では?
 高速バスは、20年前はDX貸切車の転用車を使用しながらJR特急<ワイドビューひだ>の挑戦を受けて苦戦だ、としていた高山線が、高速道路への乗せ換えもあって堅調なようです。
<パピヨン>は運行開始当初は昼行便がありました。
 距離的にも昼行便の再設定はしやすいと思うのですが、岐阜だと需要は少ないのか。
 車両面では、三菱ふそうを中心に日野も導入が進行中というのは名鉄系らしいところ。
 市営バスからの引継ぎでいすゞや日産ディーゼルもあり、一部は市営バスの鵜のデザインを残した折衷的な塗装になっています。
 ただ、個人的にはあまりいいデザインとは思えず、鵜を生かしたいのであれば、いっその事一から新しいデザインを考えた方が良いと思いました。
 なお、今は市営バスから以外は中古は導入していないようです。
 以前岐阜市内で、エアロスターK(たぶん東京都営バス)を見た事があるのですが、もう廃車になりましたか。

◆ バス事業者訪問141 大阪バスグループ
 もう一社が、貸切専業の大阪バスと、グループ7社。
 貸切専業の世界は正直良くわからないが、確かに「東京バス」って、最近良く見るよね、と思っていました。
 クリスタル観光で、さらにその前は東京近鉄観光バスになるようです。
 母体は皆バラバラながら、デザインがほぼ統一されていて、ドア横のマークが各社のアイディンティティとなるようです。
 車両はそんなに極端に仕様がデラックスなものは存在しないようで、岐阜バスの歴史でもそうだけれど、貸切バスに求められるものがかなり変わってきているように思えます。

◆ 「外国製商用車の導入について」
 10月28日に開催されたという「第59回中央技術委員会全国大会」の中の、いわさきコーポレーションの発表で、2008年に始まったヒュンダイの「ユニバース」の導入の経緯と現状について語られています。
 なかなか衝撃的なレポートではないかと思われました。
 日本の国産との比較の表がありますが、ヒュンダイのバスの生産台数が、日本の2社の合計を大きく上回っています。
 韓国の国土の面積が日本の1/4強に留まる事を考えれば大変な数字で、確かにいくらなんでも国内向けだけではこれだけの数字にはなりえず、輸出もかなりある事になります。
(ちなみに韓国の「D社」(=デウだろう)も日本のメーカーよりは多いが、ヒュンダイの半分以下)
 そして、もはや高コストの国産に固執する必然性も余裕もなく、国内のメーカーの統合が進む中では第3の選択肢として海外メーカーの車両を検討する必要があった、さまざまな理由でユニバースを購入する事になったとしています。
 いわさきでのユニバースの評価は極めて高く、今後はグループ内のディーラーを通じて広く他のバス事業者に勧めると共に、路線バスについても外国製(これも間違いなくヒュンダイになるだろう)の導入を検討する、としているようです。
 この報告を読む限り、いわさきは(少なくとも貸切・高速部門では)はっきりヒュンダイにシフトしていくだろうと思われます。
「バスラマ」のこの号では冒頭でポスト新長期規制に適合したユニバースを紹介しており、数ある報告の中でいわさきグループを取り上げたのもこれにリンクさせたものだと思いますが、それにしても、はっきり外国製にシフトすると宣言した(と私は解釈した)事業者が現れたのは、業界全体に大きな衝撃を与えるのではないでしょうか。
 既にいわさきのセールスの効果が出ているのか、関東地方でも日本中央バスや富士急の高速バスにユニバースが導入されており、羽田空港などでも姿が見られます。

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 心情的には国産のバスメーカーに頑張って欲しいし、バスの改良をサボっているとも思っていません。
 けれど一方で、西工の廃業やUDの事実上の撤退といった出来事まで起っては、確かに国産にこだわっていては、バス業界全体の向上は進まないかもしれません。
 今後も韓国製の導入が進むだろうし、中国製の導入もありえるかも知れません。
 また、条件さえ合えば欧州製の積極的な導入を検討する事業者(岐阜バスも連接車を導入予定)もあるでしょう。
(円高のご時世でもあるし)
 バス業界に限らないけれど、今のバイヤーって、シビアだから…。
 問題なのは、こういう「お客様」であるバス事業者の動向を、バスメーカーはどう考えているのか、という事ですが、残念ながら今の所それがちょっと見えていない。
 考えすぎだと思いたいけれど、昨日の「年鑑バスラマ」でも触れられていましたが、このままでは日本のバス造りは価格・質とも外国製に劣ってしまって、根本から崩壊する危険性もあるのではないか?
 そんな印象も与えた報告でした。

◆その他
 西武の超長期モニター車が西武総合企画に移籍、特定車として再スタートを切ったとの事。
 特定車となると、数値にどの程度の変化が出るのかが興味深い所だが、とりあえず月間走行距離が半分以下になったとか。
 2,000㎞を割っていて、単純比較はできないものの、同じ一般路線用の東武・京王・東急がいずれも4,000㎞以上だからものすごく少なくなっている。
 理由は所沢市内のCNGスタンドの閉鎖が遠因になっているが、私が埼玉在住時代、所沢市東新井町にあったスタンドに、西武のCNGバスがやってきて補充していく姿を何度か見ていたのだが…。

 昨日の「年鑑バスラマ」、そして今号をあわせて読むと、2010年というのは、日本のバス造りが危機的な状況に陥り始めた年として記憶される事になるのではないか?そんな感慨にとらわれてしまいました。
 
 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

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