№395 年鑑バスラマ 2010→2011(ぽると出版)

 昨年末には発売されていた、毎年恒例の「年鑑バスラマ」ですが、少々遅くなりまして今日取り上げる事にします。
 前年(2009→2010)の時には、最後に「先行きの不安が懸念だったと思えるような、明るい話題で占められて欲しい」と結びましたが、残念ながら2010年もそうは行きませんでした。
 特に、肝心のバス造りの部分で大きな後退を強いられた感がありました。

◆2009年 国内バスハイライト

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 ポスト新長期規制のモデルが大方出揃い、各地で運行が始まりました。
 また、ヒュンダイ・ユニヴァースを初めとする韓国車の台頭、ハイブリッドバスの導入の加速、旧塗装の復刻などが主なトピックスになっています。
 名古屋市営バスの旧塗装車は本体でも掲載させていただきました。
 一番撮りたいのは松本電鉄の旧塗装かなあ。
 昔の北村BUやMRで登山に行った思い出が強く残っているので。

 その後「巻頭言」として和田由貴夫編集長より、3つの視点から日本のバスを展望しています。
1.バスの機能の強化で利用者の増加傾向を定着できるか。
2.バスの選択肢が狭まる事の弊害(特に西工の廃業と、UDの事実上の撤退)。
3.相変わらず進まないノンステップバスの抜本的改善。

 続いて特別寄稿として、鎌田実教授による「次世代のシティバスを考える」。
 鎌田氏は現在のノンステップバスは、コストパフォーマンスの点でバランスが取れているとしていて、この点はバスラマ氏と見解が多少異なっています。
 ただ、だからといって今のままで良いという訳ではないし、ワンステップバスとの並行導入は、早急にノンステップに一本化すべきとしています。
 ここで、乗客の立場はもちろん、電動車椅子を取り扱う乗務員の立場に触れているのが興味深い所で、言われてみれば、なぜ乗務員の立場からノンステップ化の早期促進が叫ばれないのか、不思議ではあります。
(組合なんて、乗務員の待遇の改善や福祉の向上を声高に叫んでいるのだし)
 また、高コストの日本でバスを作り続ける事がいいのかという疑問を呈し(確かに今は円高でもあるし…)、最後に車体構造で革新を進めないと海外製に押されてますます日本のバス造りが窮地に陥る(次回の「バスラマ№123」で触れます)、高齢化が社会に大きなインパクトを与え始めている日本が、先頭に立って模範を示さなければならない(輸送形態がどう変わるかも見極めないとしているようです)と結んでいます。

 その後、例年同様に国内で発売されているバスのカタログが並びますが、冒頭で2000年と2010年のバスのラインアップを比較した表があります。
 確かに選択肢がかなり狭まってる事が読み取れます。
 特に一番需要が多いだろう路線中型車は、J-BUS系(いすゞエルガミオ/日野レインボーⅡ)しかない状態です。
 実車のカタログページは前年の29Pから、なんと20Pに激減してしまいました。

◆海外編
 欧州の新型車両を中心に、バーミンガムの「ユーロバス・エクスポ」のリポート、中国の新型バスについても取り上げられています。
 中国のバスも見た目(まだイラスト段階みたいだが)は欧州のそれと全く変わらなくなってきているようです。
 個人的にはやっぱり2階建てバスの中身を見てみたいと思いました。
 何度も書いていますが、日本の市内バスのバリアフリーと着席定員の確保の両立には、連接車よりダブルデッカーの方が有効だと思うので。
(それが日本のバス造りの起爆剤になりうるとも思うし)

◆歴史編①
 まず「あの日もバスは走っていた」と題し、1970年~1980年代の日本のバスの表情を映した写真が並べられています。
 田舎を走るボンネットバスから、都会の駅前に並ぶ市内バスまで、新旧様々ですが、まだバス趣味が確立していなかった頃の撮影なので、何気ないのだけれど、とても貴重なシーンが多いと思います。
「スト権奪還」のビラが貼られた国鉄バスは、日本の労働運動の「負の歴史」の一つとして捉えられるべきでしょう。
 渋谷駅東口の東急バスは、系統は変わっていないと思うのだけれど、乗場が今とは反対側だったんだ。
 後方の渡り廊下は変わっていませんねぇ。

◆歴史編②
 歴史編のPART2は関東バスの3ドア車。
 3ドア車自体は他社でも採用例は多く見られました。
(神奈川県は東急バスの、田園都市線沿線のエリア位だったかな…)
 ただ、関東バスは短尺車の中間にドアを設ける所から始まっていた点で、他事業者とコンセプトが異なっていたようです。
(だから降車は他事業者の3ドア車と異なり、通常は最後部ドアから)
 こうして写真が並べられると圧巻ですが、正直私は関東バス=日産ディーゼル、というイメージが強くあったので、他の3メーカーにも3ドア車があったのは知りませんでした。
 大半は富士重ボディですが、北村ボディの3ドアなんて、関東バスだけだったのでは?

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 ちょっと本体の「アーカイヴ」から持ってきましたが、これも関東バスの中古でしょうか?
 短尺なので、多分そうだと思うのですが…。

 前年と同じ事を書いてしまいますが、どうか次の(2011→2012)こそ、バス業界全体が明るい話題で占められる事を願わずにはいられません。
 それと、この後どこかで「バスマップの底力」のレビューを書きますが、そこでも感じた事ですけれど、バスメーカー、バス事業者、行政、(バスラマなどの)ジャーナリズム、市民団体やNPO法人、いずれもが同じような事を叫び、それを実現させようとしてるようなのですが、何か皆がソッポを向きながらやっているように思えてなりません。
 特にバスラマ各誌には是非、そのベクトルを同じ方向に向かわせるような調整役を期待したいと思っています。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

《今日のニュースから》
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