№383 「ネーミングライツ」考

 プロ野球・オリックスバファローズの準ホーム球場、「スカイマークスタジアム」の名称は、来年の2月で終わりになる事になりました。
 この球場は元々は神戸市の総合運動公園に造られた「グリーンスタジアム神戸」なのですが、2003年に「Yahoo! BBスタジアム」として、プロ野球の球場では初のネーミングライツを導入した後、2005年より、翌年に開港を控えた神戸空港への乗り入れを表明していたスカイマークがネーミングライツを取得していたものです。
 6年間この名前が続きましたが、スカイマークが「知名度アップに充分貢献した」事を理由に契約更新を行わないとしたもので、スタジアムを保有する神戸市では新たなスポンサーを公募する事になります。

 航空会社がスポンサーとなっているスタジアム等は海外にはいくつかあり、たとえばNBAのマイアミ・ヒートのホーム会場は「アメリカン・エアラインズ・アリーナ」、シカゴ・ブルズのホームは「ユナイテッド・センター」、また、イングランドサッカー・プレミアリーグのアーセナルのホームスタジアムは「エミレーツ・スタジアム」(外国の航空会社だよ…)と呼ばれています。

 日本では先の「Yahoo! BBスタジアム」がネーミングライツの先鞭を切り、プロ野球では現在セ・リーグ1、パ・リーグ3の4チーム(5球場)がネーミングライツを導入。
(千葉マリンスタジアムも来年よりネーミングライツを導入の見込みで、今年中には発表の見込み。通販大手だそうです)
 サッカーではもはやネーミングライツは常識になったようで、来年のJ1・18チームのうち、ホームスタジアムにネーミングライツを導入していないのは鹿島・柏・浦和・川崎・甲府・名古屋・ガンバ・広島の8チームのみです。
(ヴァンフォーレ甲府のホーム・小瀬スポーツ公園陸上競技場は来シーズンから「山梨中銀スタジアム」になる)
 この他、座席にネーミングライツを導入する例も、甲子園球場などいくつかあるようです。

 また、アマチュアスポーツの競技場にもネーミングライツの波が押し寄せており、例えば神奈川県でも高校野球のメッカで水島新司原作「ドカベン」でも御馴染みの保土ヶ谷球場は「保土ヶ谷・神奈川新聞スタジアム」、ドリームランドの跡地にできた俣野公園球場は「俣野公園・横浜薬大スタジアム」と呼称されています。
 沖縄では来年、プロ野球巨人がオープン戦を3試合行うそうですが、この球場も「沖縄セルラースタジアム那覇」(那覇市営奥武山球場)と呼称するのだそうです。
 さらにスポーツ以外でもネーミングライツの導入が進んでいて、公共施設にも例が見られるようになってきました。
 例えば渋谷公会堂は「渋谷C.C.レモンホール」、横浜こども科学館は「はまぎん こども宇宙科学館」(はまぎん=横浜銀行)と呼ばれています。

 ネーミングライツは日本でもある程度知られてはいましたが、急速に普及するようになったのは21世紀に入ってからの事です。
 その理由はなぜか?
 明らかにイチローの影響でしょう。
 イチローが2001年に、「セーフコ・フィールド」という、保険会社がスポンサーになっているスタジアムをホームとするシアトル・マリナーズに移籍し、彼の地でも歴史的な大活躍を見せている事があるのは、間違いないはずです。
 
 ただ、ネーミングライツにはいくつか弊害も指摘されています。
 私が一番問題だと思うのは、スポンサーの経営状況とか、事件・不祥事とかに名称が左右されてしまう所だと思います。

画像

 西武ドームがいい例で、2005・2006年の「インボイスSEIBUドーム」を経て2007年には「グッドウィルドーム」となりました。
 グッドウィルは5年契約でしたが、この年に発覚したグループ企業の違法派遣問題等がたたって、この名称はわずか1年で終わってしまい、結局現在は元の西武ドームに戻っています。
 楽天のホーム球場もそうで、2005年に新規参入して宮城球場をホームにすえた時、「フルキャストスタジアム宮城」の名前となりましたが、これも違法派遣を巡るフルキャストの業務停止命令で、契約途中で打ち切りとなり、翌年より「クリネックススタジアム」となっています。
(「クリネックススタジアム」にしても、本来は頭に「日本製紙」の名をつける予定が、これも不祥事で、社名を削っています)

画像

 一番問題だと思っている場所が、「日産スタジアム」。
 いや、誤解なきように。日産自動車自体は全然まともな大企業で、マリノスのホームである内はこの名前が続くでしょう。
 ただ、この名前がついている横浜国際総合競技場では、開場時より「トヨタカップ」(クラブワールドカップ・今年はカタールで開催中)という、日産のライバルのトヨタ自動車がスポンサーになっているサッカーのビッグイベントが行われてきたのです。
 当然「日産」の2文字は使えず、この時だけ横浜国際総合競技場の名前に戻しています。
 このスタジアムの最寄り駅はJR横浜線の小机駅ですが、バス停には「日産スタジアム前」というのがあります。
(横浜市営バス300系統・東急バス〔綱72〕系統及び新横浜~溝口直行バス)
 バス乗場で「横浜国際総合競技場はどこで降りたらいいのですか?」と問われて「日産スタジアム前です」と答える事になり、これは混乱の元になるのでは…まあ観客の大半は解かっているでしょうが。
※あと、競技場側から見た場合、スポンサーへの仁義として、スポンサーのライバルが主催する大会は、絶対に受け入れてはいけないと思う。たとえどんなに金になるイベントだとしても。
 
 だから自治体の財政など、色々な事情があるのはわかるけれど、日本の場合は企業の宣伝がメインで(そもそもスカイマークスタジアムもそう)文化的な部分があまり感じらない部分があり、古きよき名前が消されるという懸念も考えると、ネーミングライツはあまり合わないと思っています。

画像№300で書いたいすみ鐵道、同じく№361で書いた平成筑豊鉄道なども一部の駅でネーミングライツを導入しましたが、あれは副称的なもので、元の駅名はそのままだし、JTBなどの公式の時刻表にはネーミングライツは記載されていません。
(門司港レトロ観光線は記載があるが)
 バス停に小さく会社名や商店名が併記されていたり、「次は○○~、××商店前でございます」というアナウンスと同レベルなのではないかと思っています。
 あとは航空、特に空港…。
 経営難が社会問題にもなっている地方空港だと、ネーミングライツをやりたい、と考えている所も、ひょっとしたらあるのかも知れません。
 ただ、1空港内でも利害関係がかなり複雑そうに思えるので、難しいでしょうかねぇ。
 さすがに海外にも例はないようだし。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

 フランス旅行記は2回お休みになってしまいました。
 次回は再開の予定です。

 さて、このチームのホーム球場「オークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアム」は10年間、マカフィーがネーミングライツを獲得していましたが、2年前に解消し、昔の名前に戻っているそうです。
 36歳はまだまだやれる年です。
 去年のワールドシリーズの時のような活躍を期待します。
《今日のニュースから》
松井秀喜 オークランド・アスレティックスと一年契約を締結