№380 プロフェッショナル・パイロット(杉江弘/イカロス出版)

 今日はフランス旅行記を1回お休みし、レビューを書いてみようと思います。
 レビューといってもこれまではバス関係を中心とした雑誌の感想文ばかりでしたが、今回は初めて本格的な書籍のレビューを書いてみます。
 今回の「プロフェッショナル・パイロット」は、日本航空(JAL)一筋でDC-8やB747の操縦を務められ、今はJ-AIRの最新鋭機E170の機長を務められている、杉江弘氏の執筆によるものです。
 著者は鉄道ファンとしてもつとに有名で、特に海外のSLの写真を数多く発表されておられます。
 手元にある書籍では「世界の駅」(三浦幹男氏と共著・JTBキャンブックス)があります。

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 『機長の告白-生還へのマニュアル』『機長の「失敗学」』(いずれも講談社刊)で、自らの体験も元にしながら航空業界の安全性の追求や、理想的なパイロット像について時には厳しい提言をされてきた著者だが、それらに比べると今回の著書はやや語り口がマイルドにも感じられる。
(イカロス出版という出版元もあるかも知れない)
 航空業界の現状や安全性の追求など、これまでの著書のおさらい的な内容から一歩進め、著者の新境地と呼べる、日本にも導入が進み、著者もライセンスを取得して乗務されているE170が、過去の航空機事故の教訓が各所に生かされていると高く評価している。
 そして、横風着陸のテクニックやダウンバースト等を例に取りながら、航空会社は安全運航に関するポリシーを確立せよと提言し、最後にパイロットの仕事の素晴らしさを説いて、パイロット志望の若者にエールを送っている。
 全体的には航空業界に関心を持つ人、パイロット志望の人、航空ファン向けに書かれているとは言えるだろう。

 だが、私はこれを読んでみて、ひょっとしたらこの著書を真っ先に読むべきなのは、実は昨今の「プロ」のジャーナリズムの方なのではないかと感じた。
 日本はアメリカに比べて航空大衆化の歴史が浅く、比較的最近まで富裕層が利用の中心だった事も反映しているのか、パイロットは単なる「高給取り」のイメージが未だに強く、ひがみみたいなものもあるのか、時としてその行動が面白おかしく取り上げられる事が多く、世論全体に未だに様々な誤解が広まっているのが現状だ。
 特に最近は地方空港の経営難やJALの経営破綻、LCCの台頭などでよりその傾向が強まってしまっている気がする。
 LCCブームなど、まるでいとも簡単に航空業界で成功できるようなイメージを与え(比較的操縦が「容易」になったハイテク機が中心になっている事もあるかも知れない)、その運賃の安さが安全性を削ったものではないのかという調査・報道がされた事は、ほとんどない。
 著者たち先人が苦労して築きあげてきた安全運航の確立への努力は無視され、大事故がおきてからようやく「実はああだった、こうだった事がわかった」などという記事が並べられるのだ。
 著者の弁によれば、安全運航は単にパイロット個人の知識や技量だけではなく、それを支えるべき航空会社のポリシーがあり、それを実現すべく安全運航に関わる組織を社内に立ち上げ、内部の広報も充実させなければならないという。
 そこまでの事が、LCCではやれているのだろうか。そして、そこまでジャーナリズムは踏み込んで書けているのだろうか。

 確かに昔のJALは1985年8月12日のジャンボ機墜落事故を頂点にして、それ以前にもDC-8の羽田沖墜落事故(「逆噴射」などとありがたくない流行語まで生まれた)など度々大事故を引き起こし、世論の怒りを買ってきた事は事実だ。
 しかし、杉江氏らが先頭に立って安全運航を推進する立場となってから、四半世紀の間JAL(に限らず日本の民間航空)で旅客死亡事故は発生せず、しかも経営の混乱が表面化した2009年にあってなお、定時到着率世界ナンバー1のタイトルを獲得している事を、世の人々は知るべきだ。
 そんなの当たり前、の話ではあるけれど、この著書を読めば、それは決して簡単な道ではない事が解かるし、揺るぎない杉江氏の信念に感服させられるのだ。

 一つ惜しまれるのは、上で少し挙げたが、JALの経営問題について触れられていない事。
 著者が、所属する会社の経営難に遠慮した物言いをするような方ではないと思うので。
「健全な経営が安全運航を支える」というのは一般的に言える事だし、最近問題になっている「整理解雇」もそうだが、基礎の部分で組織が揺らいで、モラルが低下してしまうと大惨事を招きやすいのは、なにも航空業界に限った事ではなく、過去にいくらでも例がある話だ。
国鉄の末期に相次いだ寝台特急の事故が典型的だった)
 そこまで踏み込んで頂ければと思った。

 もう一つ、今後著者にお願いしたいのは、過去の航空機事故のデータベース化。 
 航空機事故は残念ながらいまだ根絶されておらず、それらの個々の事例に付随して様々な著書やWebサイトの記事が存在するが、ほとんどが叙述的な記述に留まっている。
 時には知ったかぶりのジャーナリズムによって歪められて認知され、安全運航の確立には実は役に立たないものも少なくないようだ。
 5W1Hにのっとって簡潔かつ正確に過去の航空機事故の情報を整理し、私たちに伝えて欲しい。
 それもまた、安全運航の礎となるだろう。

 著者によれば、ファーストクラスのある便は、他の便とはフライトの仕方が違うのだという。
 極めて高い運賃を払って搭乗している旅客に対する、高級レストランのような流れるサービスを、不器用なフライトで遮ってはいけないというのだ。
(ちなみに著者が考える、JALのパイロットの総合力が一番問われるフライトは、ファーストクラスがある香港路線なのだそうだ。もっとも現在の香港路線はファーストクラスの設定はないのだが…)
 もし著者の言葉が正しいのなら、ファーストクラスどころか乗客を立たせたまま飛ばそう、そして副操縦士もなくしてしまおうと社長自らが叫ぶエアラインの存在を、どう考えれば良いのだろう。
 そして、彼らを「航空業界の風雲児」と褒めちぎるジャーナリズムのあり方は、どうなのだろうか。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

《今日のニュースから》
ノーベル化学賞授賞式 鈴木・根岸両氏に授与

№379 乗り物中心のフランス旅行記 5

 今日はパリ市内を回った時の事を書きますが、何でもパリは昨日は雪で、交通網がマヒし、エッフェル塔は午後は入場を中止にしたのだとか。
 大都市が雪に弱いとは、どこの国も同じようです。

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10月30日(土)

 今日は一日パリ市内に留まる。色々行きたい所、やりたい事もあるけれど、何より今日・明日の宿を確保しなければならない。市中の北の方に「クリシー」YHがあるので、地下鉄を乗り継いで向かう。気づかぬうちにEURがもうない事に気づいたが、幸い地下鉄の券売機は、1日乗車券(3ゾーン内まで有効・9EUR)もクレジットカードで購入できる。日本の市内交通も、一般の乗車券もクレジットカードで対応できるような体制を整えるべきではないだろうか。
 幸い宿は確保できた。午前中はパリ市内にあるSNCFの6大ターミナルの内、3ヶ所を訪ねる。しかし意地悪くかなりの雨になってきた。リヨン駅では屋根を覆うドームから雨漏りもした。コンコースがごった返しているのは昨日と同じ。TGVデュプレクスが何本も待機している。駅舎はとにもかくにも荘厳。東京駅の赤レンガなど、シンプルに見える。

 一方、セーヌ川を隔ててすぐ向かいにあるオーステルリッツ駅は、リヨンと比べると小ぶり。TGVの発着もないし、多少寂れた感もなくはない。ただし構内は改良工事中だ。

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トゥールーズ行「コラーユ・テオス」

 ちょうどトゥールーズ行きの長距離列車「コラーユ・テオス」が出発していく。客車を13両つないでいたが、そういえばフランスでは、一般の客車列車でこれほどの長編成は、ここまで見ていない気がする。
 オーステルリッツ駅で、急速に青空が広がってきた。雨雲は、急速にパリから去っていくようだ。

 もう一箇所、モンパルナスは他のターミナルとは全く異なり、斬新な駅ビルに建て替えられている。ホームのほぼ全体が人工地盤で覆われているのも、他のターミナルにはない特色。構内の中央部からは近郊列車が出発。その両側が長距離路線で、TGV大西洋線が発着する。
 この駅の真上を、バストゥール通りが交差するが、地上に出るとエッフェル塔が聳え立つのがはっきり見える。
 狙って通りを造ったのだろうか。

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モンパルナスからのエッフェル塔

(パリの6大ターミナル(サン・ラザール、ノール、エスト、リヨン、オーステルリッツ、モンパルナス)については、旅行記の連載の終了後に、他の3駅と共に画像をご覧頂きたいと思います)

「乗り物中心」と謳ったフランス旅行記だが、せっかくの異国の地、やはり少しは物見胡散もしたい。かなりミーハーではあるが、LRTを訪ねる前に、凱旋門に行って見よう。地下鉄の6号線でいける。

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パリの地下鉄

 パリの地下鉄にも高架線の区間はあり、特に6号線では、セーヌ川を渡る区間でエッフェル塔をも見ることができる。遠目にもエッフェル塔の展望台は観光客があふれているように見えた。

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セーヌ川とエッフェル塔

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凱旋門

 凱旋門は晴になった。さすがに凱旋門が建つサークルの内も外も、観光客でいっぱいだ。日本人の姿が目立つのは言うまでもない。この門を巡る道路はだだっ広いロータリーになっているが、信号がある訳ではないし、何より車があまりに多くて、運転する立場としては大変な場所だろうと思う。
 凱旋門も上部は展望台になっていて、人が一杯だ。本当だったら金を払っても入場して良かったのだけれど、地下通路の行列が長く、この後のLRTの事を考えてあきらめる。

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ラ・ディフェンス

 凱旋門からは、シャンゼリゼ通りと対を成すようにしてシャルル・ド・ゴール通りが延びる。その向こうにはラ・ディファンスの新都心。中心部では見られない近代的な高層ビルが並んでいる。中央に見えるのが「新凱旋門(グラン・ダルシュ)」。1989年にはサミット(先進国首脳会議)が開催された所だ。

 午後はLRTを訪ねよう。T2系統は、そのラ・ディファンスから出発するので、RERのA線で移動。

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パリLRT T2
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パリLRT T2車内
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パリLRT T2 ラ・ディファンス

 ラ・ディファンスはRERと同じレベルの地下に発着する。電車は御馴染み「シタディス」だが、なんともユニークな正面の形状。カモノハシを連想させる。5車体を2ユニット連結していて、下部のカバーには連結器が収納されている。

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パリLRT T2すれ違い

 この路線は以前の第3軌条式の郊外鉄道をLRTに転用したという事。富山ライトレールに似ているが、はるかに規模が大きい。いくつかの駅には昔の駅舎がそのまま残されている。

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パリLRT T2レ・コトー駅
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パリLRT T2レ・コトー駅旧駅舎
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レ・コトー駅からのエッフェル塔

 レ・コトー駅もその一つで、線路上の橋上駅舎が残されている。ただし、本来の駅としてはもはや機能していない。中にはイスやテーブルがあるようだが、何に使われているのだろうか。この跨線橋からもエッフェル塔が見える。こうして見るとエッフェル塔は、本当にパリのランドマークとして機能しているんだなあと思わされる。
(残念ながら今の東京タワーはこうはいかない。だから東京スカイツリーがまだ工事中の段階で大人気なのかなあとか思ったりもした)

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パリLRT T2 電停上屋

 電停自体は基本的にどこも同じデザインで統一されている。美的センスはさすがだし、一方で停留所名がはっきり大きく書かれていることも好感が持てた。上屋自体は日本と比べて小さい。

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パリLRT T2ポルト・デ・ヴェルサイユ

 T2系統の終点はポルト・デ・ヴェルサイユ。以前はRER・C線に接続するイシー・ヴァル・ドゥ・セーヌが終点だったが、最近延伸されたらしい。延伸区間は芝生軌道だ。
 ここでT3系統と接続するが、直接はつながっておらず、横断歩道で車道を渡る必要がある。これは惜しい。もう一声でT3系統のホームまで延伸できれば、乗り換えもさらに便利になっただろう。
 ここには見本市会場「Paris-Expo」があり、何か催し物が行われているようで、一帯は多くの行楽客で賑わう。

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パリLRT T3
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パリLRT T3車内

 T3系統の電車もやはり「シタディス」だが、T2とは共用ではなく、7連接で正面スタイルは鋭角的。

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パリLRT T3ポン・デュ・ガリアーノ
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パリLRT T3スタット・シャルレティ
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パリLRT T3ポルト・ディタリー
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パリLRT T3ポルト・ディヴリー

 T3系統はポン・デュ・ガリアーノとポルト・ディヴリーを結ぶ系統で、バスと共に外環状線の一翼を担う。こちらは純粋なLRTらしく、両側を道路に挟まれた芝生軌道を行く。単に車を締め出しているだけでなく、きちんと電車の走行路を確保できている所が、日本から見ると確かにうらやましい。
 もっともパリともなるとさすがに車の数も多く、たまに交差点で目の前をマイカーが列を成していて電車が立ち往生、しつこくカンカン警笛が鳴らされる、といった場面もあるにはあった。
 この路線の場合、ホームを上下でずらして設けられている停留所が多いようだ。幅を確保するためだろうか。

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スタット・シャルレティ

 この路線には多少規模が小さいサッカースタジアム「スタット・シャルレティ」がある。パリFC(3部に相当するフランス全国選手権リーグ所属)のホーム。

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地下鉄入口

 ポルト・デ・ヴェルサイユは地下鉄12号線の接続駅でもある。その入口。ここに限らないが、パリの地下鉄の入口はほとんどがクラシカルな装いで味わいがある。ただ、周りの建物もクラシカルなものがほとんどなので、逆に目立たなく感じられるかも知れない。

 さて、いつもはこんな事はしないのだが、今日は少々夜更かしして、エッフェル塔に行って見ようと思う。
 なぜなら…。

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「クリシー」YHに張り出されていた、サマータイム終了の告知

 今日は10月最終土曜日で、サマータイムが終了する日なのである。
(正確には日付が変わった日曜の深夜に終了)
 つまり、1時間夜が長くなる事になる。なので、少しぐらい夜更かししても大丈夫だろうと、この機会にエッフェル塔を訪れてみようと思ったのである。

 
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夜のエッフェル塔

 夜のエッフェル塔はライトアップされ、さらに毎正時にはチカチカ明かりが点滅する。それにしても自分と同じような事を考えている人々は多いようで、展望台への入場券の発売窓口は45分待ちだった。行列の途中にはボディチェックがあるのでそのつもりで。入場料17.1EUR(クレジットカードは不可)。
 展望台は3ヶ所にあり、中間の展望台でエレベーターを乗り換えて、最上部の展望台に行く事になる。

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夜のセーヌ川
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夜のジャック・リュエフ広場
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夜のシャイヨー宮

 結局トップの展望台に着いたのは、行列に並び始めてからちょうど1時間後。確かに夜景は美しいが、はっきりした町並みや郊外のディティールはわからないから、その点は今一つかもしれない。やはり高い所は昼間来た方が楽しいようにも思えた。グループの人々だったら、お互いに写真を撮りあったり、おしゃべりをしたりと楽しいひと時になるのだろうが。

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ギュスターヴ・エッフェルの展示

 この展望台の一角に、設計者ギュスターヴ・エッフェルの簡単な展示がある。奥に見える絵の上は鉄道が走るガラビ橋。この橋を、この後列車で通過する予定になっているのだが…。

 行き止まりの高い塔で行きが渋滞、という事は帰りも渋滞、という事になる。それで第2展望台からは階段を歩いて降りてみた。10分はかからなかったが、思った以上に足に来るものだ。広場が近づくと、勇ましい歌声が聞こえてくる。例の抗議行動に参加する、労働組合あたりの集団だろうか。

 YHに帰ってきたのは23時30分位で、床に就いたのはもう日付が変わる頃だった。珍しい事だ。明日はノール駅からアミアン経由でリール方面を目指す事にする。寝る前に、時計を1時間遅らせておく。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

《今日のニュースから》
日本ハム斉藤祐樹投手 ファン公開の入団会見

№378 乗り物中心のフランス旅行記 4

 フランス旅行記、続けます。

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10月29日(金)
 最初の予定では午前中はグルノーブルのLRTに乗り、午後は在来線の列車をディジョンで乗り継いでパリへ戻る予定だった。
 ところが、YHを引き払って駅に戻ってみると、SNCFは今日も一部運休が発生している。予定していたディジョンへの列車は運行されるようだったが、なんとなくディジョンを経由するのは危険な気がしてきた。
 そこで、16時05分にパリ行のTGVがあるので、これでパリまで直行で戻るプランに変更、指定券を入手する。今回は18EURだった。一昨日の3EURとの差がどこから来るのかはわからないが。
 それにしてもこの駅にはロッカーの類が全くない。ド田舎の無人駅ではあるまいし、困ったものだ。このため、一旦LRTとバスを乗り継いでYHに戻り、バッグを預かってくれるよう頼む羽目になってしまった。

 まずLRTの車両から。

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グルノーブルLRT 2000形
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グルノーブルLRT 2000形車内

 1987年にLRTが導入されたグルノーブルでは、部分的ながら超低床車が採用され、後の各都市のLRTに大きな影響を与える事になる。デザインもシンプルだが美しい。

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グルノーブルLRT 6000形
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グルノーブルLRT 6000形車内

 その後の路線延伸時には、おなじみの「シタディス」が導入される事になった。面白い事に7車体連接で、都市圏の規模では上回るリヨン(5車体連接)より輸送力が大きい。メトロやトロリーバスも発達したリヨンと、LRTが主役のグルノーブルという違いがあるだろう。

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グルノーブルLRT ALine ドニ・パパン
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グルノーブルLRT ALine マリー・キュリー
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グルノーブルLRT ALineすれ違い
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グルノーブルLRT A・BLine アルザス・ロレーヌ
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グルノーブルLRT A・BLine グルノーブル駅前
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グルノーブルLRT ALine フォンテーヌ・ラ・ポヤ

 グルノーブルで時間のゆとりができたが、やはりLRT4路線全線を乗るのは無理だろう。そろそろ市内バスにも乗りたいし。とりあえずドニ・パパン~フォンテーヌ・ラ・ポヤ間のALineを乗り通してみる。初代2000形は運転室の仕切りがガラス張りになっていて、すぐ後に席があるので絶好の展望席だ。郊外部では加速がいいし、優先信号なのか信号待ちがなく、ストレスなく走れる感じ。しかし、中心部に入るとちょっと走りづらくなってきた感じ。道が狭いのに車が意外に多いし、当然人も多い。建物は皆クラシカルだ。
 SNCF駅の広場から地下線でSNCFをくぐると、電停設置のスペースがなくて、歩道をそのまま電停に利用しているような所も現れる。アルザス・ロレーヌ付近と比べると庶民的な感じ。
 終点が近づくと芝生軌道になり、フォンテーヌ・ラ・ポヤは岩山が迫ってきている。この付近も住宅地なのだろうか。昨日から感じている事だが、グルノーブルは思いの他車が多い。幹線道路が交わり、大型トラックも頻繁に行きかう。もう少しひなびたイメージを抱いていたのだが。
(でも人口は約47万人という事で、これは同じ冬季オリンピック開催都市の長野市(約38万人)より多い)

 電車ばかりでなく、たまにはバスもという事で、数ある系統から55系統をチョイス。

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グルノーブル バス サッスナージュ・マラディエール
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グルノーブル バス セイシネ・パリセ・ヴィラージュ

 起点のサッスナージュ・マラディエールはバスの車庫になっていて、回送車も頻繁に出入りする。55系統は平日は20分、土曜日は30~40分に1本、休日は60分毎だ。車両はHeuliez製で、23・30系統と共通の専用車らしい。
 住宅地の中をあまりスピードを出さず - というかスピードを出せないような仕掛けが道路には施されている - 走るが、乗り降りが全然ない。途中短区間女性2人組が乗っただけ。
 ベルヴェデールを過ぎて市街地と別れ、カーブが連続する急勾配にかかる。それでも沿道にはこじんまりした住宅が山腹にへばりつくように並んでいる。しかし、終点付近はほとんど何もない。木々に囲まれた高台にあり、見通しは良くないものの、木陰に入るとひんやりした感じがしてほっとする。下界は少し暑いなとも感じていたから。行きかう車もさすがにほとんどなく、静かなフランスの田舎の風情が感じられた。

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グルノーブルLRT 電停上屋

 一部例外もあるが、グルノーブルの場合も他の都市同様、対外電停の上屋のデザインが統一されていて機能的。JCドーコー(最近日本で数多く見かけるMCドーコーの親会社)の大型の広告も設けられている。それにしてもバックの山が美しい…。

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グルノーブルLRT CLine セイサン・ル・プリズム

 CLineの終点セイサン・ル・プリズムは、人家はそれ程多くないとは思うが、ここでパーク&ライドを行っている。バス路線もいくつか集まってきているようだ。

 煮え切らない部分も多少あったけれど、YHに預けていたバッグを引き取り、グルノーブルを後にパリへ戻ろう。

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グルノーブル駅
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TGVデュプレクス
 16時05分発TGV6920は、ダブルデッカー「デュプレクス」を2編成併結。あまりに長くて先頭の機関車はホームからはみ出している。(なので画像は後姿です)客車はパリ方から8→1号車と来て、後部の編成が18→11号車と、日本人の目からは変則的なつけ方をしている。

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TGVデュプレクス1等車

 指定された2号車の31番は1階席だった。インテリアは一昨日の東ヨーロッパ線と比べると、紫をベースとしていて、むしろおとなしく感じられる。荷物棚がやはり少し窮屈だろうか。車内のあちらこちらに荷物棚が設けられている。

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グルノーブル発車前
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在来線の農村地帯

 リヨンまでは昨日も乗った、カーブが多い在来線だが、110㎞/hは出ているようだ。山がだんだん遠ざかっていく。複線なのだが、リヨンまでにすれ違ったのは3本。一方で通過駅のホームは待ち人が多いようだ。間引きで待たされているのだろうか。

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リヨン・サンテグジュペリ駅

 リヨンは市内中心部ではなく、空港に隣接するサン-テグジュペリ駅に到着する。屋根が高くて明るいが、寒い…。
 いよいよ本格的な高速新線に入り、グングン加速する。

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高速道路

 しばらくは高速道路と併走するが、マイカーやトラックなど問題にせず、次々に追い抜いていく。全体的には農村地帯が続き、日本の新幹線と違って沿線の人口は少なさそうだ。丘陵地帯にかかり、高速鉄道としては急勾配が連続するようになる。1階席だが車窓は充分に楽しめる。これは簡素な柵のおかげ。一部にははっきりとした防音壁もあるが、この点も日本の新幹線とはかなり異なる。

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 TGVには本格的な食堂車はないが、2階にBARがある。昼食夕食のつもりで、フランスらしく?クロックムッシュー+サラダ+ソフトドリンクのセットが10.9EUR+フルーツサラダ2.1EUR。
(デュプレクスのバーのメニューについては後日ご覧頂きます)

 車内を少し回ってみた。2等席はブルーをベースにしたインテリアで、カジュアルなイメージ。客層もそんな感じだ。それにしても最近は日本もそうなのだろうが、1等も2等もノートパソコンを広げる乗客が多い。もちろん仕事という人も多いし、DVDを見ている客も多いみたいだ。
 通り抜けは2階部を利用。1階部は全て行き止まりになっている。
(小田急のRSEと似ている)

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夕暮れ
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パリ・リヨン到着

 パリまではもうノンストップ。しばらくうたた寝している間に、陽はとっぷり暮れて、西の空の雲がオレンジ色に染まっている。いくつかトンネルを抜けたようだったが、その先で急に街明かりが増えてきて、パリが近い事を感じさせる。

 パリ・リヨン駅はほぼ定刻の到着だった。グルノーブルからは約3時間。ホームが端の方で、母屋までは結構歩かされた。その母屋のコンコースはすごい人だかり。これもまた、間引きの影響なのか?

 今日のお宿はレピュブリック広場のそばの「ジュール・フェリー」YH。通りに連なるタウンハウスの一角にあるという、YHとしては珍しいロケーションかもしれない。多少狭いかも。本当はここで3連泊したかったのだが、この晩は空きがあるものの、明日と明後日は満室だという。とりあえず今晩はここに投宿。
 コモンスペースには古い鉄道のポスターがいくつも飾られているのが興味深い。

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「ジュール・フェリー」YH コモンスペースのポスター

 明日は丸々一日パリ滞在。ターミナル駅を訪れ、LRTに乗り、少しは物見胡散もしたいなと思う。でもその前に明日・明後日の宿を何とかしないと…。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
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《今日のニュースから》
金星探査機「あかつき」 予定軌道への投入に失敗