№351 バスジャパン・ハンドブックシリーズR71 京阪バス(星雲社)

 本題に入る前に少しだけ航空について。
 ご存知の通り、今月6日福岡航空交通管制部が、職場体験実習で来ていた中学生2人に、福岡空港に着陸しようとしていた旅客機2機との更新をさせていた事が明らかになりました。
 上司の口止め工作もあったとか。
 今年初めの№156で、管制官が息子に旅客機との交信をさせていたJFK空港の不祥事について書きましたが、似たような事が日本でも起きてしまった訳です。
 こういうの、困るなぁ。
 どの交通でも「安全」の2文字を口やかましくいうけれど、それを守る最大の要素は、職場内の「モラル」だと思っているので、もう少し現場の人間が意識を高めてやって欲しいと思います。

画像

 気を取り直して(?)本題の「バスジャパン・ハンドブックシリーズR」21巻目は京阪バス。
 このシリーズでは17年前の「バスジャパン・ハンドブックシリーズ17」以来になります。
 普通でも17年経てば大きく様変わりしますが、特に京阪グループの場合は京阪国際観光自動車の廃業、一方で(旧)京都交通の南部エリアの引継ぎなどがあり、京阪バス自体も再編が繰り返されて、昨今の大都市圏の大手事業者としては大きな変化が見られる所です。
 京阪バスについては既に№266で取り上げた「バスラマ・インターナショナル120」で特集されたばかりで、被る部分もあるかと思いますが、改めて取り上げてみます。

◆ 水辺と木陰で涼む夏の京都
 17年前はフリーライターによる定期観光バス3コース乗り比べだったので、一般路線バスの乗り継ぎによる周遊は初めて。
 クラッセブックス編集長富田康裕による、京阪バスエリアの京都駅~一休寺~「木津川流れ橋」~寺田屋~醍醐寺~琵琶湖疎水~比叡山~京都駅と巡るコースを2日間(7月24日~25日)にかけて訪れるというもの。
 大阪(成田山などがある)や大津にもエリアが広がる中、あえて京都に絞って廻ったようで、それでいて中心部の町有名な観光地ははずして廻っている …京阪バスの京都市内中心部の一般路線が少ない事もあるが… のですが、探せば名所・名刹はいくらでもあるものです。
 やっぱり酒が出てくるのですが、「黄桜」は納得。
 昔、「ヤッパッパ~ラッパッパ~、キ~ザクラ~」ってCMソングがあったものです。
 比叡山からの帰りは、バスだと行きと同じルートになるので、一般だとケーブルカーで坂本へ降りて、京阪電車を乗り継いで帰るという方法も、変化がついていいかも知れません。

◆ 終点の構図 原
 京阪京都交通の終点で、京都市右京区といっても飛び地に近い感じです。
 バス便は平日・土休日とも日中のみ乗り入れるようです。
 八木町の神吉地域を経由してくるようですが、ルートが多少変則的のよう。

◆ 京阪バス(京阪シティバス・京阪宇治バス)・京阪京都交通の路線エリア
 京阪バスのメインのエリアは、京阪本線とJR学研都市線(片町線)にはさまれたあたり。
 例外もありますが、淀川の左岸。
 大阪エリアでは、淀川を渡る系統は少ないようです。
 後は京都市の東部と大津市。
 地図に琵琶湖だけでなく、淀川も書き加えられていれば解かり易くなったと思います。
 全体的なエリアは17年前とあまり変わっていないようですが、宇治・田辺~大津の間は、京都・滋賀の府県境で分断されてしまいました。
 17年前に「終点の構図」として取り上げられた、京阪宇治交通の茶屋村への路線も、廃止になってしまったようです。
 奈良への長距離路線もなくなりました。
(もっとも末期は1ヶ月に1本程度だったそうだからあまり意味はなかったが)
 京阪京都交通は1路線が兵庫県の福住に乗り入れています。
 しかし地図を見た感じでは、北部のかなり奥の方にも路線が伸びているのですが、公式HPには出てきていません。
(「美山ネイチャー号」らしい。一般の路線バスではない)
 ハンドブックシリーズRになってから、営業所以外の地名が一切省略されてしまっているのですが、郊外位は駅名や終点の地名の記載が欲しいと思います。

◆ 京阪バスのあゆみ
 京阪電鉄が鉄道の培養を目的として地元のバス会社を買収したのが始まりのようで、京阪電鉄自体がバス事業を手がけた事はないようです。
 本当は京阪バス直系以外の京阪グループのバス(京都バス・江若交通など)も歴史に絡んでくるようですが、かなり複雑です。

画像

 京阪宇治交サービスは京阪宇治交通の分社といえ、後に京阪宇治交バスになりますが、本体が京阪バスに合併され、分社が残ったわけです。
 中書島~立命館大学BKC線が京阪京都交通の運行というのは、通常のエリアから大きく離れた路線なのですが、安定して収入が得られる路線を与えたいという事なのでしょう。
 新体制になったとはいえ、ローカル線が多く苦しい経営が続く事自体は変わらないはずですから。
 写真では、京阪資本になる前の(旧)京都交通の写真が2枚。
 1枚はNSKの「かまぼこ」だ…。

◆ 車両の現況
1. 貸切・高速を除いた一般路線車(コミュニティは含む)の傾向を分析してみます。
 グループ全体の一般路線車の平均車齢は7.30年。
 ただし、事業者や地域によってかなりの差が見られます。
 大阪府内6営業所(大阪エリア)では5.47年。
 京都の男山・京田辺(京阪宇治交通)両営業所と京阪シティの合計では5.64年。
 ところが同じ京阪バスでも山科・大津の合計は8.44年。
 京阪宇治バスは9.92年、京阪京都交通は12.18年でした。
 大阪の場合はNOx規制があり、男山・京田辺〔営〕も大阪府内(枚方市樟葉)への乗り入れがあるため、車齢が若くなっているのでしょう。
 京阪バス大阪エリアの場合、21世紀以降投入の車両が90%近くに達しています。
 最高齢は1998年が交野〔営〕に1台いるだけ。

 一方、山科・大津は1990年代の車両が5割を超えています。
 登録番号から推定して、大阪エリアから経年車が大量に転属してきている事が伺えます。
 京阪京都交通に至っては、1990年代の車両が7割以上です。
 京阪バスが一般路線車全体の58%あります。
(旧)京都交通の破綻時点の車両の傾向が不明なのではっきりは言えませんが、やはり大阪エリアで使用していた車両を移籍させる事で、体質改善を図る、という方向性が推測できます。

2. ノンステップ車はどうでしょうか。
 京阪バスは39.5%と意外に低い気がします。
 特に大阪エリアの寝屋川〔営〕が27.5%、枚方〔営〕が33.3%と意外に低いのが目につきます。
 割合が高いのが香里団地〔営〕62.5%、枚方〔営〕57.5%でしょうか。
 一方、山科・大津両営業所は共に5%に届きません。
 京阪宇治バスは32.9%、京阪シティバスは18.2%、京阪京都交通に至っては10.7%に留まっています。
 車両面では、最近になってブルーリボンシティⅡの導入が相次いでいますが、それ以前のノンステップ車は全て中小型、あるいは中型系です。
 
3. ここからは貸切車・高速車も含みます。
 NSKボディは関西の大手事業者としては珍しく、非常に少ない。
 全体で5台しかなく、京阪バス本体は京阪宇治交通から引き継がれた特定車1台のみ。

画像

 京阪京都交通の2台はいずれも(旧)京都交通から引き継がれた、神戸市営バス。
 なお、後述のエアロキングも含め、17年前の「ハンドブックシリーズ」に記載された車両が、今も若干生き残っているようです。
 京阪バスの外への移動だと、社番が変わるので追跡が難しくなるのですが…。
 定期観光専用車が17年前には67両もあったものが(大津・山科などにも配置があった)、11両に激減してしまいました。

 以下は京阪バスそのものについての感想になります。
 大阪エリアの経年車を京都・滋賀に転用するという傾向は今後も続くでしょうが、NOx規制がないとはいえ、古都京都をも基盤にする上は(「京都議定書」が採択された地でもあるし)、京都エリアでも積極的な新車両の導入を期待したい所。
 上では一般路線バスのデータのみ取り上げましたが、事業の主力の一つである定期観光バスも、専用車となると小型車1台を除いて全車両1990年代の導入と、経年化が進んできているようです。
(貸切登録の新セレガの運用も見られるが)
 1993年式エアロキングの後継をどうする?という直近の問題もありますが、セレガ・ハイブリッドなんて選択も期待したいと思います。
 それ以前に、定期観光バス事業そのもののテコ入れも望まれる所でしょう。

 
 次回刊は富士急行が予告されました。
 グループ7社とは、富士急行観光、フジエクスプレス、富士急山梨バス、富士急平和観光、富士急湘南バス、富士急シティバス、富士急静岡バスでしょう。
 他誌の富士急行特集の時にも再三書いていますが、最近の富士急行は電車・バスとも非常にアクティブな動きが目立ちますから、データ的な面でも大いに期待したい所です。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

《今日のニュースから》
阿久根市長リコール運動 12月5日に住民投票実施