№266 バスラマインターナショナル120(ぽると出版)

 バスラマ・インターナショナルは1990年8月25日に創刊。
 九段書房で「モータービーグル」の執筆をしていた和田由貴夫氏らが立ち上げた、初の本格的なバスの雑誌で、現在に到るまで隔月刊で刊行されてきました。
 そして、先月発売された120号が、創刊120周年の記念号となりました。
 創刊号、いやモータービーグル時代からの読者として、心よりおめでとうございますと申し上げたいと思います。
 表紙は初めてという夜間の表紙撮影で、京阪のレインボーⅡ。
(後で本文にも出てくるが、東急バスの淡島〔営〕でリハーサルしたそうです。)
 フロントの行先表示部に「バスラマ20周年!」の文字が。
 この手の、行先表示部のLEDを利用したメッセージ表示は最近のバスのイベントの定番ですが、LED表示自体、20年前にはなかったものです。

◆各地の新車から 1990
 これは意表を突かれました!
 完全なお遊び。
 創刊号にはこういうページはなく、つまりは創刊号当時の各事業者の新車のカラー写真を並べて、現在の「各地の新車から」と同じスタイルで並べて紹介のテキストを添えているわけです。
 英文で赤く
"We introduce to you the vehicles that were new back in 1990 when Busrama first started publications"
と書かれていて、つまり「バスラマが創刊した1990年にさかのぼって、新車を紹介します。」と書かれています(と思います…)。
 当然20年も経てば車両も事業者も大きく異なってきていて、例えば京阪国際観光自動車は1998年6月に事業を廃止してしまいました。

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 例えばこれはこの後出てくる、京阪バスの系列の京阪国際観光自動車。
(本文ではエアロクィーンMVが掲げられていました)
 札幌市交通局や上毛電気鉄道もバス事業を廃止してしまいました。
 札幌市営はまだクリーム+赤の旧塗装の頃。
 この頃は既に浜松市や倉敷市の市営バスの廃止もありましたが、まさか政令指定都市の市営バスがなくなるなど、考えもしなかった。
 また、この当時は引き続き夜行高速バスブームで、10月に運行を開始した日本最長距離の<はかた>の写真が京王・西鉄の両方あります。
 京王は純正三菱エアロクィーンですが、まだ「パンダ」の時代。
 東武バス(当時は東武鉄道)のP-LV314Lは、「超長期テスト」のモニター車の第1期でしたが、その後の東武バスの急激な路線縮小のあおりを受け、モニター車の中では一番早く、2000年10月に引退してしまいました。
 所属していた越谷〔営〕が朝日自動車に移管されたのがその理由でした。
 ニュージーランドに売却されたという事ですが、タイミングが合えば、国内にも移籍先があったのではないでしょうか。

◆各地の新車から
 こちらは純粋な今回の新車。
 中国バスがユニバースの高速車を入れましたか。
 後は網走バスのエアロクィーンもあるけれど、他は磐梯東都バスのローザボンネット以外は全部JBUS系。
 岐阜バスの<パピヨン>も撮って見たいとは思うけれど、現行のダイヤでは難しそう。
 昼行便、復活しないかなあ。

◆2010年型三菱ふそう大型バスデビュー
 「2010年型エアロスター」については、№236で書きました。
 後は標準装備のATがドライバーにどう評価されるかでしょう。
 ドライバー側にも意識改革が求められる時が来たようです。
 「2010年型エアロクィーン/エアロエース」については、リアオーバーハングやホイールベースの違いは正直言われてみてそうかなあという感じ。
 それより、左側オーバーハングのメッシュが最大の識別ポイントになります。
 後はエアロスターもエアロクィーン・エアロエースもUDトラックスにOEM供給される事になりますが、やはり何か両者を識別できるアイコンが欲しいです。いつもお願いしていることですが…。

◆第一線バスマン大いに語る
 30代~40代にして一線で活躍されている方々としても、現代の日本のバスの課題というのは、だいたい常日頃から指摘されている事柄とそうは変わらないかな…。
 どこも高速バスが稼ぎ頭なので、高速道路の料金の問題はかなり頭が痛そう。
 気になったのは車両そのものに関する話が全く出てこなかった事で、№143で書いたように、神奈川県下では乗客が多いためか(かなり地下鉄に逸走しているそうだが)ノンステップ車の割合が低くなっている東急バスとか、あるいは系列のボディメーカーが消滅する西鉄あたりは、次期の新車両がかなり問題ではないかという気がしますが…。
 低公害車の話(車両そのものもそうだし、インフラ整備や補助の問題も)も出なかったし。

◆バスラマの中国訪問 上海2010
 上海には行ったことがないし(広州はあるのですが)、ましてバス事情は全然わかりませんが、写真で見るバス群はかなり中国離れした、洗練されたスタイルのように感じられました。
「スーパーキャパシタバス」の集電装置が、<のぞみ>運用時の500系と同じように思えたのは私だけではないでしょう。
 トロリーバスの架線維持費が路面電車の2倍になるのは、電流をレールに返せる電車と違って、別に架線を用意して電流を返さなければならないからです。

◆ バス事業者訪問136 京阪バスグループ
 12年振りに取り上げられましたが、本文にある通り、この間グループ全体で相当大きな変化があり、正直私も今ひとつわからない部分もありました。

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 これは2002年8月に撮影した京阪宇治交サービスのP-UA33L。
 京阪宇治交サービスは京阪宇治交バスですが、親会社(京阪宇治交通)が京阪バスに吸収されて、分社の方が残ったわけです。
 京阪京都交通は、発足の時点ではいすゞ車もありました。

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 2006年1月に京都駅前で撮影した、U-LV218K。
 元は神戸市営バスらしいですが、京阪バスカラーのキュービックとはインパクトがありました。
「直Q京都号」はセレガを入れているなんて、随分力が入っているものです。
 これ位の距離だったら、通常は深夜急行と共用のワン・ロマ車(東急バスの新横浜~溝口線みたいな)とか、せいぜい西鉄のような一般路線バスベースの低廉車を使う所でしょう。
 あとは京都競馬・びわこ大津競輪の輸送が馬鹿にならないと思われるので、その辺にも触れられれば良かったと思います。
 
◆ 世界の都市の公共交通 その17
 アムステルダムのGVB。
 車両そのものではなく、運賃収受のあり方や、経営体制の方にテキストの大半が割かれています。
 ヨーロッパで主流だった信用乗車制度は、日本で路面電車・LRTのあり方が論議される時には、たいてい日本の方式と比較して優位と説かれています。
(長編成でもワンマン運転ができるようになるので)
 しかし、一時不正乗車率が25%(4分の1)もなったというのでは、経営上無視できないでしょう。
 ICカードの入手の仕方については私も№88で書かせていただきましたが、アムステルダムでも似たような問題があるようです。

◆ その他
 ズーラシアの園内循環バスはBLCハイブリッドがベースですか。
 変則的ですが、相鉄バスでは初の低公害車となります。
「横浜230あ200」という希望ナンバーはどこから来ているのだろう?

 ところでちょっと気になる事として、6月一杯を持って<シリウス>の運行から撤退した南部バスが、ウィラートラベルの「高速ツアーバス」に参加するとの事。
 裏表紙の折り返しの広告と国内ニュースの小記事にあっただけなので実態はよく解りませんが、既存の高速バス事業者(しかもNBA会員)が「高速ツアーバス」に乗り換えるというのは、ひょっとしたらかなりの一大事ではありませんか?
 続報が待たれる所です。

 それにしても№109で書いた「バス趣味の広がり」、結構バスラマ誌上でも話題になっているようでした。

 次号の事業者訪問は大分バス。
 あれ、この前やったばかりだと思いましたが…。
 あとはそろそろJBUSのポスト新長期規制適合モデルが発表になるだろうから、紹介記事も載ったりするでしょうか。

 最後に20周年の「バスラマ」に、生意気ながらいくつか要望を。

1. 中小事業者の生の声が欲しい。
 今号の座談会にしても、バス事業者訪問にしても、アンケートにしても皆大手事業者が相手で、じゃあ地方の中小は、例えばノンステップバスのあり方はどう考えているのだろう、法制度や補助の問題はどうして欲しいのだろうという考えみたいなものが今一つ見えない気がします。
 事業者側の都合もあるのだろうと思いますが、バスに求められるのは大手も中小も変わりないはずだから、是非彼らの声をすくう機会も欲しいです。
 趣味的にも地方は面白い車両が多そうですし。

2. 批判だけではなく、具体的な改善案の提示を。
 例えばバスターミナルの案内表示のあり方でも、既存の表示についての批判が多く書かれています。
 確かに私自身、もう少し何とかなりませんか?と思う部分は多々あります。
(特に西鉄バスの天神。一般路線バスの統一ターミナルがないのと、大半の系統にとって一通過地点なのでかなり広範囲に同じ「天神」のバス停が散らばってしまっている)
 ただ、では具体的にどう記載すればいいの?と問うと、実はその回答が全く記されていません。
 どこかモデルになる場所を探して、具体的な提案があればいいと思っています。

 それと、現状のノンステップバスに対する不満から来ているのか、最近メーカーサイドの生の声もほとんど聞こえなくなっている気がします。
 以前は座談会もやったりしていたのですが…。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。(名前は公表しません。)



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