№144 私鉄の車両シリーズ11 函館市交通局8000形

「私鉄の車両シリーズ」、今回は路面電車で、函館市電8000形です。
 函館市や前々回の東京都は公営なので、本当は「私鉄」ではないのですが、公営交通もまとめて扱う事にします。
 何度か参考文献としている「私鉄の車両」シリーズ(保育社・現在はネコ・パブリッシングによって復刻)も、第16号は「大阪市交通局」ですから…。

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 函館市交通局(函館市電)8000形は、800形の車体更新車として、1990年~1997年にかけて8両が製作されました。

 母体となった800形は1962年~1965年にかけて12両が新潟鉄工所で新造されました。
 710形とほぼ同型ですが、制御装置は間接非自動制御となり、側窓は上部が固定、初期の10両は前扉が1枚になるという違いがあります。

 新しいボディはアルナ工機製作で、当時各地の路面電車で導入が試みられていた軽快電車に似たタイプとなりました。
 前扉は折戸となり、側窓は上段下降・下段上昇の2段窓。
 正面は大型1枚窓となり、行先方向幕は大型・自動化されて英文表記を併用するようになっています。
 この車体は後の新造車・2000形及び3000形の基礎となっています。
 500形・710形の更新車と同様の保安ブレーキと共に、落ち葉・積雪対策として新たに砂撒き装置が取り付けられ、保安度の向上が図られています。

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 寒冷地である事を考慮し、座席は暖色系を採用して温かみを感じさせるものになりました。
 乗降口ステップは3段となり、乗降性の改善を図っています。
 なお、冷房装置は現在に至るまで設けられていません。
 定員は800形の90名に対して80名に減少しています。

 現在まで710形に次ぐ勢力で、函館市電の主力として活躍しています。
 デビュー当時の1990年時点では、東雲線(松風町~宝来町間)・宮前線(函館駅前~ガス会社前~五稜郭公園前間)の路線もあり、次の4系統が運行されていました。

1系統 駒場車庫~松風町~宝来町~末広町(東雲線経由)
2系統 湯の川~松風町~函館駅前~谷地頭
3系統 駒場車庫前~ガス会社前~函館駅前~函館どっく前(宮前線経由・通称「ガス会社回り」)
5系統 湯の川~松風町~函館駅前~末広町 

 しかし、東雲線は1992年、宮前線も1993年に相次いで廃線となり、現在は2系統(湯の川~函館駅前~谷地頭)・5系統(湯の川~函館駅前~函館どっく前)で運行されています。

〔新旧対応〕
803 → 8001 (1990年3月)
808 → 8002 (1990年12月)
804 → 8003 (1992年3月)
801 → 8004 (1993年1月)
802 → 8005 (1994年3月)
805 → 8006 (1995年3月)
806 → 8007 (1997年3月)
809 → 8008 (1997年3月)

 今回の記事は
「鉄道ピクトリアル1994年7月臨時増刊号 【特集】路面電車」(鉄道図書刊行会)
「日本の路面電車Ⅰ 現役路線編」(原口隆行・JTBキャンブックス)
「ローカル私鉄車輌20年 路面電車・中私鉄編」(寺田裕一・JTBキャンブックス) 等
を参考にさせて頂きました。

 次回のこのシリーズは津軽海峡を渡って、当シリーズ初のディーゼルカー。
 2001年に廃止になった下北交通のキハ85を、同鉄道の駅と共に取り上げる予定です。

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