昨日の「時刻表大研究 1994年」の「十大トピックス」の中の一つに、野上電気鉄道と小坂鉄道の廃止を挙げました。
野上電気鉄道はこの年の3月31日限りで廃止、会社自体が解散してしまいました。
小坂鉄道は9月30日限りで旅客営業を廃止、貨物営業は去年まで続きましたが、今年になって正式に廃線になりました。
今日と明日は、2回に分けてこの両鉄道の車両、及び全駅の写真をご覧頂こうと思います。
今日は野上電気鉄道です。
和歌山県の日方~登山口間の路線で、JR紀勢本線の海南駅で接続していましたが、少々変わった形態でした。
(1) 車両
デ10形以外は全て阪神または阪急からの譲渡車で、南海の下回りに履き替えて使用していました。
デ11
デ10形3両は単行運転用で、元富山地方鉄道デ5010。
他の車両とは併結できず、このためか形式記号の付け方が他車と異なっています。
また、野上電鉄唯一の戦後(1951年)生まれでもありました。
モハ24
1924年製の元阪神604で、廃線後は阪神で保存されているそうですが、一般に公開される機会がないのが残念。
モハ25
これも元阪神電車の704。
1932年製。
モハ32
1936年製の元阪神1150で、これも廃線後阪神の尼崎車庫で保存されているそうです。
クハ104
増結用車両。
1934年製の元阪神1122。
(2) 駅
日方駅
現在のJR海南駅は高架になっていますが、野上電鉄が存続していた頃の地平の駅舎から日方駅までは、相当な大回りを強いられる事になります。
(連絡口)
したがって、JR(国鉄)への乗換の専用のためにこのホームが造られました。
あくまで日方駅の構内の扱いであり、このホームからは海南駅以外には出る事ができませんでした。
春日前駅
幡川駅
重根駅 交換可能駅
紀伊阪井駅
沖野々駅
野上中駅
北山駅
八幡馬場駅
紀伊野上駅 交換可能駅
動木駅
竜光寺前駅
下佐々駅
登山口駅
野上電鉄の各バス路線の起点にもなっていて、車庫もありました。
バスについては、本体の「アーカイヴ・消えた事業者」で取り上げていますのでご覧下さい。
バスは現在は「大十オレンジバス」が運行、野上電鉄時代からの和歌山市からの路線も引き続き運行されています。
(ただし、和歌山市直通は現在は平日のみ。)
また、海南マリーナシティ~高野山奥の院間という、海と山を結ぶ直行バスもあるそうです。
(こちらは休日のみ。)
野上電鉄の場合、国からの補助金の打ち切りが、鉄道のみならず、会社そのものを消滅をさせる事となりました。
旧運輸省の方針は既に、単なる存続ではなく、未来につながる投資にならなければ補助金の交付はできない、という方向に舵を切りつつありました。
改めて写真を見直してみますと、戦前製のクラシカルな電車、木造駅舎、タブレット交換など、一昔も二昔も前のローカル鉄道の光景が平成の世になってまでも見られた事は、確かに鉄道ファン心理をくすぐりました。
しかし冷静に見ると、車両も施設も老朽化が著しく、存続のための近代化をしようとすると、かなり莫大な投資が必要になったはずで、既に会社の経営自体が相当悪化していた事を考えると、遅かれ早かれ廃線の道をたどる事になったと思われます。
最後に、駅で配布していた時刻表をご覧頂きます。
ローカル私鉄としては、決して本数は少なくはありませんでした。
今日の記事は、
「ローカル私鉄車両20年・西日本編」(寺田裕一・JTBキャンブックス)
を参考にさせて頂きました。
明日は小坂鉄道について書く予定です。
申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。(名前は公表しません。)